久しぶりの爽快感を味わった一日でした。

 

子供の為のオペラ『ふたりのももたろう』(二人の桃太郎)を観劇しました。いや観聴したと言うのが正しいのかも知れません。

 

元々オペラは私にとって、今ひとつ敷居が高かったのですが、今はすっかり虜です。

 

この物語は、絵本作家の木戸優起氏の作品を、斉藤祐一氏が上演台本に仕上げたもので、流石手慣れたものです。

例の如く川から、「どんぶらこ どんぶらこ」と大きな桃が流れて来ますが、同時にもう一つの桃が流れてくるという設定なのです。

お爺さんとお婆さんはそれに気づかず、例の桃を取りあげ、もう一つの桃は川下から海に流れ込み「虹が島」に辿り着くのですが、何とそこは鬼の住む島でした。

鬼に育てられる桃太郎の誕生です。

さぁ、昔ながらの桃太郎と新生桃太郎の対決だ!

この発想が面白いのです。

 

このふたりの桃太郎は何を意味するのでしょう。

犬、猿、雉を引き連れた情報社会の象徴でしょうか、或いは人間の持つ多面性か?と勘ぐってみたりして、自分勝手に想像する答えのない作業が、楽しいのです。

かと言って、決して啓蒙的に走らず、エンターテイメント性を追求しようとして可笑しいのです。

 

Cュタツヤ(ダンサー兼、振付担当)の犬、猿、雉の三役を同時にこなしながら、舞台を縦横無尽に駆け巡り、踊って魅せるパフォーマンスは見事です。

 

ピアニストでもある笈沼甲子さんは、『オペラ×演劇』という新しい企画を立ち上げて、オペラ歌手たちの美しく伸びやかに響く声量と、新劇のベテラン俳優陣の達者な演劇的行為がコラボする、実験的な舞台表現を、制作から公演へと一貫して真摯に続けてこられました。

そして、今回、キッズオペラという新しい企画を提供し、見事花開きました。

 

中世と現代とが同居するような奇妙な着想で新しい劇的空間と、そして明日への希望と勇気を観客席に届けてくれました。

オペラの様式美と演劇の持つ時代に即したリアリティーとが競い合う不思議な魅力を醸し出す、まさに自律的な企画です。

 

それにしても、劇場は久しぶりに子供たちの嬉々とした甲高い笑い声と.それに釣られて笑う大人たちの声を取り戻し、何とも平和で嬉しい気持ちになりました。

こういう作品が埋没していることが残念でならない、そんな意欲作です。

 

突如、話は飛躍します。

ほろ苦い経験が蘇って来ました。

 

私たちの劇団も、随分と昔の話ですが、子供たちのための作品「子供劇場」を試みたことがあります。

ジェームス・サーバー作『たくさんのお月様』。

「お月様が欲しい」と王様に駄々を捏ねる、お姫様のファンタスティックなお芝居です。

私は,王様の役を演じたのですが、悲しい事に観客が余りにも少なかったのです。

 その千秋楽のカーテンコールでのことです。

舞台上の出演者より観客席の子供達の数が少ないではありませんか。恥ずかしかったです。

僕らは半ば引き攣った笑顔で、子供達に感謝の頭を下げようとした瞬間でした。

二人の女の子が、突然が立ち上がり「ありがとう!これからも頑張ってね!」と、手を振って声をかけてくれたのです。

その時、僕の身体を得体の知れない戦慄が走り、その六才位の子供達から確かに演劇の、真の大切さと厳しさを教えられたのです。

あの時のトラウマ(?)は今でも離れてくれません。

 

それ以来、私は俳優を辞めないでいます。

 

さて、この作品、『キッズオペラふたりのももたろう』が配信されます。

(2023年4月15日 (土)~2023年5月16日 (火))

是非みなさんも見て下さい。

https://wakaiensouka-project.com/

 

 

2つのもも!

 

 

ずんずんどこ ノリノリ!

 

鬼退治のももたろう役 西山詩苑さん(テノール)

 

おにのこももたろう役 福士紗希さん(ソプラノ)

 

おばあさん役と虫かごの犬役の大嶋奈緒美さん(ソプラノ)・おにの親分の斎藤志郎さん

 

犬・猿・雉役のダンサー Cェタツヤさんと

 

おに1役の杉尾真吾さん(バス)

 

おに2役の勝俣康介さん(テノール)

 

おにのこと、おにたちのダンス!

 

青おに役の三戸大久さん(バスバリトン)と、脚色の斉藤祐一さん

 

黄おに役の渡邉恵津子さん(ソプラノ)と、おにのこももたろうの福士紗希さん

 

おじいさんとおに3役の町田大征さんと、おにの親分役の斎藤志郎さん

 

進行役・都の商人役の磯辺万沙子さん

 

お嬢さん役の横井麻子さん

 

ダンサー(もも)漆原加奈さん

 

指揮 米津俊広さん 

 

ピアノ・企画制作 笈沼甲子さん

 

パーカッション 多鹿大介さん

 

虹が島に色んな人が集まってきたシーン

 

全員集合

(写真を提供して下さった、勝又さん、横井さん、演出のむらまつさんありがとう!)

 

 

というわけで、皆さん長々とお付き合い、ありがとうございました。

 

いま、ここにいきていることは、それだけで、とうといことです。

からだはきずついても、こころは、うちゅうをかけめぐり、どこへでもとんでいきます。