(2)三脈法の具体的なやり方

 次に、「三脈法」のやり方について解説をする。

①左手の親指と中指を下顎骨の左右の動脈(奥歯の下辺り)に当てる。

②右手の指を左手首の動脈に当てる。

③平常は三カ所の脈が一致しているが、三カ所の脈がバラバラに打っていたら、大難の兆候であるので、避難等の対策を講じるべきである。

④三脈の乱れによって大難を察知した後、一昼夜(二十四時間以内)に何も起こらなければ大難は過ぎ去ったと解釈出来る。

 著書で解説されている「下顎骨の左右の動脈(奥歯の下辺り)」というのは、怪我をして顔面から出血した際の止血点でもある。救急救命の本にはその位置を、「下顎の骨に沿って指を動かして行くと小さな凹みが有る」と解説している。少し判り難い場所である事から、現在では、左右の頸動脈を診るやり方の方が主流となっている。



(3)三脈法で判る危険の種類

 三脈法を試み、左右の頸動脈と左手首の脈が一致している状態であれば、その日は災難がやって来ないとされる。
 よく誤解されている様だが、「三脈法」で予知出来るのは、地震等の広域な自然災害ではない。「三脈法」はあくまでも個々人にせまる危険を予知する手段なのである。

 質屋店主田中清助も「三脈法」によって地震を予知していたから冷静な行動をとれたという訳ではない。「その日は自身の生命を脅かす危険が無い」という事を確信していたが故に冷静な行動をとる事が出来たのだ。
 又、田中に三脈法を伝えた医師も、津波を予知した訳ではない。特定の場所にいた人達の脈を診て、全ての人の脈が乱れていた事から、「今、自分達がいる場所に危険が迫っているらしい」事を察知して高台に避難した。高台に到着してから再度脈を診ると平常に戻っていたので、「その場所が安全である」と判断し、結果的に津波の被害から逃れる事が出来たということだ。