正月、年始の挨拶に来てくれた若い後輩達と、久しぶりで楽しいひとときを持った。
「美味しい、美味しい」と、私の奥さんの手料理を喜んでくれた。
雑談の中で、マスコミの仕事もあまり無く、収入はアルバイトに頼るしかない現実を聞く。
舞台を続けて行くことの厳しさと、先の見えない不安な状況に悩みながらも、何とか踏ん張り戦いを挑もうとする若者の真摯な姿があった。
自分の若い頃を昨日のように思い出しながら、こんな事を考えさせられた。
毎年、ノーベル賞を始め、さまざまなジャンルで偉大な賞が授与され、その勝利の栄冠に輝く人達がいる。その人その人に衷心からの敬意を表することは言うまでもない。
一方、こういう人達を見るにつけても、あらゆる時代あらゆるジャンルに於いて、絶えまざる努力を続けながら、栄誉も名声も受けることなく、それぞれの命題に向かい、死の間際まで戦い続けた人々のあった、いや、今もある、という事を忘れてはならない。
ほとんどの人間は、そうして自分の人生を全うして来たのだ。
例え我々が、そのように人生の表参道に辿り着くことのない人間の一人であっても、そういう自分自身に満足出来るだけの人間でありたい、と願う。
そういう人間であってこそ初めて、自分に与えられ、選んだ仕事を、仕事する事が出来るのではないだろうか?
ただスポットライトを浴びることだけに憧れてはならないと思う。
もし私が若い頃、先輩からこのような事を聞かされたら、なんと夢のない空虚な、そして時代錯誤も甚だしいと、鼻で笑ったことだろう。
年老いた今だからこそ、こんな当たり前の事を、あえて話しておきたいのだ。