限界ゲージ方式の原理について | 京都暮らしの日々雑感

限界ゲージ方式の原理について

限界ゲージ方式とは、

それぞれ個別に製作された部品を組み合わせて組み立てる場合に、

各部品の間での「互換性」を確保されるように、

それぞれの部品の製作に際して、一定の寸法精度が確保されている必要があるという、

実際の必要に基づいた製作技法の原理である。

例えば、一定の寸歩に加工されている「穴」に「軸」をはめ込まなければならない場合、

その軸の外径は、対応するべき穴の内径よりも小さく仕立て上げられていないと、

その軸は穴にはめ込まれない。

しかしその一方で、軸の外径が穴の内径に対して小さすぎるとなると、

うまく穴軸がうまくはめ込まれるというわけにはいかない。

こうして、穴がどのように内径仕立てがなされないといけないか、

その穴に対して、軸の外径がどのような寸法範囲で仕立て上げられないといけないかが、

規格として定められることになる。

 

以上の原理は、いわゆる「フォード式生産方式」として、

アメリカでの自動車の大量生産体系の下で確立された生産原理であって、

限界ゲージという検査工具が発明されたわけである。

 

ハサミゲージというものは、この「軸」の加工製作において使用される代表的な検査工具で、

製作すべき軸の寸法上限をハサミゲージの「通り部」とし、下限を「止まり部」として、

ワークの軸径がハサミゲージの通り部を通過し、止まり部を通過しないということが確認されて、

その軸径がうまく製作されたということが確証されるわけである。

 

この場合、ワークの製作寸法の上限・下限の寸法値は確定的な数値として一義的に定まるのだが、

その数値通りにハサミゲージの測定部が製作可能かどうかが、実務的には問題となる。

この問題は、ハサミゲージ製作技法での様々な問題点と、

その寸法値を計測する寸法測定技法での様々な問題が絡む問題であって、

結論として、ハサミゲージの製作寸法につき、一定の「製作公差」を許容している。

 

つまり、

ワークの製作に際して、大量生産の場合には特に、一定の製作許容幅が認められ、

その製作許容幅を念頭に踏まえて、ハサミゲージの測定部寸法値が決まるのだが、

その測定部寸法値に対して、ここでも製作公差幅が認容される。

詰まるところ、ゲージ測定部の寸法値というものは、

ゲージ製作公差幅に入っていれば良いというものとなる。

ゲージの製作公差幅を認容しないと、その製作は著しく困難であるという現実認識に基づく。

 

 

以上のことは、

いわゆる限界ゲージ方式の原理と実際の必要性を解説する場合の「基礎の基礎」なのである。

従って、ハサミゲージ製作者としてのその修練課程として、

先ず±5㎛、次には±3㎛、。・・・±1㎛の範囲内で寸法仕立てができるようにして、

そういうプロセスを辿ることによって、

最終的に、究極の完遂態として±0、つまりジャスト寸法ゲージが完成すると見做される。

こういう思念に基づいて、一般のゲージ業界ではゲージ製作が進められ、

あるいは、新人が研修で製作技法を修得すべく教育訓練がなされてきたのだったが、

これとは全く別異な理解に基づいてゲージ製作技法を追求する立場があったのである。

 

その立場というのは、ハサミゲージ製作に際して、

その製作公差の許容というのは必然必須なものかどうか、という視座である。

特定の寸法値が一義的に求められる場合、

その場合に必須必然的に製作公差を認めるということは「背理」なのであって、

一義的に寸法値が要求されるならば、一義的にその寸法を実現するべきなのである。

具体的に違いを述べると、

一定の範囲内での製作公差を認めると言うことは、

その製作公差内に寸法値が入っていれば、そのゲージは「合格」品と見做されるのに対し

製作公差が許容されていない場合、もしも実際の製作寸法がそこから逸脱している場合、

その逸脱か過大であれば当然「不合格」であるにしろ、

逸脱が僅少であれば、「🈴」として取り扱って良いかどうかが別途判断される。

当該ゲージの取り扱いも違ってくるわけである。

従って、ジャスト寸法ゲージの製作を修得する課程においても、

修得すべきポイントの置き方が変わってくる。

 

ハサミゲージの製作において、

その測定部の仕立て上げにおいて、その製作公差を認めるということが当然の前提とはされるが、

しかしながら、ゲージ製作者の収斂の有り様として、

当初よりジャスト寸法ゲージの製作を修練課題とするのを当然とする立場があって、

その技法が、今や、主流のゲージ業界にあっては《既に見失われた技法》となってきたのであった。