◎『山怪』の解=ツチノコが実在する証拠

 『山怪』(田中康弘著)は、登山家・山小屋の主・マタギ等、山に暮らす人々から取材して集めた話を載せた本。
 オドロオドロしい話や背筋も凍る恐怖譚と云うよりは、「不思議な話」が多く掲載されている。
 
 『山怪』は壱・弐・参・朱とシリーズ化されており、壱・弐・参は既に文庫化されている。

 今回、『山怪・朱』を読んで、護身術的な情報1つ&私が考える「怪の解」を二つ(計3つ)紹介する。

①霊的護身術

 『山怪』には、山中で霊的事象に遭遇した人が呪文を唱えて危機を逃れた話が掲載されている。
 旦那寺のお坊さんの言葉、「山で困難な出来事に遭ったら 念彼観音力(ねんぴかんのんりき)と唱えなさい。三度唱えれば大抵のことは収まる。もっと大変な時は七回唱えれば大丈夫だから」を思い出し、怪奇現象から逃れた・・・というもの。
 頭の片隅に置いておけば、いつか役に立つことがあるかも知れない。

②「怪の解・その1=ツチノコ実在の可能性」

 昭和63年、飛騨の東白川村で、ツチノコを見たという人が役場に届け出ると云う公式発表があった。この時、「なんだ??ツチノコのことを喋ってもええんか?なら、わしも見たぞ!」と、堰を切ったように多くの村人からの目撃談が集まったそうだ。
 ツチノコを目撃した人々が、長い間、そのことを口外なしなかったのには理由がある。
 「ツチノコを見たことを口外すると、事故に遭ったり病気になったりなどの不幸がある」と云う言い伝えが村にあったので、誰もツチノコの話をすることがなかったのだ。

 私は「ツチノコを見た話をすると不幸になる」と云う言い伝えがあったこと自体が、「ツチノコが実在した」証拠であると考える。
 「ツチノコを見た話をすると不幸になる」と云う言い伝えを広めたのは、昔の人の賢い知恵であり、絶滅危惧種(=ツチノコ)を、人の手から守る意図があったのだと思う。ゆえに、・・・近年までツチノコが実在した可能性は高い。

③「怪の解・その2=怪音の正体」

 『山怪』では、人のいないはずの山奥で人の笑い声が聞こえたり(=いわゆる「天狗笑い」)、夜中に「メキメキッ、ドスーン」と大木が倒れる音がしたり(=いわゆる「天狗倒し」)等の「怪音現象」が報告されている。
 これらの怪音の多くが「鳥」によるものだと私は考えている。
 インコや九官鳥以外にも、人の話声や動物の鳴き声、機械音等、巧妙に真似る鳥がいる。
 物真似が上手なカラスなども稀にいるようだ。「山の奥から赤ん坊の泣き声が聞こえた」などの怪も、その正体は「鳥」である可能性が高いのではないだろうか?

※「カラス天狗」は「カラス+天狗」。「天狗倒し」や「天狗笑い」の正体をカラスの真似声と見破っていた人が、カラスと天狗を結びつけて創作したに違いない。