〈正しい少子化対策〉


①生物学的に女性が最も子どもを産みやすい10代後半で子ども(第一子)を産むことを政府が奨励する。(晩婚化・無子化の解消)⇨生物学的には高校生からの妊娠・出産が最も健康的で望ましく多産も期待できる。そのためには、中学生・高校生の男女交際や結婚を国家レベルで奨励していく法改正や教育的指導が必要である。だが、それ以前に、中学生・高校生の男女交際を〝不純異性交遊〟などと呼んで忌避する硬直的な教育指導を一掃し、男女の交わりを適切に評価する価値観の育成が必要である。「明るい男女交際」「明るい子育て」カウンセリングが、中高の学校教育の一環として取り入れられることは急務である。まずは、男女交際も子育ても、人間的成長にとって必須という認識が社会全体に広まらなければならない。それによって、10代後半で結婚して子どもを育てていることが、社会的に積極的に評価され、進学や就職にも有利に働くようになることが肝要だ。

「10代で子どもを産むのは不良」などという認識が世間一般に広くイメージされるようでは話にもならない。

同時に、夫婦が互いに「一緒に苦労する」という共同体意識を持って、力を合わせて支え合えるような度量のある人間性を育てることを最重要視する教育観・人生観が根付かねばならない。豊かな人生をおくるためには、学歴やキャリアなどより、その方がはるかに重要である。


②高校生と並んで第一子出産の生物学的な最適齢期である大学生の結婚・妊娠・出産を、国を挙げて大いに奨励し、「子育てに勝る人間教育はない」という価値観を大学教育においても学生たちに根付かせる指導を徹底する。(子育ての高付加価値化)⇨「妊娠・出産・子育て」による休学が、就職活動において、履歴(キャリア)上プラスになる社会的評価の醸成が急務である。将来的には、複数の子どもを連れて高校や大学で授業を受け、子どもを連れて会社や役所に出勤する風景がありふれたものとなるのが理想である。

そのためには、「社会全体で子どもを育てる」という考え方が、社会通念として確固としたものとなる必要がある。それによって、他人の子供であっても、自分の子供同様に、遠慮せずに気を配ったり叱ったりするのが普通になることが望ましい。〝情けは人の為ならず〟が、共通認識となる社会を目指すのだ。

すべての子どもに対して、大人たちは責任を感じるのが当たり前であって、もちろん、「保育所は子どもの声がうるさい」などと言われ、迷惑施設として地域住民に忌避され、建設反対の動きが起こって、保育園の開設が断念を余儀なくされる事態など、決してあってはならない。


③「子育ては人生最大の喜び」キャンペーンを展開する。(子育ての〝生きがい〟化) ⇨「子育ての喜びは、一人より二人、二人より三人と、子沢山で兄弟が増えれば増えるほど、親の喜びが大きくなる」というイスラエルのユダヤ教的価値観を見習い、「子沢山は善」「親であることは喜び」という価値観を日本社会に浸透させる必要がある。

そのために、保育園や幼稚園から、小中高、大学まで、「兄弟は多い方が楽しい」という価値観を植え付ける教育を徹底する。また、漫画、アニメ、ドラマ、映画などでも、5人兄弟、10人兄弟を主題とした作品を奨励し、文化的な浸透力で、国民の価値観の変容を促すことも考える。

結局、子育てが親の喜びにならなければ、少子化を克服することはできないのだ。

仕事より子育てがしたい」と、世の大人たちの多数が、男女共に思うようにならなければならない。

特に、経済的に富裕なセレブの間で、10代、20代の若さで、保育所や育児施設やヘルパーや親に頼らず、自分で育てる子沢山の専業主婦や専業主夫として、愛情に満ちた育児生活をおくることが、「豊かで幸福な家庭生活」と「充実した人生の成功」のトレンドとなり、やがては確固とした上流階級の社会的ステイタスの証となることが望まれる。

つまり、「うちの子は東大なんです」と言うよりも、「うちの子は10代で3児の親なんですのよ」と言う方が、自慢になる社会でなければならないということだ。



〈もう一つの安易な少子化対策〉


移民(難民を含む)を増やす。⇨アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツなどのように、異次元の移民受け入れ(難民含む)を実行すれば、第一に人口増加が見込まれ、労働力も増える

先進国の恵まれて育った若者たちと違って、移民の若者は、給料の低い、きつい仕事でも、高いモチベーションを保って仕事に従事することが多い。多少日本語がたどたどしくとも、やる気のある途上国の若者の方が、活力と忍耐力に乏しく、やる気のない、甘やかされてスポイルされた日本の若者より、労働力としては好ましい。不法移民を非合法で雇い、人件費を大幅に削減している経営者もいる。こうした移民労働力の利用によって、産業競争力の強化が見込まれる。

第二に、途上国からの移民は、先進国の若者より子どもを多く産むので、日本生まれの若者たちの出生率が低迷を続けようとも、移民の出産貢献によって全体の出生率が底上げされる

また、第三に、難民の受け入れを積極的に進めた場合、人道的責任を模範的に果たしていると見做され、国際社会から信頼と尊敬を得ることができ、国家としての信用や発言力が高まる。


一方で、当然だが、移民の急増にはリスクがある。犯罪の増加やスラムの形成。安価な労働力である移民に仕事が奪われ、給料も上がらないし労働環境が改善されない弊害。現地コミュニティとの軋轢や対立の先鋭化など、どこの国でも移民の社会問題化・政治問題化は免れない。国民の自国ファースト意識や排他的ナショナリズムを刺激する可能性も高い。また、移民は、一度入れてしまうと、簡単には追い出せない

こうした移民リスクが見過ごせないものになったため、人道的配慮から難民・移民受け入れに積極的で、100万人の難民を受け入れたドイツのメルケル首相は、国民の反発を招いて人気が急落し、首相の地位を追われた。イギリスは、移民の無制限な流入に耐えきれなくなって、ついにはEUを離脱した。アメリカでは、バイデン政権の寛容な移民受け入れ政策が、推定で730万人もの不法移民の流入を招いたとして、多くの国民の反発を招いており、それがトランプへの支持票になるのではと恐れられている。カナダでも、これまで移民受け入れに積極的だったトルド首相は、国内の家賃の高騰や医療制度への負担増などから、政府の移民受け入れに不満を持つ国民が増えていることから、移民抑制へと大きく政策の舵を切った。フランスのマクロン大統領も、国籍修得条件を厳格化するとともに、不法移民に対する規制を強化している。



〈まったく効果がない少子化対策〉


国家が、若い世代の結婚・妊娠・出産を促すために、また、男性も女性も、育児休暇と手厚い福祉・育児ケアを受けられるように、大規模な財政支出を行う。⇨これまで、すべての先進国の少子化対策は、このタイプのやり方であった。しかし、いかなる国の財政支出政策も、長い目で見れば、生まれてくる子どもの数を増やすのに成功していない

加えて、1980年代に、わずかに出生率を上昇させたとされる北欧諸国の手厚い福祉政策も、1990年代以降は、まったく効果をもたらさなかった。結局、手厚い援助が当たり前のものになると、次の世代は、出生のために更なる援助を期待するようになる。より依存性が高くなるのである。

また、豊かな先進国において、老後の年金や老人福祉などの制度が充実すればするほど、国民は子どもを作らなくなるという傾向がある。老後の面倒を見てもらうために、子どもを作る必要性がなくなるからだ。

「十分なお金をもらえれば、若い世代の結婚も増えるし、子供も産む」という問題ではないのだ。現代人は、特に若者は、気楽な独身のライフスタイルが好きだから、あるいは、他者に対する責任を負いたくないから、あるいは、結婚したい相手がいないから、結婚しないし、子どもを産まない。しかも、彼らが負いたくない結婚や子育ての〝責任〟とは、金銭的な不安というより、むしろ、家族が共同体であるために費やされる個人的犠牲、つまり、必要な人間関係のわずらわしさやストレスや費やされる時間である。そういう意味では、結婚も出産も、将来に向けてのリスクでしかない。この事実は、どれほど国が財政支出したところで変わるものではない。

特に東アジア圏では、結婚していない若者は、成人後も親と同居していることが多い。その場合、家賃や光熱費や食費などがかからず、稼いだお金は、ほとんどすべて自分の趣味に使えるし、貯金もしやすい。ところが、結婚すると、実家を出ることになり、それまで必要なかった家賃や光熱費や食費など生活費を自己負担しなければならない。

昔は、兄弟も多かったし、親の面倒を見なければならない一部の不運な人たちを除けば、成人したら自由を求めて親元を離れる若者が多かった。だから、かつては、結婚は、むしろ、生活費の節約につながったのだが、今では逆で、結婚すると、かえってお金がかかるのである。

だからといって、それまで親が負担してくれていた生活費を、結婚したから、今度は国に援助を求めるというのは何か違う気がする。若者がお金がないのは今も昔も変わらない。ただ、概して、昔の若者は、今の若者ほど依存性が高くなかったし、自立心が旺盛だった。

また、お金がある恵まれた人が、みんな結婚したがるわけではないし、子どもをたくさん欲しがるわけでもない。そうであるなら、セレブが、みんな、10代や20代前半で結婚し、子どもを5人、10人と産んでいるはずだし、そうした〝大家族〟が、豊かさのステイタスになっているはずだ。しかし、実際には、10代の結婚も、子沢山も、夢も希望もない途上国の貧困家庭のイメージでしかない。イギリスでは、大学卒業者は、高卒で社会に出た人々の1/2しか子どもを産まないというデータもある。財政が豊かで教養のある人々ほど晩婚化し、子どもを作らないのである。国の財政支出には、こうした社会の価値観を変容させる力はない。

少子化対策を財政支出に頼っている以上、豊かになればなるほど、少子化は進むしかないだろう。





〈難民の認定数〉(2021)

ドイツ  38918人

カナダ  33801人

フランス 32571人

アメリカ 20590人

イギリス 13703人

日本     74人


〈移民人口数〉(2020)※不法移民除く

アメリカ 5063万人

ドイツ  1573万人

イギリス  939万人

フランス  852万人

カナダ   805万人

スペイン  684万人

イタリア  639万人

日本    273万人

スウェーデン192万人


〈合計特殊出生率〉

フランス 1.68 (2023)

アメリカ 1.67 (2022)

ドイツ  1.58 (2021)

イギリス 1.56 (2021)

スウェーデン 1.45 (2023)

カナダ  1.43 (2021)

ノルウェー 1.41 (2022)

フィンランド 1.26 (2023)

イタリア 1.25 (2021)

日本   1.20 (2023)

スペイン 1.19 (2021)