YAGP恒例のグランデフィレのリハーサルを指導しているミーシャ・チュパコフ先生。


毎年のように仙台に来て指導して下さっており、ここ数年はスケジュールが合わなくてお呼び出来ない状況なのですが、またぜひいらして頂きたいと思っています。

うちの生徒たちの変化を見て欲しいからです。

ミーシャ先生をはじめ、海外からいらっしゃる先生方は必ず嘆きます。

「なぜ日本にはメソッドがない?なぜメソッドをミックスする?」

と。10年くらい前の私は、このように答えていました。

「だって、バレエ団に入ったら、いろんなレパートリー踊る必要あるから、色々なメソッドが必要でしょ?」

と。そこでミーシャ先生が

「ロシアはみんなワガノワだよ。ワガノワ以外、生徒は習わない。だけど毎日プティパ踊ってるわけじゃなくて、バランシンも、キリアンも、ナチョも、アシュトンも、マクミランも踊れるじゃないか」

と。確かにそうだよなあ?と思いつつ、当時の私はなかなか理解出来ませんでした。

まずもって、ワガノワメソッドが日本人の骨格に合わない、と勝手に想像していましたし、ひとつのメソッドが合わない子供が「バレエに向かない」と言われないために、ワガノワメソッドほど脚を180度完璧に開かなくても良いメソッドを「逃げ道」にしたほうが良いのでは、と考えていたからです。

しかし、それが指導の大きな間違いであったことを、コンクール審査員を務めていくうちに気付きました。

上手に器用に踊る日本人…しかし毎回「何か変」と国際コンクールで指摘されてしまう。

そんななか、韓国人がヴァルナ国際バレエコンクールで「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」のグラン・パ・ド・ドゥを見て、海外審査員一同が

「あれがバレエだ!メソッドが生きている!」

と大絶賛。私も審査員席で感動した覚えがあります。

踊りの「完成度」というより、ほんの些細な動きにも滲み出てくる教育の成果…

「あ、これだ!」

と感じたものの、それが具体的にどうしたらあのようなダンサーを育てられるか、の術がわからなかったです。

しかし、私がキーロフアカデミーの入学許可を日本のコンクールで進呈する役目を頂いてから、キーロフアカデミー内のクラスも見学したり、学校公演を見たり、韓国の徹底したバレエ教育、特に優れた仙和芸術学校を見たりして、だんだんと理解できるようになりました。

昔、日本で広まったワガノワメソッドは結局ロシア人がロシア人に教えるのと同じような指導法になるから、かなり限界もあった。

バレエコアのユウ先生は、身体のエキスパートなので色々と研究されていて、西洋人と日本人の骨格の違いもワガノワメソッドが合う、合わない、にわかれるのだ、と仰っていました。

要はロシア人のために作られてきた言語を翻訳する作業がうまくいけば良い!という結論に達しました。ロシア人教師が指導するように指導しても、日本の子供たちは理解出来ない。奇跡的に理解できてもひと握り。昔の日本の先生方は身体能力も抜群に優れ、センスもあり、頭脳明晰で、根性も人並みはずれて長けていた…しかし、いまの子供たちには通用しません。

私がいま勉強すべき点は、まさにその「通訳」できるための知識だと思っています。

ワガノワメソッドがバレエの全て!とは言いません。どのメソッドでも良いとは思いますが

二兎を追う者は一兎をも得ず」

と言われるとおり、指導に一貫性を持たずにあれこれ手広くやったところで、何も得られない、ということを受け止めて、これからは指導したいと思います。

左右木健一