二回目の接種を終えて、一日経った。
ある女医さんの話では、「二回目の接種の後高熱に見舞われ、枕元に置いたペットボトルの蓋を開ける力もないほどに苦しんだが、三日目にはまるで脱皮したかの如く、スッキリとした」と、話しているのをテレビで見た。
私のような高齢者は、比較的副反応が鈍いと聞いてはいたものの、
もしや、もしやと、枕元にペットポトルと解熱剤を用意して眠りにつくことにした。
実は、私にもこのワクチン接種で、なんらかの顕著な変化が体内に現れて、長い歳月が身体中に溜め込んだ、疲れや病の澱を吐き出して、まるで脱皮するかのような、新しい細胞が生まれ出るかのような爽快感を味わえたらと、密かに藁にも縋るような希みを抱いてはいたのだ。
目が覚めて驚いた。
何の変化も感じない。
それどころか、一回目の接種の時より、腕の痛みも軽く頼りない。
体温も、36度4分と呆れるくらいの平熱だ。
ペットボトルと解熱剤が、夕べの姿のままで、そこにあるのが可笑しい。
何だ!これは。
もしや、副反応を感じないということは、私の身体の免疫力は、ワクチンという異物の侵入に対して、もはや戦意を失い防御を忘れた瀕死の状態だということか?
これでは、待ちに待って、ワクチン接種をした意味がないではないか?
妻を相手に愚痴を言う。
この頼りなさは何んだ。
不安がよぎる。
しかし確実に、ワクチンは体内に注入されたのだから、先は明るいのだと、自分にしっかり言い聞かせて慰める。
そして今は何より、来年3月に私の演出する『一枚のハガキ』が、平常通り無事に上演される事を心より祈っている。
これからは、自分自身が一層用心しながら、一日も早く、国民の多くの人々にワクチン接種が施される事を切に願う。