小幡績「子育て支援なんか意味ないよ。だって、世界中どこも少子化対策に成功している国なんかないもん。中国も台湾も韓国も、日本以上に出生率の低下が進んでいるし、欧州もアメリカも、途上国から大量に流入している移民が子供を産んで全体の出生率を上昇させているだけで、白人の出生率の低さは日本と変わらない先進国は、必ず少子高齢化するの。これを免れる国はない。福祉が手厚くてジェンダー平等や子育て支援が充実しているスウェーデンやフィンランドだって少子化は進んでいる。先進国で少子化の進行を食い止めることに成功した国はひとつもない!少子化対策なんて意味ないんだよ。」


田原総一朗「若者の経済的貧困が少子化の原因だと良く言われるが、では、どうして、今より貧しかった終戦直後や、昭和初期、明治・大正期は出生率が高かったのか。どうして経済的に豊かな先進国は出生率が低くて、貧しい途上国ではたくさん子供を産むのか?」


小幡績「途上国では、子どもは労働力なんだよ。昔は日本も貧しい途上国だったから、国も家族も、豊かになるためには、子どもをたくさん産む必要があった。昔は、貧しい中で10人兄弟とか普通だった。それに、本当に貧しい国では、人間は一人では生きられない。生き延びるためには、家族や共同体が必要だったんだ。逆に、今の日本人は、豊かになってしまって、一人でも生きられる環境にある。そうなると、『家族を作るのが当然』という社会的圧力も薄れるし、結婚するのもしないのも自由だという価値観になる。むしろ、現代人は、家族をつくるのが〝めんどくさい〟んだよ。結婚も、子どもをつくるのも、将来を考える上で、リスクになっちゃった。そんなリスクを負うのが、精神的にも経済的にも重いし面倒なんだよ。これは、日本だけの話じゃないよ。豊かになったら、どこの国でもそうなる。集団で生きるより、個人で生きる方がラクになる。独身貴族なんて言うでしょ。出生率って、要するに、婚姻率なんで、結婚しなけりゃ子どもも減るわけ。貧しい国や地域ほど、結婚率は高いし、兄弟も多い。経済的に最も豊かな東京都の出生率が低くて、平均所得が国内最低の沖縄県が一番出生率が高いのは何の不思議もない。だから、いくらお金をかけて少子化対策に力を入れたって、実効性はまったくない。そんな無駄遣いするより、もっと本当に必要なことに、お金を費った方がいい。」


田原総一朗「日本は、ここ30年低迷を続けている希望のない最低の国だと言われていますが、どうでしょうか?」


小幡績「そんなことないですよ。みんな、『日本は悪い、悪い』と自虐的な発言をする人が多いけど、実際は、日本は良くもないけど悪くもない。希望もいっぱいあります。むしろ、中国や韓国の方が希望がない。中国なんて若年失業率14%ですよ。韓国も格差がひどすぎて希望がない。そういう国から、『日本の方が希望があるから』と僕の大学にだって、たくさん外国人学生が来ている。日本人は、日本が悪い、政府が悪いと言い過ぎだ。世界のどこにも、日本よりはるかに成功しているモデル国家なんかない。」


田原総一朗「僕が以前、朝日新聞と毎日新聞の主筆に『どうして、ダメだ、ダメだと政府の批判ばかりして、希望のある建設的な提言をしないんだ』と訊いた。すると『実効性のある提言をするためには、しっかりした研究が必要で、それにはお金もかかるし才能もいるから難しいが、批判をするのはお金も才能も要らない』と答えた。つまり、お金もないし、バカばっかりだから、批判しかできないんだと、こう言うんだね。」



朝生で、まともなことを言う人は、この二人しかいない。朝生でなくても、多くのメディア・専門家が、「日本は悪い」教のプロパガンダしかしない劣悪な洗脳機関に成り下がっている。それじゃダメと指摘する人は、とても希少な人材。

そもそも、日本でも、結婚している女性の生む子どもの出生率は、ここ30年以上、ほとんど変化していない。変化したのは結婚率である。しかも、結婚しない理由の第一位は「もっと自由を満喫していたいから(あるいは、積極的に結婚したいとは思わないから)」であり、第二位は「仕事に打ち込みたいので、交際は面倒(ストレス)だから」であり、第3位は「適当なふさわしい相手、結婚したいと思える人との出会いがないから」である。イギリスでも、ミドルクラス(富裕層)や上流階級では子どもを望まないカップルが増えており、大卒の女性は高卒以下の女性と比べて、子どもを産む割合が1/2であるという。結局、経済的問題は、少子化の主たる理由ではないのだ。

よく「若者世代の貧困や生きづらさが少子化を招いている」と主張する識者の方がいるが、真実、そうであるなら、「日本よりパレスチナやソマリアの方が、はるかに若者が裕福で生きやすい」「戦前や終戦直後より、現代の方が、はるかに若者は貧窮していて生きにくい」という、到底あり得ないことになってしまう。若者の貧困や生きづらさと少子化とは、ほぼ相関関係がないのではあるまいか。

私としては「ハリネズミのジレンマが人間関係の基本になってしまった〝わがまま〟で〝繊細〟な現代人にとっては、〝つがい・ペア〟になるより〝ひとり・ソロ〟でいる方がラクだから」と言われた方が説得力があるように感じるのだ。

ガザやソマリアでは、助け合える家族や友人が多くなければ、生き延びることは難しい。途上国では政府の救済措置など期待できない。紛争や災害時など、いざという時、頼りになるのはプライベートな人間関係のみである。家族や友人の助けもなく、ひとりでは、到底サバイバルできない。しかし、先進国では、お金さえあれば、1人でも不安なく生きていけるし、お金がない場合でも、政府が助けるべきという議論が成立する。むしろ、先進国では、公の支援(福祉政策)は当たり前であって、「やってもらって当然」という意識が強く、感謝などあまりない。その反面、互いに助け合って生きるという意識は薄い。逆に、1人であれば何とか考えられるが、結婚して他人や子供まで面倒みないといけなくなると難儀なことこの上ないと感じるのが普通になりつつある。

結婚するのも、子どもをつくるのも、むしろ、生きていく上で、リスクでしかなく、喜びよりも、わずらわしさが大きい。そう感じる人が、どんどん増えているのは、生きることが過酷なサバイバルではない、豊かな先進国の特徴であり、高等教育を受けている人々の特徴でもある。したがって、世界中のどこの国においても、教育の無償化も、子育て支援も、手厚い福祉も、「結婚したくない子どもを持ちたくない」という価値観が急速に広まる世界的な潮流の勢いに対抗する力には、まったくなり得ていない。少子化対策に効果はないのだ。

もう一つ、はっきりしていることは、「日本は少子化のトップランナーではない」ということだ。日本の少子化は突出したものではない。むしろ、現代の人類社会において、未婚化・晩婚化・無子化・少子化は、どこの国も克服できていない課題であり、不可避の現象である。今や、ベトナムやタイまで、合計特殊出生率が、2.1を下回っている。少子化しているのは日本ではなく世界なのである。

ところが、どこまでもウソをつくメディアが、この国の国民が重大な社会問題に対して正しい認識を持つことを阻害している。




〈合計特殊出生率〉※

全世界平均 2.27  (2021)

OECD38カ国平均 1.58  (2021)

◯先進国

日本 1.20(2023)

東京都 0.99(2023)

沖縄県 1.60(2023)

中国 1.09(2022)

シンガポール 0.97(2023)

台湾 0.87(2022)

香港 0.77(2021)

韓国 0.72(2023)

オーストラリア 1.70(2021)

フランス 1.68(2023)

アメリカ 1.64(2022)

イギリス 1.56(2021)

ドイツ 1.46(2022)

カナダ 1.43(2021)

スウェーデン 1.45(2023)

ノルウェー 1.41(2022)

スイス 1.33(2023)

フィンランド 1.26(2023)

イタリア 1.20(2023)

スペイン 1.19(2021)

イスラエル 3.00(2021)※

◯途上国

ニジェール 6.82(2021)

ソマリア 6.31(2021)

ナイジェリア 5.24(2021)

タンザニア 4.73(2021)

アフガニスタン 4.64(2021)

エチオピア 4.16(2021)

イラク 3.40(2022)

パキスタン 3.40(2022)

パレスチナ ガザ地区 3.34(2023)

パレスチナ ヨルダン川西岸 2.91(2023)

ケニア 3.34(2021)

エジプト 2.92(2021)

モンゴル 2.84(2021)

フィリピン 2.75(2021)

サウジアラビア 2.43(2021)

南アフリカ 2.37(2021)

インドネシア 2.20(2022)

インド 2.01(2022)

ベトナム 1.94(2021)

タイ 1.33(2021)



※合計特殊出生率は、一人の女性が生涯に生む子どもの数。2.1以下では人口は必ず減少する。また、これは、結婚した女性が子どもを二人産めば良いということではない。すべての女性が結婚するわけではないからだ。例えば、結婚率が50%であれば、人口を維持するためには、結婚した女性は平均で4人の子供を産む必要がある。


※先進国で唯一3.00という驚異的な合計特殊出生率の高さを誇るイスラエルは、先進国で唯一、親族の絆が非常に強く、今だに大家族制が維持され、「子どもを育てることは人生で最大の喜び」とするユダヤ教の価値観が若い世代にも受け継がれている。そのため、イスラエル社会では、一人の女性が、生涯に5、6人の子どもを産み育てることは珍しいことではない。こうした子沢山の傾向は、教育レベルの高い女性であっても変わらない。

しかし、イスラエル以外の国では、特に、教育の高い女性ほど、晩婚化し、子どもを産まない傾向が強まる。これは、先進国だけでなく、途上国であっても、似たような傾向は年々強まっている。

例えば、日本でも、生物学的に最も出産能力のある10代で結婚する女性は、今ではほとんどいない。また、10代の高校生などが出産したら、不良と呼ばれ、社会的に貶められる可能性が高い。これでは、少子化の克服など到底ムリである。