マリインスキーのダンサーがインスタに面白い動画を載せていました。

正しいグランプリエ vs 正しくないグランプリエ

最初の「академии」は学校
次の「театре」は劇場

要はアカデミーの生徒たちはキチンとやるけど、プロのダンサーはこんなのだよ、と皮肉めいている動画です。



これ、ギャグなら笑えますが…バレエ教育と考えたら、笑えません!もしプロの現役ダンサーがこのように子供たちや大人の初心者に指導したら、明らかに大問題です。

実際「正しくないプリエ」をしているのは、昔から問題視されていますし、現在も見かけますから。

まずはポールドブラ。

何がいけない、いけなくない、以前に…

まず、このような手…クラシックバレエにはないですよね。挙手してるみたい(笑)


手がフレックスになり、顔は手のほうなのに、違うところを見ていたり…しかし、この「手がフレックス」「手首パタパタ」は、かなりの頻度で見かけます。コンクールでも沢山見かけます。


手のひらが床と並行なのは、たぶんベジャールのボレロくらいかも知れない(笑)もしくは発表会でよく見るヒヨコやペンギンの役。


前肩。これも本当に良く見ます。


肩が前に来てしまっているから、バランス取るためにお尻を後ろに引いてしまう…全てにおいて悪影響。


いかがでしょうか?

「クセだらけの踊り」を正しく治すためには、1番手っとり早いのが

「その形は、クラシックバレエには存在しない」

と目覚めれば良いのです。

なぜなら、冷静に見て…この形はまず無いですよね。バレエを知らない人が見ても、この形は「何かがおかしい?」となると思いませんか?なぜなら、しゃがんで挙手してるみたいに見えるでしょう(笑)


では、それを踏まえてもう一度ご覧下さい。



1番最初に見たときよりも、明らかに「正しくない」と感じたはずです。

動いていると、間違いに気付かないものです。

しかしバレエの動きには形が決まっていて、その形から外れたときには美しさが表現しきれないのです。

私がコンクール審査を務める際は、もちろん全体の流れの評価もする一方で、上記の写真のようにポジションが連写して見えるようなモードも頭のなかで作ります。器用に動いていてごまかせる部分を見逃さないためです。

とにかくインスタや TikTok のギャグなら笑えますが、実際のバレエでは笑えない部分なので、趣味でバレエを習う子供たちや大人の方たちも気をつけていく必要があると思ってほしいです。

この動きを取り入れてしまう、と言うことは


これからケーキを作りましょう、と言って薄力粉が足りないから、と外の砂を混ぜるのと一緒です。

砂…混ぜますか?

「必要ないものは、徹底排除する」
「必要ないものは、初めから取り入れない」

これだけで、意外とシンプルに上達するものです!

「プロの現役ダンサーのやっていることが、すべて正しいわけではない」

しかし現役ダンサーはインスタでアイコンとして見られますから、バレエを知らない方々からしたら

「これが正しいんだ」

となる…これはコロナの自粛以降、世界中で問題になっていて、先生方とも話し合っています。

情報が簡単に手に入るが故に、間違った情報が溢れているのは、たぶんバレエ界にかぎりませんね。

今年は本当に色々なことが、良くも悪くも…考えさせられることが多いですが、冷静に考えれば(薄力粉に砂は混ぜない例のように)わかることばかりですから、まずは惑わされないのが大事ですね。

左右木健一