風蒼き島 | 蒼風島茶異事記(茶農家気まま日記)

風蒼き島

 俳人、篠原鳳作の句に、(たしか)
「しんしんと 肺碧(あお)きまで 海の旅」
 というものがある。

「その感じを味わいたくてね」
 と言って、ある友人が屋久島を旅客船で訪ねてくれたことがあった。
 夏の、やや黒みを帯びた碧い海の上、その彼方の真っ青な空に浮かぶうすい藍色の島影が見えたとき、
「頬に当たる風の蒼さが目に染みる気がした」
 そうだ。
 彼が言うには、
 透明な水を幾層にも重ねると、やがて深い翠色の淵になるように、透明な風を幾層も重ねると、蒼い空になるのだそうだ。
「その蒼い風がね、頬に吹きかけてくるのが見えたんだよ」
 と嬉しそうに話してくれたのが印象に残っている。

 それで、自分の中では、
 屋久島は蒼い風の島、蒼風島(やくしま)なのだと決めている。