さて、以前からの「コンクールに向けて」シリーズも昨年終了しましたが、コンクールというよりはバレエを習ううえでのお悩みには、答えておりませんでした。
そこで
「バレエお悩み相談」
というシリーズを今日からスタートしたいと思います!
お悩みフォームは、以前「コンクール」で質問を寄せられた方のanswerがだいたい終了したら、フォームをアップしますね。
今日はこちら。
<Q>
小学生の娘を持つ母親です。この先どのように伸び悩む娘をサポートできるか教えてください。自宅などでできるエクササイズなどはございますか?娘が自宅で練習しているときに私が指導できることはありますか?動画はよくチェックしています。ちなみに私は子供の頃バレエを習っていました。
<A>
即答でお答えしますよ!
「親が指導できることは?」
バレエに関しては…特にございません(笑)
お母様がプロのバレリーナとして活躍していて、なおかつ生徒を育てた実績がない場合、指導できることはないです。
たとえ以前お母様がバレエを習っていたり、いま大人バレエのスタジオに通っていたとしても、です。
なぜだかわかりますか?
よく考えてみて下さい。
例えば病院の受付で働いていたとします。
そして娘さんが緊急手術が必要なほど、具合が悪くなったとします。
その時、お母様は自宅に娘さんを待機させて、お母様が娘さんを自宅のベッドに寝かせ、メスを持ち、お一人で手術しますか?
医師の資格もなく、しかしなんとなく病院の感じは知っている。で、たまたま見つけた手術の動画をyoutubeでみて、それをみながら
「えっと…ここらへんを切ればいいかな?」
みたいな「一か八か?」の綱渡り手術を娘さんに施しますか?
しないですよね。
バレエ動画をリサーチして、娘さんにバーレッスン、エクササイズ、ストレッチ、表現、振付を教える、のはそれと同じです。
よくスポーツの世界では、親がコーチの場合がありますが、バレエの場合、少し違います。
親子二人三脚が悪いとは言いません。
しかし、プロのバレエ団にお母様が乗り込んできて
「うちの子の表現は、こうしたほうが映える」
なんて、振付家に言わないですよね?バレエでは作品が「絶対」振付師が「絶対」
別に誰が権力持つとか、そうではなく…
ピカソの絵に
「もっとこうしたらいいのに」
と描きたしますか?
もちろん
上達しているかわからない。
先生とお話出来る機会がない。
スタジオのHPもSNSもない。
発表会でも役がつかない。
コンクールでも思った結果に結びつかない。
そうなると、お母様は焦りますよね。その気持ち、わかります。
しかし、もし何か不安な場合は、娘さんの先生に近況を聞くか、中学生あたりになったら娘さんが自分で
「私の悪いところは、どこですか?」
と、聞くこともできるはず。
伸び悩んでいたり、疑問を感じたら、自己判断せず、先生にまず相談すべきだと思います。
また
「私は子供の頃バレエを習っていました」
という部分。
「子供の頃」だとしたら、お母様のバレエの情報は現在ではなく、たぶん20年から30年以上前の情報ですよね?
その情報、古いですから娘さんに教えたところでプラスになるとは思えません。
解剖学でも、バレエでも、なんでもそうですが
「昔はこうやっていた」
「昔はこれで上達していた」
のであれば、バレエのレベルもですが、子供たちの身体も昭和時代と変わらないことと同じですよね。
時代は流れ、バレエも洗練されているわけで、昔の情報(極端な話、レッスン中お水を飲まないとか)が2019年に通用するか、と言えば…もうおわかりですよね?
ですから教師も日々勉強の必要があるわけです。
お母様は朝から晩までバレエの勉強をされていますか?それを職業として、国に税金を納めていますか?
お母様が出来ることは?
「栄養バランスがとれた食事を自炊出来るスキル」
「出先で外食しなくてはいけない場合、いつ、どのタイミングで食事を摂れば良いかの教育」
「ポアントを自分で縫えるだけのお裁縫の知識」
「コンクール遠征先の乾燥した部屋の保湿方法」
「遠征での効率的なパッキング方法」
「落ち込んだりした場合の気分転換法」
「風邪をひかないための工夫」
ね?これなら自信を持って指導出来ますよね?なぜならお母様が少なくとも経験しているジャンルだからです。
自分が経験したことのないジャンルは、プロに任せるべきです。
なぜなら
「舞台前に急にピルエットが崩れた。明日は本番」
と言うとき、
お母様が今までやったこともないプランクを指導できますか?
ルティレの場所、調整出来ますか?
腕の1番ポジション、調整出来ますか?
腕の2番から1番に集めるタイミング、調整出来ますか?
骨盤のズレ、軸足の傾き、首の角度、調整出来ますか?
スポットの癖を理解していて、その癖、調整出来ますか?
踏み切る前のプリエのズレ、調整出来ますか?
そして、それを自分の身体で理解できていますか?
指導は本当に難しいですし、100%指導に情熱を傾けていても、100%うまくいくとは限らないです。
バレエテクニックのエキスパート
子育てのエキスパート
エクササイズのエキスパート
メンタルのエキスパート
栄養のエキスパート
演劇のエキスパート
留学のエキスパート
解剖学のエキスパート
音楽のエキスパート
などなど、色々なエキスパートの力を借りたほうが、問題解決は早いような気がします。
「経費削減のため、私が全部やります」
というお母様もいると思います。悪いとは言いません、が…
人間の得意分野…そんなにマルチではないでしょう。
マルチでない場合、どこかが曖昧になる…
その「曖昧」の積み重ねが、子供の人生を狂わせるくらいなら、はじめからプロに任せてみませんか?
左右木健一