全ての審査とコメント記入が終了しました。採点よりもコメントを書く事に時間を要した数日間でしたが、楽しかったです!
本来でしたら香港で開催されて、いつものメンバーで審査したり、ワークショップを指導出来たはずなのに、本当に残念ではありましたが、オンラインの良さ、特にバーとセンターを動画でしっかりとチェック出来てスカラシップを選考する上では非常に良かったと思っています。
「オンライン審査で明確になった事」
シリーズ最後はコンテンポラリーについて。
カナン国際バレエコンクールは、クラシックバレエのコンクールなので、スカラシップ対象校はコンテンポラリーオンリーの学校はありません。ですからクラシックベースの作品でも良いとは思っています。
クラシックバレエのコンクールにおけるコンテンポラリーの基準と、日本の現代舞踊コンクールの審査基準は明らかに違います。
現代舞踊だと
「つま先を伸ばしすぎたら減点」
「音楽に合わせたら減点」
「クラシックバレエの動きが入っていたら減点」
みたいな観点があるみたいですが、私はクラシックバレエのコンクールにおけるコンテンポラリーの役割は…
つま先を伸ばすのも、伸ばさないのも、音楽に合わせるのも、合わせないのも、クラシックの動きとか、モダンの動きとか、そういうカテゴリーに括るのではなく、私は「表現のひとつ」だと思っているので、どちらでも構わないと思っています。
審査員を務めるにあたり、常に気をつけているのは、作品、振付、衣装、音楽のチョイス自体はなるべく審査をしないようにしています。
なぜなら「振付コンクール」ではないですし、振付家をジャッジしているわけではありません。参加者の「可能性」だけを審査するようにしています。
振付というより、動き自体をしっかりと観ます。
最近は(以前よりは少なくなりましたが)ブリッジを多様化したり、ハンドスプリングをしたり、新体操的なアピールをする作品もありますが、それもそれで、踊る人がきちんと理解していれば良いと思います。
が、中には
「私はいまから身体を痛めます!」
と主張しているようにしか見えなくて、とても痛々しく感じるケースもあります。
えびぞりを多様化する振付はありますし、日本の現代舞踊のなかには必ずと言って良いほどあります。表現の一種なのでしょう。
しかし、それが、クラシックバレエを踊るにあたりプラスになっているか?と問われた場合…
何とも言えなくなります。
腰椎に乗っかって、肋骨が前に押し出されるえびぞりの動きばかりをしていると、バーに掴まったときに骨盤の位置が正しくなくなる可能性が出てくる場合があるからです。
今回も審査をしていて、やはり体操技をコンテンポラリー作品に取り入れている子供たちの大半がバーレッスンでの骨盤、背骨の位置が正しくありませんでした。もちろんバーレッスンは、その時点で減点になります。
これが今まで曖昧な部分でしたが、今回オンライン審査でクラシックバレエのレッスンが入っていたため、問題点が浮き彫りになりました。
「現代舞踊」や「新体操」から「クラシック」に転向する際、真っ先に指摘されるのが、骨盤と背骨の位置だったりします。
身体の使い方自体が根本的に違うので、それは仕方ないことだと思います。
どちらが良いか、悪いか、とは言いたくはないですが、少なくとも新体操の選手や現代舞踊だけのダンサーを目指しているわけではなく、クラシックバレエを長く踊りたいと望むのであれば、答えは見えてくるはずです。
海外のバレエ団ではクラシックもコンテンポラリーも日替わりメニューの如く、リハーサルも本番も休みなく続いていきます。ですから怪我人が続出します。
いくら解剖学を勉強しようが、怠けずエクササイズしようが、怪我するときは怪我をします。
リフトから落とされたり、悪い床のコンディションで捻挫したり、振付家の無茶な要求に応えてしまって怪我したり、などなど…
いわゆる「不意のアクシデント」と言うものです。本人の努力不足ではなく、不運が重なっての怪我も、もちろんあります。
しかし、それはプロの世界であって、アマチュアの子供たちには必要ないことです。
…話が長くなってしまいましたが。
今後クラシックバレエのコンクールにおけるコンテンポラリーが、子供たちの身体にかかる負担が少なくなるような傾向になる事を祈ってやみません。
身体はひとつですから…
左右木健一