古流武術の魅力の一つに「技の名称」がある。

 例えば、起倒流柔術の技名には、「夢中(ゆめのうち)」「水車(みずぐるま)」「柳雪(りゅうせつ)」等々の風雅なものもある。

 伊藤武氏の著書『古式ムエタイ見聞録』によると、古式ムエタイや伝統的な東南アジアの武術の技にも独特の技名が付されている。例えば、「腹を裂かれた夜叉」「魚の違え歯」「仙人飛翔」「須弥山の持ち上げ」等々。

 伊藤氏の著作を読んで、古式ムエタイのタイ語の資料を探してみた。
 いくつか入手したPDF資料の冒頭には、いずれも「敵の膝上辺を踏み台にして肩に登り、敵の脳天を肘で突く」と云う大技の写真が掲載されていた。技名はタイ語なので読めないけれど、おそらく、この大技は古式ムエタイを象徴する秘技なのだろう。(下図参照)