(十)脱力による筋力の選択的発動

 手首から指先までを「手」とし、手首から肩までを「腕」とする。「手」と「腕」は手首で繋がっている。

 以下、脱力のメカニズムの解説

〇五寸釘を曲げる時を例に解説

 五寸釘を曲げようとする時、先ず、「手」と「腕」の両方に力が入る。

 「手」の力を2、「腕」の力を10とすると、五寸釘に伝わる力は2+10で12に・・・ならない。

 五寸釘に伝わる力は「手」の力2のみ。「腕」の力10は手首から先へは流れて行かない。

 「手」の力は五寸釘を保持する為だけの最低限のものにとどめ(つまり「脱力」する)、「腕」10の力のみで曲げようとすれば、五寸釘は簡単に曲げる事が出来る。
 (熟達者は、腕もある程度脱力し、筋力の替りに「腕の「重さ」を使って釘を曲げることが出来る)

 「手」の力を抜けば「腕」の力や重みを対象に伝える事が出来る。

①「小さな筋肉」と「大きな筋肉」を同時に「ON」にしても、対象に届く力は対象に触れている「小さな筋肉」の力のみ。

②「小さな筋肉」を「OFF」にすると、関節を介して隣接する「大きな筋肉」の力を対象に作用させる事が出来る。