私の所属する劇団昴が、中島敦彦作『君恋し~ハナの咲かなかった男~』を、黒岩亮演出で、919日に初日を迎えます。

稽古は、最後の追い込に、入りました。

 

 

   

 

中島敦彦の持つ独特な人情喜劇、そして奇想天外な発想の展開と、エンタテインメントに徹したこの作品は、理屈抜きに笑い、人間が愛おしくなり、そして生きる勇気与えてくれたます。

 

ただ、この作品を上演するにあたっては、論理や知識を振りかざすだけの伝統的な新劇の自然主義的な芝居作りだけでは通用せず、軽演劇の素養が必要になってきます。

つまり即興性が、優れた戯曲との間に化学反応を起こし、喜劇的状態が生まれるのです。

頭で考えるだけではいけません、また、そう仕向けてもいけません。

 

  

 

 

さて、舞台は、千葉の場末の『白川座』。

小屋主の「白川伍一」は金策に駆けずり回りながらも、いつか浅草に戻る事を夢見ている。

 

 

 

 

その彼に声を掛けられやってきたのが、梅園香代子率いるレビュー一座。

座長に惚れて教師を辞めた亭主兼マネージヤ-、 警官を辞めて劇作家を決意する井上ひさしらしき男、浅草を夢見て芸人を目指そうとする渥美清らしき男。

そんな一座の面々はゲストに迎えた一人の男を待っている。

男の名は、二村定一。

 

 

 

かつて浅草で、エノケンと二枚看板を張っていた名俳優。

しかし現れた二村は酒で足下も覚束ない酔っ払いだった。

この二村定一は、昭和初期に一世を風靡した歌手で、フランク永井の『君恋し』、エノケンの「洒落男」も、実は二村が最初にレコーデングした曲なのです。

今や知る人も少なくなりました。

 

実は、この芝居の初演で二村役を演じたのが、何と、作家中島敦彦氏自身だったのです。

正直、当時私は、まだ彼を存じ上げず、観ることは出来ませんでしたが、きっと音楽に造詣が深い彼ならではの、軽妙で愛嬌のある二村を、新劇の芝居と軽演劇の素養とを共存させ、心地よい歌声で生き生きと明るく演じたことでしょう。

 

昴の俳優たちも、この慣れない芝居に食らいつき、論理と感性のせめぎ合いのなか、歌あり踊りありと、精一杯、素晴らし舞台を皆様にお届けできるよう頑張っています。

それにしても、稽古中に色んな事がおきました。

 

 

「柿沼幸一」役の、俳優金房求さんが体調優れず、急遽、御友公喜君と交替せざるを得なくなったり、私の奥さん「梅園香代子役」が、稽古場で足をひねって、ふくらはぎを痛め、すわ降板かと、慌てふためいたりと、冷汗三斗の思いもしました。

幸い傷は浅く、今はいつも通り稽古に励んでいます。

 

おかげさまで、私はすっかりアッシー君となり、稽古場への送り迎えを、最近購入した新車と共に務めさせていただきました。 

   

 一人でも多くの皆様にご高覧頂ければ幸いです。何卒よろしくお願い申しあげます。