菓子司あかまの栗きんとんをいただきました。

親指の先ほどの、小さな小さなお菓子。
注意深く、小さく小さく切って口に運びます。

栗!
まごうかたなく栗の味。
栗の甘さ、渋さ、こく が全部入ってる。

裏ごしされた餡の中に、
みじんに切られた栗のつぶつぶが入っている。

つぶつぶを噛みしめると、
秋の山の枯葉を踏む音がする。

澄み渡る秋の青空。
風がすすきの穂を揺らす。

熊も栗を食べに来た。
大いなる自然の営み。

……はて、栗の味をなぞるなら、
なぜ人は菓子を作るのだろう?
栗をそのまま食べてればいいやんね。

なぜ人は絵を描くのだろう?
なぜ人は曲を作るのだろう?
自然にあるものをそのまま受け止めていればいいのでは。

……。

翻然と気付く。

菓子には栗以外のものを入れ込めるからだ。

枯葉を踏む音を、
天高く続く空の青を、
ほほを撫でる風の感触を、
生き物たちの生に馳せる思いを。

多次元のものごとを
菓子や絵や曲や詩や歌やダンスや彫刻や、
さまざまな方法で1つに表すのが人間の芸術だ。

他の生き物にはできないこと。

人よ
神の子よ
造化の神よ。