さて、今日の私と言えば、人恋しさか、運動不足解消の為か、半年近く続けた抗がん剤の蓄積による気怠い身体に喝を入れ、奥さんに鼓舞されながら、久しぶりに賑い豊かな二子玉川の商業施設へと急ぐ事にした。

 

 

バスに乗り込んできた私を見て、席を譲ってくれる若者がいる。

ありふれた日常の何気ない風景の筈だが、優しさに胸が熱い。

「ありがとう」と言って、席を譲ってもらうそんな自分を、ふと不思議に思う。

あゝ私は他人から見れば、当然至極の事の様に老人に見えるのだ。

それを、自然に受け入れている自分が、なんとも不可解で寂しい。

もう一度「ありがとう」頭を下げて譲られた席に座った。

清々しい気持ちが、脳内を撫ぜる。

降り際に、再びその若者と会釈を交わして、バスを降りた。

 

最近、公共交通機関を、度々利用する様になって、どうもこの様な若者が少なくなって居ると感じるのは、断末魔の昭和の孤独な人間の遠吠えに過ぎないのだろうか。

「杞人の憂い」なら、それに越したことはないのだが。

 

目的地に着いたところで、何はさておきデパートで奥さんの買い物をする。

 

 

奥さんが購入した洋服の袋を抱いて休む私。

 

 

 

ホワイトデーは羊羹です!

 

 

そして、ホワイトデーの贈り物を済ませ、デパートを出て次の商業施設へと移動した。

 

 

コマ送りの様に、時間は過ぎる。

 

そして、自然とレストランが軒を連ねる七階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

私の好きな肉料理の店が並ぶ。

「嗚呼、タンだ!食いてえなぁ。」

この気持ち、「分かるかなぁ。分かんねえだろうなぁ」

「いい加減にしろ!未練だぜ」と、自問自答を繰り返す私。

 

 

脂質を固く禁止されて居る私には、却って目の毒だが、何か一品でも食べられるものはないのかと、目を皿の様にして見て回る。

やっと探し当てたのが、熟成鮨と炙り鮨の「TORA」。

鮨なら、油気の少ないものを、選んで食べれば良い。

 

 

ところが偶然入ったこの店の鮨の美味さに驚嘆した。

採れた魚をそのまま生締めして、凍らせながら熟成させると言うこのネタの旨味は絶品だ。

シャリがまた変わって居る。

赤いのだ。自家製の赤酢を程よく混ぜて炊き上げたシャリが、全てのネタと程よく絡みあって、コクのある旨味引き出し口福をもたらしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は、思い掛けず美味いものにありつけたし、歩数も七千歩近くに達して、棚から牡丹餅の一日だった。

 

 

「ごちそうさまでした」と、満面の笑み。