最近、ある先生とお話して意見が合致した事をお話します。


日本は「発表会文化」です。私も小さな頃から年に一度の発表会は楽しみでした。


しかし、それは「舞台で踊れる事」が楽しみであり「リハーサル」は子供心に非常に辛かったです。


なぜか?


作品の練習になると、普段のレッスンでは絶対にやらない事をいきなりやらされるからです。


「え?それって当たり前じゃない?だって作品の練習なんだし」


と思われた方、いますよね。私もそう思っていました。


しかし、よくよく考えてみてください。


自動車学校の話(また出ましたね!しかしこれが一番わかりやすい)を例えにしましょう。


まだ路上にも出てなくて、ハンドルも握ったことがない人に


「では今から高速道路を運転しなさい!」


と、なりますか?ならないですよね?


しかしバレエの発表会では、ありがちな話になるのです。


カフライズを数回も出来ないのに、いきなり


「はい!フェッテ32回、ポアントで回りなさい」とか。


大人からバレエを始めた方が、身体の方向に対する知識が全くないまま


「はい!コールドバレエやりますよ!」とか。


無理ですよね?しかし「発表会」と言う目標なら頑張れてしまうんです。


「根性」と「本人の涙ぐましい努力」のおかげで、無事に(全く無事とは言えませんが!)幕があいてしまうのです。


大概、舞台は何となく終了します…不運でない限りですが。


しかし、中には舞台上で大怪我して救急車で搬送される場合もあります。私の出演していた発表会でもそのアクシデントはありました。


しかし、残念ながらそれすらも


「よく頑張った」と美談で片付けられます。


しかし、今一度考えてみましょう。


発表会の「発表」と言う意味を。


本来でしたら


「普段の練習の成果をお客様に発表する事」


であり


「普段の練習でも習ったこともない超絶技巧を、歯を食いしばってお客様に見せて、挙げ句の果てに怪我をする事」


ではないはずです。


もし難しいことを披露したい、させたい、と望むなら、日々のレッスンでそれをやっておく必要があるのです。


たった一つのこのポーズにしても…



頭、顔、身体の向き、首の使い方、肩の傾き具合、腕の位置、手首や手先に対する意識、骨盤の位置、ターンアウトがどこから生まれるか?の知識、膝や足首に対する意識、つま先、そしてこのポーズになる前後の繋ぎの動き、ポアントで踊る場合はバレエシューズとの違い、などなど…


それを「今まで時間をかけて学んできました。ではそれを使って舞台でどれだけ出来るか、お客様に発表してみましょう」と言うのが本来の「発表会」なわけです。


コンクールのヴァリエーションでも同じことが言えますが、例えばバーレッスンでこれが出来なければ




イタリアンフェッテは出来ません。もし発表会やコンクールでどうしてもイタリアンフェッテをやらせたいなら、バーレッスンから全て分析して指導しなくてはいけませんし、それを普段から練習して、センターレッスンでも既にやっていて、ポアントでやったのちに


「では発表会の作品の練習しましょうね。あ、でも普段やってるイタリアンフェッテだから大丈夫でしょう?」


となるわけです。


いきなり習った事もない動きを大勢のお客様の前で披露する以前に、やるべき事は沢山あるはず…


そう「発表会」以前に「教育」なのです。


そしてその「教育の成果の発表の成果」をみせるのが、いわゆる「発表会」


教育はずっと続きますが、舞台は打ち上げ花火みたいに、その日が過ぎたら終わってしまいます。


そろそろ「発表会文化」ではなく「教育」を考えていけるようなバレエ界に変化していくことを切に願います。


左右木健一