劇団昴の俳優、水野龍司君が亡くなった。

 

余りに突然の事に、


「どうして!!」


言葉が出ない。

 

彼は今後の劇団昴を背負って立つ最も確かな信頼できる俳優だった。

 

その存在感は、毅然として揺るぎなく、決して人に媚びる事をせず、確固たる己の哲学を持ち続けて生きた彼の姿を、もう見る事はできない。


また一人、先に逝ってしまった。

 

彼は、先輩の名優小池朝雄が認めた数少ない俳優の一人でもあった。

 

今、中堅俳優たちが失いつつある最も肝要な俳優としての真摯な生き方を、身をもって教え諭すことのできた俳優だったはずだ。

 

しかし、組織の中で都合よく生きる事を嫌った、いや、そんな事には無関心だった彼の身体から滲み出た寂寥感漂う孤独な立ち姿は、忘れる事が出来ない。

 

後輩俳優達は、偉大な財産を失ってしまった。

 

合掌。

 

水野龍司。

1970年代から声優や舞台俳優として活動。劇団昴『汚れた手』『沈黙』、イッツ・フォーリーズ『おれたちは天使じゃない』、ひょうご舞台芸術『芝居~朱鷺雄の城~』など数多くの舞台に出演したほか、「ヒカルの碁」柿本先生役/加賀の父役、「NARUTO―ナルト―」のギイチ役、「ガンダム Gのレコンギスタ」ノウトゥ・ドレット役などで知られており、「THIS IS US/ディス・イズ・アス」ではメインキャラクターのうちの1人であるウィリアム・ヒル役を演じた。