《具体的事例2》

①術者は直立した被験者の前に立ち、目の高さに人差し指を掲げる。

②「エイッ」と云う気合いを発すると同時に、指先を被験者の下腹辺りに持っていく。

③被験者は反射的に術者の指先を目で追い、自身の下腹部を覗き込むかたちになる。又は、危険を察知して反射的に腰を引く。

④ ③の体勢をとることで被験者の重心はカカトに移動し、身体が後方に倒れそうになる。

⑤術者の気合いと動作によって、「自分がよろめいたのは遠当ての技が効いたからだ。」と云う暗示が被験者に伝わる。

⑥更にこの時、「遠当て」を理性的に否定しようとする被験者の思考は、「ありえない不思議な事態」を体験し、一時的に混乱・停止している。

⑦バランスを崩した被験者は、自らの思い込みによって、後方に飛んで行く。

 この術者の場合、「あなたの丹田に気を打ち込む。」と事前に宣言し伏線を張っていた。反射神経の鈍い人よりも、反射神経の優れた武道家の方が③の体勢に成り易い為に、より簡単に遠当てに掛かると推測される。