DMなどで寄せられる(他所の生徒さんや大人バレエの方たち)からよく聞く言葉があります。


「何年もバレエを習っているのに全然上達しない」

「今さら基礎なんて言われたくない」

「コンクール何度も出てるのに賞取れない」


子供たちも、大人の方も、本当に良く聞きます。


もちろん努力していて上達しなかったり、目に見える結果を得られないと、そのように悩まれることもあると思います。


これはやる気がないからでも才能がないからでもありません。人の心には自分を守ろうとする働きがあるみたいで長く続けてきたことほど、人はそこに「自分の価値」を結びつけます。


「バレエ歴◯年」

「ここまでやってきた自分」

「それなりに頑張ってきたというプライド」


その状態で基礎からやり直そうと言われると、多くの人は無意識に自分を否定されたように感じます。


実際には技術の話をしているだけなのに、心は


「今までの自分は間違っていたのか」


と受け取ってしまう。


これを、人はとっさに避けようとします。


「今さら基礎は必要ない」

「昔やった」

「そんなこと、分かっている」

「自分は頑張ってきました」

「私はそんなにレベル低くありません」


こうした言葉は怠けているから出てくるのではなく、心が傷つかないようにするための自然な反応。


人は時間をかけたものほど、それに見合う成果が出ているはずだと思いたくなります。コンクールがその典型。


だから年数と上達を結びつけてしまう。


でも、バレエは積み上げ型の芸術であると同時に修正型の芸術です。


間違った使い方を真面目に繰り返していれば、年数が増えるほど修正には時間がかかります。


それを受け入れるのは…正直つらいはず。


だから人は「基礎」という言葉から距離を取ろうとします。


成長とは「できない自分を見ること」だと私は思います。これは誰にとっても気持ちのいいものではありません。


できている自分を保っていたほうが、安心できる。でもその安心は、上達とは引き換えになります。


本当に上手くなる人は、自分を守る気持ちよりも変わりたい気持ちを少しだけ優先できる人です。


プライドを完全に捨てる必要はありません。


ただ、プライドを握りしめすぎて間違った方向や誤った選択はしないほうが賢明かも知れません。いずれ後悔しますから。


先輩の言葉に耳を傾け、後輩の動きからも学び、必要なら一からやり直す勇気を持つ。これは根性論ではなく、心理的にいちばん安全に成長できる姿勢です。


基礎に戻るというのは、自分を否定することではありません。今の自分を土台にして、次の段階へ進むための自然な選択です。


今さら、ではない。

今だからこそ、なんです。



そう思えたとき、身体も心も…もう一度動き始めます。


数年習ったくらいで、バレエが上達すると思っているなら、それはバレエをかなり軽く見ています。


バレエは、そんなに都合のいいものじゃないです。


プロですら日々試行錯誤する世界です。


何年やったか、という数字は、実はほとんど意味がありません。大事なのは、その時間で何をしてきたか、どういう身体の使い方を覚え、どういう感覚を積み重ねてきたか。


うちの生徒たちには何十年と言い続けてきたことで、ようやく理解してくれる子供たちが増えてきました!



これからも生涯かけて、これは伝えていきたいと思います。


左右木健一