「うちの子は学校でも運動神経が悪い、身体がかたいと言われます。そんなうちの子はバレエに向きませんか?」


と質問されます。


だいたいが体育の授業で言われるそうです。


開脚出来なきゃ「身体が硬い」で片付けられます。


そうすると親御さんは慌ててSNSで調べます。


「開脚、ストレッチ」と。


山のように無限に出てきます。そして「これは再生数多いし、信頼出来そう」とピックアップして、自己流で行って怪我をします。もしくは


「開脚できるけど、脚がキープできない」


と言う問題に直面します。


残念ながら、いくらバレエの世界で解剖学の知識をレッスンに取り入れても、学校の体育の時間で何か指摘されて自己流でエクササイズをして(もしくは学校でいきなりストレッチを強要されて)怪我をしてバレエに支障をきたす例も、全国で聞いたりします。私達バレエ教師が立ち入ることが出来ない問題です。


そしてだいたい話を聞くと、学校教師から言われるのは


「運動神経が悪かったから、怪我したんだ」

「身体がかたいからだ」


と言う言葉らしいです。


跳び箱で骨折した生徒が「なぜ骨折したか?」ではなく「運動神経が悪いからです」と言い放った学校の話は以前ご紹介しましたが…


私も体育の成績が非常に悪くて…


小さな頃からボール恐怖症で、いまでも何かを投げたりキャッチする事は得意ではないです。


そして学校の体育の時間に、ボールを扱う方法を教えてもらった事もなければ、段階を隔てた指導をされた事もないです。いきなりボールを投げられて、キャッチ出来ないと


「反復すればいいんだ!やれ!」


と怒鳴られるだけ。


「…何をどう反復したら良いのですか?」


なんて質問出来るような雰囲気ではないから、そのまま続行しても出来るわけがない。


そして通知表は10段階の「1」


そして「運動神経の問題です」「根性がない」


で片付けられます。


また、逆上がりが出来ない子を学校側が指導する時間は学校にはないみたいですから、基本的に出来ない子は放置。親は心配になり、逆上がりを指導してくれる塾に通わせる話も聞きました。


しかし…よくよく考えてみたら?


学べる学校に通っているのに、そこで指導されないからと言って他所で学ばなくては「運動神経が悪い」と学校で言われてしまう事自体が本末転倒ではないでしょうか?


学校教育に苦言をしても、私の専門分野ではないので、もう言うのをやめましょう(笑)


しかしバレエの場合は


「イタリアンフェッテが出来ないのは、運動神経が悪いからだ!根性が無いからだ!ストレッチが足りないからだ!回数重ねれば出来る!」


ではない!と言うことは強く言いたいです。



「運動神経が悪いから…」

「身体がかたいから…」


と諦める前に


「出来ない原因は、どこから来てるのか?」


と言う事を冷静に振り返ってみましょう。


初めから指導されていない、もしくは基礎を習っていたのにSNSで見かけたプロダンサーを見よう見まねで真似して自己流の解釈で好き勝手に踊っていたか?


のどれかであって


「運動神経の問題ではない」

「柔軟性の問題ではない」


と思って欲しいです!


ちなみに私の現役時代の開脚。


これが限界MAXでした。180度開けませんでした。しかしそれだから、とバレエ団のオーディションに落ちた事は一度もないですし、オーディションで「開脚みせろ」と言われたこともないです。



なぜか?


舞台の上では床に転がって開脚を1時間も見せる振付はクラシックバレエにはないから!むしろ脚を上げてキープするチカラが問われます。


私の踊りを見た人は、私が開脚出来ない事を非常に驚きます(笑)しかしこの写真が舞台の全て。お客様はこれを見たら「この人は身体が柔らかい」と勝手にイメージします。人のイメージって…あてにならない場合だってあるのです。



運動神経が悪いとか、開脚出来ないから、とか学校側に言われても絶対に諦めないでください。


もしあなたがバレエが踊りたいなら、別に跳び箱飛べなくても、走るのが遅くても、逆上がり出来なくても、ボールをキャッチできなくても、ドリブルできなくても、開脚出来なくても…


諦めないでください!なぜなら


白鳥の湖のオデットも王子も、逆上がりしないし、ボール蹴らないし、床で1時間もスプリッツしてるわけではないでしょう?


あ、唯一バレエのレッスンでやらない白鳥の湖の動きは?


ラストに湖に飛び込むシーンくらい?(笑)でもホールバーグだって何故綺麗に飛び込む姿に見えるかわかりますか?空中にいる腕をみたら、分かりますよ。バレエに必要なのは何か?わかりますね。



左右木健一