ゲイリーン・ストック先生のお写真を久しぶりに見て、朝からずっとこれまでの指導法の変化を考えていました。



初めてお会いしたのが2003年のジャパングランプリ。その当時のジャパングランプリは審査員の先生方とコンクール前、コンクール後、会食する機会がありました。今だったら考えられませんが(笑)


ですから私も沢山の先生方とお話しすることが出来ました。


現役を辞めて指導に専念するようになり、3年目にゲイリーン先生とお話する機会に恵まれました。


その当時


「バレエを習う子は、皆バレエが好きでスタジオに来ているのだから」


と信じ切って指導をしていました。しかし、そんな事がないわけです、所詮習い事ですから。


親に無理矢理習わされて嫌々来ている子や、バレエを習わせていることだけをステータスにする親御さん、コンクールの結果だけ得たい人の存在は、当時の私には全く理解ができず、その現実を受け止められず、精神的に参ってしまっていて、指導に完全に行き詰まっていていた頃でした。


そのときゲイリーン先生は「あなたの指導法は何一つ間違っていないわよ!自信を持ちなさい!」と励ましてくれました。


あれから19年…その19年の間にも様々な壁が立ちはだかり、その都度その都度迷いました。


ゲイリーン先生には「指導法は間違っていない」と仰って頂きましたが、それは19年前の話。


「正しい」と信じてきたことが、実は「間違っていた」と言うのを突きつけられた事は何度も何度もありました。もちろん今でもあります!頂いたアドバイスを取り入れていますが、自分が絶対に正しい!なんて思ったことなんて、ないです。


指導者は一歩間違えると「裸の王様」になりがちです。年を重ねれば重ねるほど、地位があればあるほど、イエスマンが周りにいればいるほど、誰も指摘することなく


「先生の仰る通りです!」


となり、益々


「自分は間違っていない」


と勘違いしてしまいます。それは非常に危険な事だと思います。


一番の悲劇は「素晴らしいお洋服を着た王様」と褒め称える市民は、実は心の中で「裸じゃん…だけど言うのをやめておこう。服が見えないなんて言えない」と黙っていること。


地位の高い人には見える、と言われている服(実際はそんなのはない!)を「見えます!」と嘘をつくことにより、自分の地位が高いと思われたいわけです。


しかし少年だけは「王様、裸だよ!」と言います。


彼には地位も名誉も変なプライドもなく、ただ目の前に見えている現実を述べただけ。


「若い方の意見を取り入れる必要性」を感じているのは、誰でも年を取れば裸の王様になり得るからなのです。



私も若い頃は本当に突っ走ってきましたが、53歳にもなると、30代の勢いが無くなってきたように思えてきました。


若い方から学び、少しでも改善できる部分は改善したいと思います。


ゲイリーン先生が私のような若造に優しく接して下さったのを、今度は私がそのように接するべきだと思うので…


左右木健一