故郷へ帰るの言っても、福島の隣県、宮城の地元石巻に帰るに過ぎない。

私は大体、二週間おきに帰省している。

私は故郷石巻が好きなのだろう。何度も此の町を恨んだこともあったかも知れない。

しかし、此処で生まれ、此処で育った。

 

東京10年、京都7年、ロンドン5年、モスクワ1年。

細かい事を言えば、千葉の柏に1年以上。埼玉の上福岡にも暫く住んだことが事がある。

三カ月程度ならば、期間工で旅費を稼いだ、愛知県豊田市、神奈川県川崎市も数に

入れることができる。

同じ宮城県だが、石巻では無く古川市(現大崎市)にも1年程度住んだことがあった。

 

一体、引越し回数は幾らあったろうか?20回以上は悠にある。

フランスの哲学者、ルネ・デカルトは、記憶が正しければ、30回以上引越ししていると云う。

「隠れる者は、よく生きる」 と語っている。

中古自動車屋を営む、とは言っても、嫁さんの父親、即ち舅爺の土地に店を出し、

社長は舅爺、専務は友人、自らの姓は名乗っていても、うち婿と世間は侮っている。

実際の経営は友人がやっているのだが、肝心なところは舅爺が握っているので、

創業25年経っても、彼はナンバーワンに成れない。

 

金持ちの嫁さんを貰うと、往々にして実力を過少評価される。

世間は、「バックが良いから」 と彼の努力を侮り、逆に友人自身、世間の目を意識

し過ぎて、ひねくれ者になって非社交的に成ってしまった。

 

私は暇になると、ちょくちょく彼の店に行き、迷惑ながらも、彼と世間話をすること

度々であった。

細かい事を言えば、彼との付き合いは、年数だけで言ったら、三歳からなので50年

以上になる。勿論、お互い居住地の違いから疎遠の時期もあったが・・・

 

 

馬鹿話をしていたら、どんな流れでそんな話題になったかは忘れてしまった。

 

「三十代後半から四十過ぎの女は本当、“どスケベ” だよ」

 

管理人の私が働く宿泊施設には、二人の清掃で働くパート主婦がいる。

何故か一人は四年生大卒で、地元福島では無く、首都圏出身者だ。

性格は明朗快活。水泳を得意とするスポーツウーマン。

しかし、私は彼女は “どスケベ” だと直感した。

 

 

片桐氏(仮名)は孤独だ。とは言え、同じ会社の人とは普通に繋がりはある。

しかし、私から見ると孤独に映る。

彼は優しい人柄だ。容貌とその話し方にそれは表現されている。

整った顔立ち。若い頃は男前であったろう。今でもバリカンで整髪すると、

あたかも高僧のような顔立ちである。

彼は不思議な目をしている。日本人の黒目では無い。茶と金が混じった言葉で

言い表せない色なのだ。

 

60代後半の御年、補聴器をつけている。耳が遠いせいか会話をする時、異様

に顔を近づけるので、最初は戸惑ったが今は慣れた。

 

 

一週間程前に、B棟二階の洗面所で片桐さんに出くわした。彼の半袖の下着から

入墨が覗いていた。品の良い入墨であった。タツゥー(Tatoo)では無い。正に和物

の刺青である。

30代、40代の宿泊客にはタツゥーを入れている者もいるが、矢張センスに欠ける。

恐らく、其れは生き様もそうなのだと想像する。