さて、恒例の表彰式です!


毎年のことですが、圧巻です!今年のニューヨークファイナルから、表彰式が非常にカジュアルになり、例年参加している先生方とビックリしていたのですが、これには意味がある、と今回改めてわかりました。


バレエサーチさんからの結果発表の記事から引用させていただくと…

プリコンペディティブの予選通過率 28.8%

ジュニア女子の予選通過率 19.9%

シニア女子の予選通過率 21.7%

もっと厳しい通過率の年もありましたが、それでも今回は例年にない参加者の人数増加のため、かなりタフなコンクールになり、生徒たちにも

「覚悟を決めなさい。正直、かなり辛い思いをするかも知れないから」

と言い聞かせてきました。

しかし、参加者は(シニアの後半組を除けば)まだ子供です。

頑張ってきて、思うような結果にならなかった場合…いくら「表彰式は威厳を」と言っても、威厳が妙な威圧感のある表彰式だったら、なおさら子供たちがシリアスになってしまう。

それだったら、形式ばった堅苦しいコンクールではなく、せめて表彰式くらいはリラックスしようよ!みたいな意図を感じました。審査員がBGMのなか、カジュアルに登場したのも今回が初めて!堅苦しくなく、無愛想に偉そうに座る審査員は誰ひとりとしていない。BGMにノリノリの審査員もいたくらいです。

日本一厳しいコンクールなのに、日本一くだけたカジュアルな表彰式。このバランスが絶妙でした!

そして結果ですが…

プリコンペディティブ部門

top 12 入賞 喜多川聖彩



そして私のコンテンポラリー作品 「Partita」を踊った小浦にこさんがコンテンポラリージュニア top12 入賞


同じく私の作品「Romance」を踊った松浦美命さんがコンテンポラリージュニア 第1位


これまで様々な振付を提供してきましたが、どの作品も想いがあるなか、この「Romance」は、かなり特別でした。


私の場合、振付の依頼を頂いた場合、振付した生徒さんに著作権を渡します。すなわち初演の生徒さん以外には踊らせないルールになっています。

ですから、作品を作り上げて提供したとしても、初演時の生徒さんがバレエをやめたら、その作品は消滅します。同じ音楽も一切使わないので、作品を提供した時点で私とその音楽はお別れします。

その音楽のなかでも、私が30年近くあたためてきたフォーレのピアノ曲「Romance」も、美命ちゃんに提供した日に、さようならしたわけです。

そんななかでの第1位受賞!おめでとう!


top 12 受賞の にこちゃんも同じです!「Partita」の著作権は、にこちゃんのものです。これからも踊り続けてね!


入賞は出来なかったのですが、ひまりちゃんの「Pastoral」も最高の出来でしたし


たくさんのスカラシップを受賞した麻央ちゃんからは

「コンテンポラリーを褒められて、スカラシップを頂きました」

と、嬉しい報告!「Maria Luisa」も、麻央ちゃんのものです。ずっと踊り続けてね!


おめでとうございます!


そして…

うちの生徒たち。

毎年毎年…YAGPに向けて努力を積み重ねてきて、私やくみ先生を信じてついてきてくれた生徒たち。

シカゴの茉琳、サンフランシスコの黎水那、アムステルダムの蒼士など、うちのスクールからYAGPがきっかけで海外に羽ばたけた子たちがいる一方で、バレエ自体が辛くなり、辞めた生徒たちも13年の歳月のなか、いました。

「YAGPさえエントリーしなかったら、こんなことにならなかったのに」

と、YAGPに限らず、コンクールのエントリーや留学すらも一切断ち切るべきか、と悩んだこともありました。

しかし

「バレエが悪いわけではない」
「コンクールが悪いわけではない」
「留学が悪いわけではない」

のです。どんなに環境に恵まれていたとしても、どんなにチャンスが与えられたとしても、それに甘んじて、鼻が高くなり、ほんの少しの幸せすらにも不満に思う人はバレエに限らず、社会でも通用しない、というのは、この13年間の間に学びました。

YAGP。厳しいのは当然です。お遊び感覚でエントリーするのも失礼な話しですし、結果が良くても良くなくても、ニューヨークで現実を見たひとなら

「日本予選はあくまで予選で、ニューヨークに行ったら、もっと辛い現実をみることになる」

と理解出来ますが、何も知らないと国内コンクールの感覚になります。

ですから、そうならないように、親御さんともお話するようにしていますし、年間留学している生徒とは、常にやりとりしていますし、きちんとコミュニケーションは取るようにしています。

コンクールはあくまで「通過点」です。

もう今日から新たなスタートが始まっています。

9歳、10歳がポアント禁止になり、11歳ですら、ポアントを履いている子供たちが極端に少なかった今回のプリコンペティティブの審査基準が、国内においてどのような影響を及ぼすか…

今回の日本予選に参加した指導者の先生方の今後の指導方針が変化することにより、従来の国内コンクールがどのように変わるか…

とにかく、今回のYAGP以降、従来の

「お習い事なんだから、別に基礎無視で、楽しく踊り、早くからトウシューズ履かせればいい」

とか

「コンクールは、ヴァリエーションを仕立て上げれば、基本なんて別にいらない」

といった考えは、徐々に消滅していくのが(私は占い師ではないですが!)感じます。

なぜなら、今回の入賞者は、ほぼ全員が未完成(しかし将来性は抜群!)だったのですから。

「失敗して転んだから減点」

どころか、失敗しても問題なし!という審査基準だったのは、明らかだったと思います。

スタイルや身長は、ある程度必要ですが、ではかと言って、ものすごく線が細いから良い、というわけでもない。それより身体のバランスを重視していたように思います。

「バランス」

これは全てにおいて大事だと思いました。

振り子を「YES」「NO」と極端に振るのではなく、いつも中立の立場に立つというか、臨機応変に対応していけば、子供が変に有頂天になったり、変に落ち込むこともない。

そのためには親御さんや教師が

「不動心」

を持ち、信念を貫き、冷静に、静観しつつ、さりげなくポジティブアドバイスをして、時には厳しく、しかし課題をひとつでもクリアしたら、手放しで褒める…これが大事だと思いました。

表彰式がカジュアルだった理由…それは

「そんなに自分を責めないで、もっと気楽にいこう」

「結果が良くても、そんなに威厳を持つ必要、ないよ」

という現れのような気がしました。

YAGPで学び、育てられ、経験して…


素晴らしい6日間でした。


……さて、私の課題は...



今までの指導法で


「何を残すか」
「何と訣別するか」

の仕分け作業が課題です。

お世話になりました先生方、特にれい美花先生には心から感謝致します。

ありがとうございました!

左右木健一