にゃあと鳴く | 蒼風島茶異事記(茶農家気まま日記)

にゃあと鳴く

 昨日。
 篠降る雨の中、猫を埋めに行った。
 茶園の片隅に、死んだ猫たちを埋め続けてきた場所がある。
 最初はそこに埋めるつもりで。
 でも、すぐに気が変わって、南向きの梅の木の下に埋めることに決めた。
 そこなら、誰も掘り返したりしないだろうから。

 心は頼りないものだから、ある距離より近くには、決して近づいてはいけないのだ。
 近づくとどんなにまっすぐ立とうとしても、心は予想以上に大きく揺れて、傾いてしまうものなのだ。
 心が柔らかなうちは大きく揺れるだけですむし、傷ついても再生できるだろう。
 硬くなってしまうと、そうはいかなくなる。
 ぼくは少し近づきすぎたし、柔らかくもない。

 今朝、ほんの数時間前まで元気だったらしいのに、そいつだけ寄ってこないので探してみると冷たくなっていた。
 死因は推測できるが、書かない方がいい。
 移動する数分の間、ぼくは努力していた。
 心を水平に置くように、動かさないように、距離を置くように……。
 フロントガラスを叩く雨はワイパーで何とか払えるけれど、溢れそうになる涙までは拭えないから。
 無駄だったけれど。

 梅の木の下に、小さな深い穴を掘った。
 そこにそいつを入れて土を被せた。
 土も盛らないし、墓も建てない。
 そこに埋めたのはただの亡骸なのだから。
 
 帰ってくると、親猫と仔猫二匹が寄ってきた。
 もう一匹は、鳴きながら寄ってくることも、ごまをすって、足に頬ずりすることもない。
 もう二度と。

 にゃあと鳴く その声ひとつ 埋む時雨