最近、よく聴いている曲です♪



①河の流れを抱いて眠りたい 時任三郎(1981)

作詞 岡本おさみ 作曲 鈴木キサブロー


コンクリートが鈍く光ってる
この街を この人ごみを
いつだって見ていただけの
見ていただけの この俺さ

おちてゆく あの夕陽を
追いかけて 追いつづけて
歌のない さびしい国で
くたばっちまった奴がいた

オー・マイ・ジャーニー あんたそいつを
オー・マイ・ジャーニー 馬鹿だと思うのかい
今は今は あいつのそばで
川の流れを抱いて眠りたい

恋しさに身も心も
ボロボロにすてられて
酒のない さびしい国で
くたばっちまった女がいた

オー・マイ・ジャーニー あんたその子を
オー・マイ・ジャーニー 馬鹿だと思うのかい
今は今は あの子のそばで
川の流れを抱いて眠りたい


1980年代初頭のスローバラードの名曲です。

これまで、40年以上に渡って何百回と聴いてきたけど、いつ聴いても、心に沁みます。リリースから半世紀近く経っても、まったく古さを感じません。もっと聴かれていい曲だと思います。

都会の孤独を歌った曲で、これほど深い哀愁と慰めが、独特の感性で表現された曲を、私は他に知りません。

歌詞は、作詞家岡本おさみさん、41歳の時の詞です。

岡本さんは、吉田拓郎さんの「旅の宿」「襟裳岬」「洛陽」、南こうせつさんの「満天の星」、ネーネーズの「黄金の花」などの詞を書いた漂泊の詩人です。

作曲の鈴木キサブローさんは、高橋真梨子さんの「for you…」「Brown Joe」「ランナー」「フレンズ」、渡辺徹さんの「約束」、H2Oの「想い出がいっぱい」などの作曲者でもあります。

歌い手の時任三郎さん、23歳の時のデビュー曲です。当時、まだ20代前半の若さで、この重厚な表現力があったというのが信じられない。

令和の若者に真似できるでしょうか?



②Goodbye Day   来生たかお(1981)

作詞 来生えつこ 作曲 来生たかお


少しだけ疲れた顔で 君は静かに眠ってる
スタンドの淡い光 そっと睫毛の影ができる
昔より愛が足りない 君はぼんやり呟いた
費した君との月日 惜しみはしない僕がいる
Goodbye day 今日が終り One more day

また一日 何ごともなく それでいい Oh
Goodbye day ケリをつけて One more day

また一日 新しい日に すればいい

てのひらに口づけすると そっと力をこめてくる
無意識に甘えてるだろ 僕が隣りにいることに
こんなにも愛は深いよ それに気づかぬだけだろう
余りにもおだやかすぎて 時の流れに埋もれるから

Goodbye day そして I love you one more day

また一日 信じていれば それでいい Oh
Goodbye day そして I love you one more day

また一日 おだやかならば それでいい


この曲も1980年代初頭の名曲で、来生たかおさんの代表曲(10thシングル)です。

作詞は姉の来生えつこさん、作曲は来生たかおさん本人です。

この2人の姉弟は、中森明菜さんの「スローモーション」「セカンド・ラブ」、薬師丸ひろ子さんの「セーラー服と機関銃」、大橋純子さんの「シルエット・ロマンス」などのヒット曲を生み出したコンビです。

そして、この曲のテーマは切なさと癒し、孤独と安らぎ、情熱と静寂、刹那と永遠という相反する感情の統合です。来生姉弟の生み出した数ある作品の中でも傑出したバラードの名曲だと思います。

熟年離婚の増え続ける昨今、特に50代以降、60代・70代の人ならば、伴侶のいる人、いない人、失った人、別れた人、それぞれの立場でじっくり聴ける大人の曲です。

この曲は、来生たかおさん、31歳の時にレコーディングされています。今時の31歳の若者の落ち着き具合では、このほどよく枯れた深い味わいは、なかなか出せないのではないでしょうか。

それを思うと、つくづく時代が違うと感じます。

来生さんは、この歌を歌う時、恋人同士の良い関係がずっと続くように、という願いを込めて歌っていると述べています。



③センチメンタル・フレンド ブレッド&バター(1987)

作詞 作曲 岩沢二弓


人生なんていつも からまわりばかり
悩んでも求めても すれちがうサークル・ゲーム
さよならを あの時選んだ事が

正しいなら なぜ忘れられない
寂しい時にしか電話をかけてこない
今でも好きだよ 君はセンチメンタル・フレンド

明日も今日も 何もかわりはしない
気がつけば 時間だけが通り過ぎている
もう二度と もとに戻れない事も

知ってるのに なぜ待ち続けてる
飲んでる時にしか電話をかけてこない
それがつらいのさ 君はセンチメンタル・フレンド

真夜中のとぎれた電話の音に
また あふれてくる君への想い
寂しい時にしか電話をかけてこない
それでも憎めない 君はセンチメンタル・フレンド
飲んでる時にしか電話をかけてこない
それがつらいのさ 君はセンチメンタル・フレンド
寂しい時にしか電話をかけてこない
それでも好きだよ 君はセンチメンタル・フレンド


寂しがりやのネクラのネクラによるネクラのための歌。

陰陰滅々の空気を纏った絶望的に暗い曲で、華やかなバブル期の影を象徴する印象的な名曲。

物質的・経済的な繁栄の陰で、精神的・内面的な孤独に蝕まれていく若者たちの心情が見事に表現されています。

連帯や絆や共生の感覚を失って、砂粒のようにバラバラにさまよう1980年代の若者たちの寄る辺ない姿を浮き彫りにするようなイメージをともなう物悲しい歌です。

1980年代後半から1990年代初頭に、よくラジオや有線でかかっていました。

ブレッド&バターの代表曲(25thシングル)だと思うのだけど、なぜか、どのアルバムにも収録されていません

岩沢二弓さん、39歳の時の曲です。



④償いの日々 財津和夫・原みどり(1987)

作詞 作曲 呉田軽穂(クレタカルホ/松任谷由実)


もしも誰かと くらすようなことがあれば
せめて住所を知らせ合おうと最後に云った
Touch me again ひきとめておくれ
遠くでドアが閉まった

思い出の日々 姿変えず きらめく君
わがままの罪 道しるべが消えている町


縛り合っても意味がないと あなたは云った

あれから二度と見つめ合いは しなくなった
Love me agen 届かない心
知ってて捨てられないの

償いの日々 それは誰も愛せぬ日々
わがままの罪 帰る港 地図にない罪

誰でもひとつは持っている 心の片隅の部屋
自分でさえ開けられずに 鍵を探して さすらう
Don't call me agen 彼はだいじょうぶ
前より素敵になるわ


思い出の日々 姿変えず きらめく君
わがままの罪 道しるべが消えている町


償いの日々 それは誰も愛せぬ日々
わがままの罪 帰る港 地図にない罪


財津和夫さんのバラード曲で一番好きな曲です。原みどりさんとのデュエット曲ですが、二人の声が実に良く合っていて見事に共鳴しあっています。

松任谷由実さんが作詞・作曲した曲ですが、残念なことに、最近の財津和夫さんのベスト・アルバムなどには、この曲は、まったく入っていないんですよね。

1980年代後半のシティー・ポップの名曲として、もっと知られてよい曲だと思います。

財津和夫さん、39歳の時にレコーディングされたソロの4thシングルです。シンガーとして、もっとも油の乗り切ったベストの時期にリリースされたと言えましょう。圧巻のパフォーマンスです。

相方の原みどりさん(当時21歳、この曲でデビュー)の歌唱力も素晴らしいです。

なのに、なぜかオリコンで最高50位と、あまりヒットしませんでしたが、私は隠れた名曲だと思っています。

これも、やるせなく、切ない、愛と孤独をテーマとした美しいバラードです。




ちなみに、

①②は1981年リリースの曲です。

同1981年にリリースされた曲や同年のヒット曲や話題曲には、松山千春さんの「人生の空から」「長い夜」、オフコースの「時に愛は」「I LOVE YOU」、チューリップの「ふたりがつくった風景」、松任谷由実さんの「守ってあげたい」「夕闇をひとり」、イルカさんの「FOLLOW ME」「枯葉のシーズン」、五輪真弓さんの「恋人よ」、大瀧詠一さんの「君は天然色」「カナリア諸島にて」「恋するカレン」「雨のウェンズディ」「さらばシベリア鉄道」、中島みゆきさんの「ひとり上手」「悪女」「夜曲」、浜田省吾さんの「愛の世代の前に」「モダンガール」「陽のあたる場所」「ラストショー」「悲しみは雪のように」「家路」、大橋純子さんの「シルエット・ロマンス」、西田敏行さんの「もしもピアノが弾けたなら」、中村雅俊さんの「心の色」、イモ欽トリオの「ハイスクール・ララバイ」、さだまさしさんの「驛舎」、八代亜紀さんの「雨の慕情」「舟唄」、川中美幸さんの「ふたり酒」、山本譲二さんの「みちのくひとり旅」、石原裕次郎さんの「ブランデーグラス」、松村和子さんの「帰ってこいよ」、谷村新司さんの「天狼」、チャゲ&飛鳥さんの「万里の河」、南佳孝さんの「スローなブギにしてくれ」、五十嵐浩晃さんの「ペガサスの朝」「ディープパープル」、サザンオールスターズの「栞のテーマ」、松田聖子さんの「チェリーブラッサム」「夏の扉」、寺尾聰さんの「SHADOW CITY」「ルビーの指輪」「出航 SASURAI」、八神純子さんの「Mr.ブルー〜私の地球〜」、雅夢の「愛はかげろう」、来生たかおさんの「夢の途中」、佐野元春さんの「SOMEDAY」、谷山浩子さんの「時の少女」、尾崎亜美さんの「蒼夜曲 セレナーデ」、沢田聖子さんの「青春の光と影」、村下孝蔵さんの「春雨」、菅原進さんの「琥珀色の日々」、NSPの「チケットを握りしめて」、ふきのとうの「メロディー」などがあります。(57曲)

ざっと並べてみても、スタンダード・ナンバーと言ってよい名曲が数多く発表されていたことがわかります。

この時代に比べると、令和の今の時代は『歌のないさびしい国』になってしまったものだと感じされられます。


③④は1987年リリースの曲です。

同1987年にリリースされた曲や同年のヒット曲や話題曲には、長渕剛さんの「ろくなもんじゃねえ」「泣いてチンピラ」、THE BLUE HEARTSの「人にやさしく」「世界は僕らの手の中」「少年の詩」「リンダ・リンダ」「キスしてほしい」「チェイン・ギャング」、尾崎豊さんの「シェリー」、鈴木聖美さんの「ロンリー・チャップリン」「TAXI」、加藤登紀子さんの「百万本のバラ」「時には昔の話を」、浜田省吾さんの「MIDNIGHT FLIGHT-ひとりぼっちのクリスマス・イブ-」、桑田佳祐さんの「悲しい気持ち」、岡村孝子さんの「リベルテ」「夢をあきらめないで」、オフコースの「もっと近くに」、小比類巻かおるの「Hold On Me」「オーロラの瞳」「I’m Here」、TM NETWORKの「Get Wild」、TUBEの「SUMMER DREAM」、PRINCESS PRINCESSの「世界でいちばん熱い夏」、安全地帯の「じれったい」、さだまさしさんの「風に立つライオン」、竹内まりやさんの「駅」、谷山浩子さんの「MAY」、中森明菜さんの「難破船」、小泉今日子さんの「木枯らしに抱かれて」、斉藤由貴さんの「砂の城」、風間三姉妹の「Remember」、テレサ・テンさんの「時の流れに身をまかせ」「別れの予感」、吉幾三さんの「雪國」、島倉千代子さんの「人生いろいろ」、石原裕次郎さんの「北の旅人」、ヒロシ&ミユキの「男と女のラブゲーム」、瀬川瑛子さんの「命くれない」、徳永英明さんの「輝きながら…」、堀内孝雄さんの「愛しき日々」、近藤真彦さんの「愚か者」、とんねるずの「迷惑でしょうが」、森川由加里さんの「SHOW ME」、渡辺美里さんの「BELIEVE」「悲しいね」、BOOWYの「ONLY YOU」「Marionette」、BARBEE BOYSの「泣いたままで listen to me」、レベッカの「LONELY BUTTERFLY 」「Nervous But Glamorous」、山下達郎さんの「メロディー、君の為に」「THE WAR SONG」「シャンプー」、チェッカーズの「Song for U.S.A.」、森高千里さんの「NEW SEASON」、杉山清貴さんの「最後のHoly Night」などがあります。(57曲)

ざっと曲を並べてみても、1981年より、1987年の方が、若者の孤独の影が深くなっていくと同時に、地に足がついていない精神の浮遊感と落ち着きのなさ、心模様の取り留めのなさが、どんどん強くなっている気がします。


総じて1980年代の若者たちは、心の拠り所が見出せず、成熟の機会も持てず、気持ちが常にさまよっている感じです。

同時に、1980年代を通じて、しだいに、日本社会が、人の祈りも優しさも、通じない、ぬくもりのない冷たい社会、大人になりきれない、精神が脆弱で頼りない子どもたちの群れる未成熟な社会になっていったのが、わかるような気がするのです。