砥粒の粒径の話 | 京都暮らしの日々雑感

砥粒の粒径の話

砥石や砥粒の「粗さ」つまり「粒径」は、「メッシュ」を単位で語られる場合が多い。


「メッシュ」というのは、篩(ふるい)の目の粗さのことを意味するのだが、

要するに、1インチ間隔の目の粗さのところに、砥粒の粒が何個並ぶかということを想像すると良い。


例えば、「#」が「メッシュ」を意味する単位記号なのだが、

#3000というのは、1インチ幅に3000個並べることが出来るから、1個あたり8.5μmということになる。

( 25.4mm÷3000=0.00847mm=8.5μm )

WAでもGCでも、一般に市販されている砥粒は#30000であるから、

同じように計算すれば、砥粒1個あたりの大きさは0.85μmということになる。


もっとも、この計算による数値が、砥粒の最大値と見るか、平均中央値と見るか、最小値と見るかで、

同じメッシュ番号の砥粒でも、実際の砥粒の大きさのばらつき方が変わってくる。

この点は、砥粒メーカーでの砥粒の「篩い分け」の技術に関わってくる問題だから、

一筋縄ではいかない問題にはなるだろう。


例えば、WAの砥粒は、ある種の「針」みたいな形をしているから、

その長径と短径のさをどう見るか、

GCの場合は、WAと比べて丸みを帯びているから、粒子の長短の寸法差は比較的小さい。

繊細なことを言えば、この粒子形状の違いが、

ラップの結果となるワーク表面の面性状の違いとなって顕れてくる。

従って、同じく#3000の砥粒でのラップと言っても、WAとGCとでは違ったものとなる。

こういう点は、いちいち検証されないといけないことなのである。


これに対して、cBNとかダイヤモンド砥粒では、

特定の数値、例えば「1μm」とか、

あるいは、範囲の数値、例えば「0.5μm~1μm」とされている場合もあって、

それぞれのメーカーでの分級技術なり品質保証の問題と絡むわけなのだが、

「メッシュ」で表示される場合はほとんど無い(あるのかも知れないが、今まで見たことがない)。


例えば、1μm粒径のダイヤモンド砥粒と、#20000GC砥粒とで、

ラップ結果が同じようになるかというと、なかなかそういうわけにはいかない。

砥粒自体の物性の違いが顕著に顕れるからで、

ラップ作業における砥粒の「選択」の問題は、実は、微妙な違いを産み出す。

もっとも、この辺りでの微細砥粒では、そのほとんどがダイヤモンド砥粒を採用するということになるから、

わざわざGC砥粒とのラップ結果の比較検討ということがなされた事例はないみたいではある。


ただ、砥粒の粒径の大きさ(「粒度」)は、

ラップ結果でのワークの面粗度を決定するべき一つの要素であることは確かなのだが、

砥粒が、どのような接触の仕方をワーク表面に対してするかによって、

実際のワーク表面に対する「切れ込み方」が変わってくるから、

たとえば、1μm粒径のダイヤモンド砥粒と2μm粒径のものとで、

ワーク表面の面粗度に違いが表れないという、ほとんど同じ結果をもたらすということはよくあるわけで、

ほとんど同じ結果がもたらされるならば、砥粒粒度のさにはあまりk神経質になる必要はないことになる。

もっとも、「同じような結果が実現できる」ということが確証できるまでのテストは大変な手間になるのだが。


なお、ダイヤモンド砥粒とcBN砥粒とでは、

同じ粒度であれば、ラップ結果に大きな違いはもたらされない(3種SK工具鋼:焼き入れの場合)。

ラップのプロセスに違いは大きいのだが。

ご参考までに。