別役実フェスティバルという、演劇祭が、3月から始まった。



これは、1年半にまたがって、つまり来年の7月迄、19の劇団やグループ、そして劇場が参加して開かれる。


例えば、シェイクスピアの生誕450年とかで各劇団がその作品を取り上げ、競って上演したことはあっても、それはあくまで、横の繋がりはなく、劇団個々の企画であった。


今回の特徴は、別役作品を中心に、集団や劇団・劇場が、戸惑いながら手を繋ぎ、輪を作り、劇とは何かを問いただし、共通言語を見いだそうとする「最初の試み」と言っても過言ではあるまい。

私の60年になんなんとする俳優生活で初めての体験だ。


別役実氏より2歳年上の私は、状況は違えど、60年安保を共に体験した世代だ。
この頃、度々不条理劇という言葉を耳にするようになる。

唐十郎は、テントによる空間の移動という手段によって、寺山修司は、街を劇場化するという手段で日常性への戦いを挑み、非日常性を感じ取ろうとし、別役実は、あくまでも、プロセニアムアーチの中に、その不安で無限に広がる空間を観ようとしたのではないか?


正直私は、不条理劇という芝居を何度か見てはいるものの、その難解な論理の解析に苦しみ、何時しか、その世界から足が遠のいて行くことになる。

だが夢の中で、大変なものを失ってハッと目を醒ます後味の悪さが、いつもつきまとっていたような気がする。

そして、その気分を抱いたまま、一度も別役作品にまみえることもなく、現在に至ってしまった。



ところが、ひょんな事から、この別役実フェスティバルに、我が劇団のザ・サード・ステージが参加することになり、私も出演することになった。


病気で舞台を降板し、多くの方々に迷惑を掛けた、その責務を果たすためにも、勤めなければならない、大事で嬉しい企画だ。しかも、私に取って別役作品も、演出の鵜山仁氏との仕事も初体験だ。


この年になって、このような素晴らしい機会を与えてくれるとは、なんと、人生は楽しいではないか!