昨今、発達障害やパーソナリティ障害であるという人が異常に増えているように感じます。

実際にはどうなのでしょうか。

発達障害の中でも多いのはADHDとASDです。ADHDは大人になってから診断されることが多く、ASDは子供の頃に症状が診断されやすいという特徴がありますが、境界線上の人も含めれば、どちらも人口の5%以上いるのではないかと推測されています。(病院での診断ではADHD3%、ASD1.6%)

ADHDとASDは併存することも多く、ADHDと診断された人の25%がASDの特性(すべてかその一部)を併せ持っており、ASDの人の40%がADHDの特徴(全部か一部)を併せ持っています。そのパーセンテージの差からも、ASDよりADHDの人の方が全体発症診断数(母数)は多いのがわかります。そして、医療受診された発達障害全体の25%が、ADHDとASDの両方の診断基準を満たしている、つまり、完全なADHDとASDの併発である(総人口の0.7%)と報告されています。

日本で発達障害と判定(医療診断及び公的調査含む)されている人の総数は、人口の10%、10人に1人はいると考えられます。しかし、これはおそらく氷山の一角です。発達障害は生まれつきの脳神経の働きの偏りであり、一生涯治ることはありません。そして、病院や公の調査で診断されていないだけで、グレーゾーンの人も含めれば実際には発達障害だという人はもっと多くいるはずです。


パーソナリティ障害とされる人の割合(医療診断及び公的調査含む)もまた、人口の10〜15%(10人に1人以上)と報告されています。

病院に受診する人が最も多いのは境界性パーソナリティ障害で、病院で診断されるパーソナリティ障害の6割以上を占めますが、一般的な調査では人口の2%程度とされます。

また、近年増えているとされるのが、境界性パーソナリティ障害と地続きで繋がっているスペクトラムの一端と考えられている自己愛性パーソナリティ障害で、アメリカでは人口の6%(16人に1人)いるという報告もありますが、一般的な調査では、こちらも人口の2%程度と考えられています。

この二つのパーソナリティ障害は、境界線が非常に曖昧で、互いに移行するスペクトラム(連続体)の一部と考えられており、併存の割合も高いので、合わせると総人口の3%程度を占めると考えられています。

また、この二つのパーソナリティ障害は、ADHDと併存する割合が最も高く、特に境界性パーソナリティ障害の人の40%はADHDの特徴を有しています。さらに自己愛性パーソナリティ障害の人の場合は20%がADHDを併発しています。

一方、これも人口の2%程度を占めるシゾイドパーソナリティ障害ですが、ASDとの併存率が非常に高く、シゾイドパーソナリティ障害の人の50%以上がASDであると言われています。

ASDとシゾイドパーソナリティ障害は、あまりにも親和性が高いので、かつては、同じ特徴を有していても、幼年期に見つかったらASD、大人になってわかった場合はシゾイドパーソナリティ障害と診断された時代もあったそうです。


しかし、実際には発達障害とパーソナリティ障害はまったく別の障害です。

まず、発達障害は先天的なもので、一生涯治りませんが、パーソナリティ障害は後天性が強い障害で、それ自体は完治も可能です。

そして、発達障害がパーソナリティ障害と併存する場合には、生まれた時からADHD・ASDだった子が、その後の環境要因により、境界性・自己愛性・シゾイドパーソナリティ障害などを発症することが多いのです。

繰り返しますが、パーソナリティ障害は、発達障害と違って、生まれつきの脳神経の働きの偏りではありません。

言わば、発達障害がコンピューターのハード面だとすると、パーソナリティ障害は、そのハードを動かすソフトの障害ということです。そして、このソフトは改善の余地があります。ですから、一般的には、パーソナリティ障害は治る障害なのです。

ソフトの改善は、配線の修理ではなく、プログラミングの作業になります。具体的には薬剤治療ではなく、カウンセリングによるということです。

ただし、発達障害とパーソナリティ障害が併発している場合、症状の改善が難しくなります。ソフトを治そうとしても、ハードの不調が邪魔をするわけです。

特に、ADHDがASDと併存している場合には、ADHDの対処療法薬(コンサータなど)などもあまり効きませんし、ASDやパーソナリティ障害には症状改善の専門薬もないので、治療による症状改善は非常に困難です。

日本の精神医療は、基本的に薬の処方箋を出すだけで、カウンセリングなどしませんから、上記のような発達障害やパーソナリティ障害の複雑な併発症状においては、ほとんど無力と言っていいと思います。


例外は、ADHDの症状を緩和するコンサータなどの薬が効く場合で、そういう人にとっては、併発症状があっても、病院に行く価値があると思います。

ただ、日本は、欧米に比べると、ADHDの症状改善薬の規制が極端に厳しく、現在、成人用の即効性のある中枢刺激薬はコンサータしか認可されていません。そして、例えば欧米では第一選択薬として広く認可されているアデロールは、日本では常習性を恐れて覚醒剤指定されていて使用禁止です。そのため、現在、日本では、ストラテラの製造中止をきっかけとして、治療を求めるADHD患者が増加し続けていることもあって、コンサータの不足が深刻化しています。

一方で、不思議なことに、欧米では依存性の高さから規制が厳しいデパス(エチゾラム)などの精神安定剤については、日本は規制が非常に緩く、野放しになっています。

例えば即効性の高いデパスは、その依存性の高さからアメリカでは禁止されており、欧州でも医師の厳格な管理の下、カウンセリングを受けることを条件に処方されています。しかし、日本ではデパスは必ずしも精神科や心療内科でなくても、内科でも処方は可能で、ほとんど規制されてきませんでした。

私としては、そのおかげで助かってきたというか、デパスにお世話になってきた面があります。心理的ストレスやパニック症に対する鎮静手段として、冷静な自己管理ができるなら、規制はない方がいいと思うのですが、それだけでは済まないのも確かです。

日本は、そもそも医師によるカウンセリングがないので…。