今日は見にいらしてくださるお客様に「コッペリア」について、お話しようと思います。

今回上演するにあたり、通常上演されるバージョンとはかなり違う設定を施しました。

まずは「市長夫人」という存在。

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通常のコッペリアにはこの役はありません。あるのは「市長」だったり「領主」だったりします。この夫人の行動をまずチェックしてみてください。そして市長「夫人」なのか「未亡人」なのか…そのへんは、皆様のご想像にお任せしますが、彼女はいわゆる「できる女」の象徴だと思ってください。鎧を着て、キャリアを積んだ女性が、果たして愛のためにキャリアやプライドを捨てることが出来るか…

そしてコッペリウス。

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まず通常上演される杖を持った老人ではありません。そして彼の人生を大きく変えてしまうのが「魔術本」この本を手にいれたが為に、彼の人生は転落していったのでは?という想像をしてもらえれば、何かを感じられるか、と思います。人の心をいとも簡単に操ることの出来る本…もしそんな本が手に入れば、人はどのように堕落するでしょうか?そして一見何でも手に入りそうな本でも、コッペリウスがどうしても手に入らないものがあるんです。その象徴がコッペリア、という彼が作った人形です。彼のつくった人形は街の人々が人間と勘違いするくらい、精密に作られています。しかし、人間と人形の区別くらい、誰でも見分けられますよね。そこを見分けられないように、目の錯覚をおこさせる魔術があるとしたら…その魔術が悪用されたら…さて、ここからは見てからのお楽しみです。

そしてスワニルダ。

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活発で明るい女の子の設定はかわりません。しかし、スワニルダは1幕で大きな勘違いをします。人生が台無しになるくらいの勘違いを。それはスワニルダのせいではなくて、コッペリウスに騙されたのがきっかけです。私たちの日々の生活においてもよくある「ボタンのかけ違え」です。もう少しきちんと相手と話をすれば、修復出来た仲にも関わらず、一方的に相手の非を責め、その場の感情で相手との関係を断つ。自ら不幸の選択をしてしまう…しかしそれは自分からしたくてしたわけではなく「魔がさしてしまう」あとから冷静に考えると「なぜあんなことを言ってしまったのだろう…関係を修復したい、でも悪いのは私じゃない!」とプライドが邪魔をして結局不幸の道を選択する…そんなことは普段の生活でもありますよね。スワニルダはそんな象徴でもあります。

そのスワニルダに誤解をされるのがフランツです。

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通常ではコッペリアに浮気をしたり、他の女の子とイチャイチャする、今の言葉でいう「チャラ男」です。今回はチャラ男の影も形もありません。本当に直球型の一途にスワニルダを愛する青年です。1幕ではスワニルダにプロポーズをするために意気揚々と彼女の家に向かいます。しかしそこで邪魔が入る…それがコッペリウスの存在。幸せそうな人を引きずりおろしたい、とか「人の不幸は蜜の味」とはよく言ったもので、コッペリウスの嫉妬や恨み、妬みにより、フランツは幸せを奪いとられることになります。しかし彼は誤解されて修復不可能に近くなってしまった結婚相手との関係を諦めません。逆に立ち向かっていきます。通常上演されるのはフランツはコッペリアに会いたくてコッペリウスの家に不法侵入します。しかしフランツが忍び込む理由はただひとつ。愛するスワニルダの誤解を解くこと。そんな一途な命がけの行動や勇気にスワニルダも徐々に本来の関係を修復させていくのです。

そしてラストに注目してほしいのは「魔術本」の存在です。その本がどうなるのか…ぜひ本の行方をご覧下さい!

プライドや社会的地位を優先してしまい、人としての優しさを捨てた人間、本当に欲しいものがいくらあがいても手に入らない人間、そしてその幸せを手に入れた人間を引きずりおろそうとワナを仕掛ける人間、悪意のある罠にハマったとしても、決して諦めない人間…そんな人間模様が展開されると思います。

長々と説明しましたが、こんなところをチェックしながら是非ご覧ください!もちろん踊りもチェックしてください!

左右木健一

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