鎌田東二著『予言と言霊 出口王仁三郎と田中智学』平凡社刊
46版350ページにわたる大著であるのだが、
能く立ち寄る書店に配本されているのを見つけて、
早速に購入した。
数次にわたる大本教の弾圧事件というのは、
戦前の国家神道体制の下にあっての宗教事件であって、
それだけに、研究書の類いも多く刊行されていて、
現在では、よく知られた宗教事件とされている。
それに対して、
近代日本の海外膨張政策をイデオロギー的に主導した田中智学は、
石原莞爾の関東軍の対満軍事攻略(満州国建国)と、
あるいは、宮沢賢治の法華経信仰と併せて、
国柱会という宗教団体の活動として語られるのだが、
日本近代史上での黒歴史として触れられることにとどまるのである。
しかしながら、近代日本史上における日蓮運動が如何なる経緯を辿ったかは大きなテーマであるからして、
その研究が改めて取り組まれてきているのである。
もっとも、日蓮宗としての信仰史、宗派史というものは、
複雑極まるものであるから、
なかなかにすっきりと把握できるというものではないわけで、
ある意味では、戦後の創価学会の歴史との比較対照によって語られるという側面も目立っているのである。
つまり、創価学会・公明党による国立戒壇の否定ということによって、
戦前の国柱会の歴史も、他の日蓮宗宗派も見えなくなったとも言えるのである。
それで、いろいろと問題意識をかき立てられるテーマが満載の書籍ではある。
鎌田東二先生というと、
私にとっては同世代の宗教研究者であって、
ごく初期の頃から、古神道を中心に研究されてきた方という位置づけだったのだが、
こういった、日本近代宗教史を正面から捉える研究をされるとは思ってもみなかった。