この物語は、男→女 に性転換したがあることをきっかけにキャバ嬢を始めることになった1人のMtFの物語である。

※これは実話であり、私(めろう)の体験記です。

MtF・・・Male to Female(体と社会的役割を男性から女性へと変えた人又は変えようとしている人のこと)

 プロローグはこちら

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前回のあらすじ

偶然始めることになったキャバ嬢の仕事だが、これでよかったと思うことができためろう。

お客様に可愛いと言ってもらえて胸が熱くなる。

もっともっと可愛いと言われるために決意を新たにするのであった。



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次の出勤日

私は緊張していた。

前日はすごく良い気分で初めてのキャバ嬢体験を終えられた。

すごく楽しかった。

だが、自分がMTFだということを忘れたことは一時たりともない。

常に自分の男性的特徴が出てしまわないか気を張って生活している。

キャバ嬢の接客でも同じだった。

男性的特徴

それは何かというと…

"声"である。

女性として生活するのに1番ネックとなるのが声なのだ。

人によってはそうは思わないかもしれない。

だが断言してもいい。

女性として生活する上で最も重要なのは声である。

完全に女性の声を出せないといけないということではない。

男性の声に聞こえない声を出すこと

これが重要なのである。

いくら見た目が女性に見えていても、声が男性だと

「あ、この人は男性なんだ」

と認識する人がとても多いようなのだ。

私は女性だ。

女性として生きたいのだ。

MTFだと認識されることなく、生まれながらの女性と同じように社会に溶け込みたいのだ。

だから男性に聞こえない声を出せないといけない。

生理はこないが、生理で困っている話もする。

子供は産めないが、結婚して子供を産んで旦那さんと幸せに生活したいとかも言う。

生理も、出産も、決して叶うことのないこと。

だが渇望してしまう。

だからせめて声だけは女性でありたい。


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私の声がどんな声なのかお伝えしよう。

簡単に言うと、とても高い。

高すぎる声は、店内の喧騒に簡単にかき消されてしまう。

ではなぜそんな声を出しているのか。

それは先に言ったとおり、男性に聞こえない声を出すためである。

発声を失敗するとひっくり返って男性の声が出たりする。

私の場合、失敗しない確率が最も高いのがすごく高い声なのだ。

女性の声を出しましょうとMTF当事者が言っているのをよく目にするが、私はもっとレベルが低い。

女性として変な声であろうと男性の声に聞こえなければなんでもいいのである。

一般女性のような声を出せれば理想的だが、私はそこまでクオリティを求めてはいない。

人には向き不向きがある。

どうしても自然な女性の声を修得できない人もいるのだ。

ならば致し方ないということで、高すぎる声を甘んじて受け入れている。

女性に聞こえる声のようなので私はそれでいいと思っている。

思っているのだが…それでも辛いものは辛い。

お客様と話す時に言われることがある。

「それ、地声なの?」と。

ほとんどのお客様から言われる。

その度に私は心の中で天を仰ぐ。

なぜだ…なぜ、こんな声しか出ないのだ。

一瞬で無我の境地に入り、地声なんですよ〜と答える。

そこから声をいじられることがあったりもする。

この瞬間が1番辛い。

女性に生まれてさえいれば苦労することなく女性の声が出る機能(声帯)が備わっていたのである。

それを分からされる瞬間なのだ。

隣で接客している先輩キャバ嬢の、聞こえやすい女性の声を聞いていても思う。

羨ましい。

当たり前のように女性の声で喋っている。

だが、羨ましい羨ましいと言っているだけでは何も変わらない。

せめて少しでも聞き取りやすいように工夫を加えることを意識したり

徹底的に容姿を磨くことに力を入れている。

声がだめでも、それを補えるほど魅力的な女性となればいい。

子供が産めなくても、それでも一緒にいたいと思ってもらえるほど魅力的な女性となればいい。

私の信念ともいえるものだ。

キャバ嬢という仕事は、女性的魅力を高めてくれる。

容姿を売りに仕事をする厳しい世界だが、このフィードバックはとても大きい。

女性としてはまだまだ未熟なMTFであり新米キャバ嬢だが、挑戦する価値のあるものだと感じている。

将来、キャバ嬢として、女として成長した私が何を思うのか今から楽しみである。




次回

脱・新米キャバ嬢

更新をお待ちください。