「いつ退くべきか」
これは現役で踊るダンサーにしたら、一番考えなくてはいけない問題です。
私の場合は31歳で辞めました。肉体的にももちろんでしたが、精神的にも病んでいました。
1日ゼリー飲料しか喉に通らない日もありましたし、それとは逆にどんどん食べてしまう日もあったり…
人からは
「あなたは繊細だから、そんなことを気にしてたら身体が持たない」
と言われ続けてきました。
そうですよね。確かに人からデブと言われたり、ブサイクと言われたり、存在自体を否定されたり、変わり者と言われたりしても、いちいち受け止める必要はなかったのかも知れませんね。しかし、私の場合はそんなに図太くはありませんでした。無視すればいいのに、人の心が読めたりするので…
ですからわかっていたんです。このまま続けていたら
「なに?あのおじさん、まだ踊っているわけ?とっとと辞めればいいのに」
みたいに数年したら言われることが…
私には家族もいて、スクールも開講していて、それプラス、自分の心と身体を傷つけながら舞台に出ることは出来ませんでした。
そして辞めて11年後に震災…
そのときに繊細でいられなくなりました。繊細になんかなっていられない。とにかくお水が必要、食料が必要、そして生きていく必要がある…人になんか構っている暇もない…
そして翌年の2012年にご縁があり、復活しました。12年何も自分の身体をケアしていなかったのに、身体が自然に動く…その喜びもあったので、一年に数回舞台に出ることにしました。しかし、いわゆるプロ集団が集まるような舞台のオファーは断りました。もう二度と傷つきたくなかったので…
しかし、自分を守っていたつもりでも、身体が悲鳴をあげました。そして私は自分なりに一生懸命やっていた外部の舞台で、見にきていた知り合いに
「まるで、あなたの1人舞台のよう。もっと遠慮して踊ればいいのに」
と…また踊ることに対して疑問を抱くようになりました。私が出ることにより、またもや迷惑なのだ、と…
ここでお気づきになりますか?
ダンサー…常にクレーム対応に追われます。
「今日の舞台、全然良くなかった」
「ちょっと太った?」
「痩せすぎじゃない?」
「あの作品に合わない」
「手足短い」
「顔デカイ」
「メイク変」
「目立ちすぎ」
「存在感なさすぎ」
「内脚」
「顔芸」
「ブサイク」
「キモイ」
全部、私が陰だけではなく、面と会って言われた言葉です。冗談ではなく、真顔で(笑)
そしてバレエ団のチケットが完売したら
「え?買えないわけ?ありえない」
と、またまたクレーム。
舞台に出ても、舞台を見てもらわなくても、クレーム。笑っちゃいますね!
…そう、全ては笑っちゃうくらい、くだらないことばかり。何を悩んでいたのでしょうね?
そこからです。私が決めたのは…
「無理しない」
「我慢しない」
「嘘つかない」
「危険な場所、人には近寄らない」
わざわざ危険地区に足を踏み入れて自分の命を落とす必要もなければ、ホラー映画をわざわざ見に行き気分を悪くする必要もない。
その加減が子供はわからないから、信じられないようなイジメ、仲間はずれを平気でしますし、そうやって育った大人はもっともっと意地悪になる。
どうすれば良いか…
縁を切れない仲なら図太くなるか、図太くなれないなら縁を切るしかないです。
しかし、バレエダンサーは見に来るお客様を選べません。舞台に出る、とはそれくらいの強い精神力がないとダメなんですよね。
はい。大丈夫です。図太くなりましたので(笑)
しかし…
繊細さを忘れた人間は、非情ですから…
自分に対しては図太く、しかし、人に対しての繊細さは忘れないようにしたい…
これ、バレエの世界では一番の難関です。皆さん椅子取りゲームですから。
復帰した舞台…楽しかったです。
しかし、もうそれも過去。
新たな道を切り開いていくことにします。
図太く、しかし、繊細に…
左右木健一
