バレエのスタジオ…
木の床?リノリウム?
左右木健一
これは本当に迷うところです。
うちのスタジオ、完成は1999年でしたが、どの床が良いか、と考えていた1998年の頃は、リノリウムは考えられませんでした。
その当時のリノリウムは、変に足が疲れたり、と、あまり良い素材のものがなかったように思います。その当時「これだ!」というリノリウムに巡り会えなかったのもありましたし、私が3歳から育ったスタジオが木の床だったこともあり、迷わず木の床をお願いしたわけです。
昔は舞台もリノリウムが敷いていなかったんですよ!私の初舞台はリノリウムでしたが、たぶん1970年代前半まで、舞台も木の床が多かったのではないでしょうか?
コンクール審査員を務めていても、その時代の流れは感じます。
一昔前には疑問すら抱かなかったことが、現在では大問題だったりします。昔と今ではお客様の望むものが変化しているのも影響あるかな?と思います。よく「コンクール向きの踊り方」と言われていたものは、今では通用しません。審査員の考え方が変わってきているからです。
同じヴァリエーションでも、昔に比べたらもっと洗練されている部分もあります。しかしその反面、昔のバレリーナたちの持つ「パッション」みたいなものが欠けていたり…
床にしても同じです。木の床は自分がそうとう気をつけていないと、ポアントで立ったときに滑ります。しかしリノリウムは割とグリップ感があるので、気をつけていなくても案外バランスが取れたりします。
前回ジョンクランコスクールのタデウス・マタチ先生とも話していて
「僕たちの世代は、木の床だね!あれはあれで鍛えられて良かった!」
という話で盛り上がりました。
愛着は、ときには執着という化け物になります。
「昔は良かった」
「伝統を大切に」
「何でも新しいものを取り入れる必要ない」
などなど…
変化を恐れて、自分たちの世代の思想が壊されないように、若い世代を潰していく…それが世間で言う「老害」ですよね。
私は48歳なので、ちょうど中間地点にいますが、歳とった時「老害」とは言われたくないな、と思っています。
「伝統」という名の保守的、閉鎖的な指導ではなく、今、必要とされていることがあるとしたら、潔く過去を切り捨てることも大事かな?と。
私にとって木の床→リノリウムは、かなり勇気の要る決断でした。しかし、時代が時代なのだから
「昭和の香り漂う、木の床のスタジオ」
とは、別れを告げるときが来たのだ、と覚悟を決めました。松ヤニともお別れです。
こちらは高円寺のアテールバレエスタジオさん。
こちらのスタジオで使用されているフロアに生まれ変わります!
いよいよ来週…楽しみです!
左右木健一