ただいま帰国致しました!とりあえず時差ボケ、ないです。

YAGP振り返ってみます。

12年連続でニューヨークに来れたこと…

これは本当に有難いことです。

今回の最大の印象

「アメリカ人のレベルがここ数年で飛躍的に伸びたこと」

低年齢のうちに大人顔負けのテクニックがすでに身についており、9歳、10歳でポアントを履かない方が良いであろう、クールダウンしたほうがいい、という審査員のアドバイスがアメリカではあまり浸透されていないことが気になりました。

たぶん今回参加された先生方は今後の方針に迷われたことと思います。いったいどの年齢からお客様を盛り上げるだけのテクニックとカリスマを持たせるべきか…

実際、今回受賞された子供達は、本当にテクニックも安定しており、基礎力もあり、素晴らしかったです。

コンクールの結果だけを見たら何の問題もありませんが、問題は留学が決まった場合です。

スカラーシップを獲得したあと、ヴァリエーションを海外のバレエ学校で踊るなんて、レパートリークラス以外は一切ありません。中にはコンクールに力を入れている学校もありますが、ほとんどが毎日のレッスンが授業なわけですから、1年間のカリキュラムを飛び越えて、いきなり12-3歳くらいでキトリやバジルは踊らせてもらえません。

ヴァリエーションをさんざん練習してきて1日5〜6時間スタジオで動きっぱなしの毎日から、留学したとたん、レッスンのみとなる。日本のようにゴージャスに全幕物の作品を学校公演ではやりません。コンクールも学校代表としてしかエントリー出来ませんし、校長次第ではコンクールに一切参加させない学校もある。

変な言い方をすると日本にいるときよりも「暇」になるんです。

そのときにどうするか、のトランジッションがうまくいくケースと、そうではないケースに分かれると思います。そしてそのギャップが激しければ激しいほど、子供は戸惑うことでしょう。


{DDE96DA9-4B63-4665-A30C-CAF500028FD1}

早咲きの花、遅咲きの花。

あると思います。

コンクールで認められる、認められない。

も、全く同じで…

2018年に満開に咲いたお花が2028年に同じ鮮度か、それ以上にイキイキと咲いているかは、誰にもわからない。

2018年にツボミだけで、水やりしても肥料をあげても一向に芽が出ないお花、みんな諦めて「無理!」となっても、ひたすら大事に育てた芽が、2028年にいきなり咲くこともあるんです。

ジョージ・バランシンの

「私は庭師、ダンサーはお花」

という言葉があるのですが、まさにその通りです。

手入れしなくても雑草の如く元気なお花もあれば、ちょっと目を離しただけで枯れてしまうお花もある…

それぞれのお花の咲く時期、性質をキチンと理解した上で、育てていく重要性…そして教師はお花が造花でない限り、環境によってはたくましくなったり、あっという間に枯れるかも知れないデリケートなお花のように、過保護過ぎず、オーバーワークになりすぎず、育てていかなくてはいけない。

しかし、少なくともYAGPニューヨークは、温室ではなく、温度差の激しい吹きっさらしの屋外のような環境。至れり尽くせりの日本人だけの国内コンクールの環境とは大違い。強風に吹き飛ばされずに、枯れずに、タイミングよく咲いていたお花が受賞者たち、だった気がします。

どの先生方も、また一から種を蒔き、芽が出るまで、色々試行錯誤しながら育てていく決意を新たにしたはずです。

私ももちろんその決意が固まりました。

日本予選だけで、ニューヨークに来ていなければ、井の中の蛙状態で天狗になっていたかも知れない。

そこを

「目を覚ましなさい。現実を見なさい」

とバレエの神さまに教えて頂いた貴重な期間でした。

最後になりましたが、YAGP日本事務局の皆様、毎日バス運行や子供たちの送迎を担当して下さったJTBの皆様に心から感謝申し上げます。

ありがとうございました!

左右木健一