【065】「秘伝」や「奥義」を妄信しない(200523)

 無手の状態から、剣や銃を持った敵を制する技というものが、柔術や護身術の型の中にはある。
 現実的には無手の武道家が武器を振り回すシロウトを倒せる確率はどれだけあるだろうか?更に、剣を持った敵が有段者だった場合、無手の柔術家に勝てる見込みはあるだろうか?
 柔術に、突いて来る拳を制する技は有るが、果たしてその技で空手家の突きに対処する事は出来るだろうか?

 松浦静山著すところの『剣談』では、「師の教えを守らなければ上達はしないけれども、師が常識的におかしな事を言っていたら、そのことまでも盲目的に信じるべきではない」と説いている。
 常識的におかしな事、と云うのは、例えば「剣の奥義を極めれば大砲にも勝てる」といった妄言。

 結論から言うと、柔術の技で剣や銃や空手の有段者を制する事はほぼ不可能。

 『剣談』では、「秘伝」は使わずに秘したままにするのではなく、実際に遣える技なのかどうか、事前に検証しておくべきだと述べている。「秘伝」や「奥義」の大半は「絶対」ではない。イザという時、「秘伝」や「奥義」に頼る気持ちが、危機を招く。

 柔術の修行者は武器の扱いにも慣れ、身近にある物を、即、武器に転用出来る機転を養うべき。素手に固執するべきではない。