◎剣術と体術の関係性(前回の続き)

 「合気柔術の動きや理合が剣術から生じた」と云う説は一面的である。

 剣術と体術は、どちらかが一方的に影響を及ぼしたのではなく、相互に影響し合い、互いに高め合ってきた。

 日本武術は剣術中心に発展してきたので、「全ての武術に剣術の影響が及んでいる」と云った考え方が主流となった。

 拳法を中心に発展してきた中国武術界の見解は、日本とは真逆である。

 戚継光が1500年代に著した『紀效新書』には、「拳法は武芸の源である」と書かれており、「武器術の基礎は拳法によって培われる」としている。(1600年代に『武備志』を著した茅元儀も、拳法が武器術の基礎訓練になる、と述べている。)
 又、何良臣も『陣紀』の中で、「武芸を学ぶには先ず拳を学び、次に棍を学ぶ。拳術と棍術の法が明らかになったならば刀槍諸技も容易に習得できる。したがって、拳棍は諸芸の本源である。」と述べている。(以上、「武術論集Ⅲ」参照)