最近よく考えているのだけれども、シェップの代表作っていうといったいどのアルバムになるのだろうか? ドクロのジャケで有名、ブラック/クラブ系からも人気のインパルス盤「ザ・マジック・オブ・ジュジュ」? 「いそしぎ」のメロディがみんな待ちきれないMPSのライヴ? ソネット、BYG、あとアメリカ30、その後はブラックセイントとかタイムレスとかから、最近ではヴィーナス...たくさんのレーベルにたくさんの音を残してきたシェップだけど、代表作ってなんだろう? 永遠のナゾであるほうがいいのかな? シェップはご存じのとおりスタートはR&Bのバンドだ。そしてジャズを演奏。といってもシェップを聴くのにその経歴はあまり関係無い。まあ、ジャズマンの経歴と音を結びつける行為は20世紀に置いて行こう。ジャズ/音は、音色を通しての、その人の魂から発生されるものを大きな基準として聴こう。シェップならなおさらだ。
シェップの魅力、それはなによりも音色。それには一貫して、アフリカを母とする黒人音楽の魂の声がはっきりと、ぐっさりと刻まれている。「ジャズ批評」誌73号(1991年)に掲載された原田和典氏のインタビューによると、シェップはマサチューセッツ大学で黒人音楽の歴史を教えている、ということだが(2001年の現在(※注:本が出版された当時です)ではどうなんでしょうか?)そのことに関してインタヴューで「私が最初に教えるのはアフリカの民族音楽です。(中略)ここで言うアフリカ音楽とは、ワールド・ミュージックと呼ばれるような商業的にでっちあげられたものではありません。」と語っている。当時のセールス主義にのっかってやたらと精神性の低い、魂の薄い表現を繰り返していた一部のアフリカ音楽に対する厳しい言葉。シェップの音色の魂のよりどころへの敬愛に、ハッとした。
「ジャズはアメリカにとって最も意味深い社会的/芸術的貢献のひとつだ。(中略)ジャズはあらゆる人民の解放をめざす。これこそがジャズの本質である。これはこじつけではない。ジャズ自身が抑圧から生まれた音楽であり、わたしの同胞の隷属状態から生まれた音楽だからである。(ダウンビート誌年鑑「ミュージック ’66」)」
そう、シェップの音楽にはいつだって黒人魂が、表現主義的に、歴史主義的に響いている。ジャズ/音楽が芸術であることの条件は、大衆との魂の交流が音によって行われるかどうかである。人間の魂と深く結び付いていない音楽は、やはり芸術ではないだろう。耳だけを満足させる音楽になんの魅力を感じようか? そういった意味でシェップの音はまちがいなく芸術であり、後世まで語り継がれてゆくべき、黒人魂、それは抑圧され搾取され続けてきた黒人の苦しみを十二分に表現した魂、なのだ。...
― ジャズ批評ブックス『Jazzテナー・サックス』より
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今回、よりによって Archie Shepp を取り上げようと思ったのは、5枚一組の紙ジャケ廉価版『Archie Shepp 5 Original Albums』を偶然(?)入手して、久しぶりに聴くことができたからです。それまで自分は『Mama Too Tight』『The Magic Of Ju-Ju』の2枚を知るのみで、なんだか素直に楽しめないな...なんて思っていました。まだジャズ初心者の頃です。初心者なのに Archie Shepp に手を出すのが、そもそも間違いだったかもしれません。(当時、Impulse! レーベルの諸作が一斉にCD化されたのです。)しかし、今やジャズを聴き続けて30年余り、初心者ではないだろう...と勝手に思い、Archie Shepp に再挑戦してみました。
フリージャズな展開が全く楽しめなかった当時と違い、案外、面白く聴けました。でもやはり 例えば Zoot Sims を聴くのとは全然違います...同じジャズで、こうも違うものなのか...これが素直な印象です。自分は、ミュージシャンとしては Zoot Sims のほうがはるかに上手だし、素直に楽しめる...しかし、Archie Shepp はサックスも妙な音で鳴らす変わった人だが、聴き手に迫る「何か」がある...そんな印象を持ったのですね。その「何か」に少しでも接近できるようになりたいです。
ジャズ批評ブックスから紹介してみましたけれども、まぁ理屈っぽいこと、「酔いどれテナー」の時とは全然違います。自分は理屈っぽい説明を要する音楽は、往々にして「失敗作」が多い...セールス的には成功しても、聴いて素直に楽しめない音楽が多いのではないかと勝手に思っています。 Archie Shepp 、彼の音楽は一体どうなのでしょうか...やはり Shepp も理屈っぽいだけの Jazz なのでしょうか。また、自分は Shepp の音楽にどんな感想を残せるのでしょうか...「厄介な作業」のような予感もしますが、挑戦してみようかと思います。
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