【2】「気」による不動金縛り

 深く椅子に腰掛けた態勢の人は、額を指先で軽く押さえられただけで立ち上がれなくなる。椅子から立ち上がる為には、先ず、頭部を前傾させなければならないのだが、指先が邪魔をして頭部を動かせないので、椅子から立ち上がる事が出来なくなってしまっているのだ。

 同様に、地面に尻餅をついている人、地面に仰向けに仰臥している人、いずれも立ち上がる為には、先ず、顎を引いて頭部を前方に倒さなくてはならない。

 尻餅をついている人、仰向けに倒れている人が「合気」によって金縛り状態となり、立ち上がれなくなってしまった様に見えるのは、頭部を前傾出来なくなる条件作りが為されているから。

 術者は起き上がろうとする被験者の視線と注意を上方に固定し、被験者が顎を引いて頭部を前傾させない様に誘導しているので被験者は立ち上がれなくなっている。

 術者が被験者の視線上方で手を翳したり、「被験者が目を逸らした途端に攻撃するぞ」という気配を漂わせたりすれば、被験者は視線上方にいる術者から視線と注意を逸らせなくなり、顎を引いて立ち上がる事が困難となる。

 術者の翳した手からは「気」が出ている訳ではない。が、頭の中が混乱した被験者は「手の平から発している気の力で、自分は動けなくなっている」という自己暗示に掛かってしまう人もいるだろう。