オフィスコットーネの『兵卒タナカ』

あっという間に

稽古場での稽古期間が終わり

吉祥寺シアターへ。


稽古場最後の数日は

出演者の皆さんの

アイディアと才能の力で

ものすごい勢いで作品が変貌し

お芝居がはっきりと輪郭を現した。



劇場には

想像を超えるカッコ良さで

美術がどんと構えていて

照明作りを見ているだけでもドラマチック

舞台裏でお弁当をたべていると

流れてくる音楽に心躍る。



チーム『兵卒タナカ』は

出演者もスタッフも

一つの作品に向かって一致団結している。


この一致団結の仕方が

普通でないような気がしている。



作者ゲオルク・カイザーの積年の苦悩や

プロデューサー綿貫さんの遺した思いが

これでもかと詰まった作品なので


演劇に対する愛と尊敬が

不思議なくらい強い座組みで

上演できるのは

何よりの供養になるかもしれない。



劇場入りしてから

そこかしこに

綿貫さんの気配があるようで


しっかりしろ、と

突っ込まれたという人が何人かいたり


演出卓の上には

綿貫さんの写真が

舞台が見える方向で置いてあるんだけど


初日の朝、自分の席に行くと

写真が向きを変えて私の方を見ていた。


何か言いたいんだろうなと思った。

でも、文句を言っている気配ではなく

「幕が開くね!」と

一緒に初日を喜んでいるような気配で

私は泣いてしまいそうで

相手は写真なのに目が合わせられなかった。



2月3日

『兵卒タナカ』は無事に開幕。


客席の最後列でお芝居を見ていたら

今回の演出は

いい意味で

私がやったんじゃない気がしてきた。


そうか。


キャストやスタッフのチームワークが

よかったのは

綿貫さんが動かしていたんだな。



綿貫さんの魂は

ずっとこの世にいて

お芝居を作るつもりなのかもしれない。


劇場という場所には

そういう魂がいくつもいるのかもしれない。


劇場に入ると

お芝居が勝手に組み上がっていくのは

その魂たちも仕事してるからなのかな。



そんなことを考えた。


演出家の仕事って

よりしろなのかも!