メン・アット・ワーク、U2、ラッシュの名曲集です。
この三つのグループの共通点のひとつは、1980年代に人気のピークにあり、活動の全盛期であった、あるいはグループの音楽的発展段階の一つのピークにあったということです。
二つ目の共通点として、この3つのグループは、歌詞に、政治的・哲学的・内省的なテーマの曲が多いことがあります。逆に、普通の恋愛テーマの曲などは、ほとんどないのです。
もう一つは、3バンドとも、ロックのメインストリームである米英の出身ではなく、その周辺国出身のバンドであること(ただし、英語圏)、そして、それぞれの国において、国民的なグループとしての強い存在感を持っている(いた?)ことです。
それでは、この3つのバンドについて、順に多少の説明をしておきましょう。
まずはメン・アット・ワーク(Men at Work)から。
メン・アット・ワークは、オーストラリアのロックバンドで、ボーカルでリーダーのコリン・ヘイを中心に1979年に結成され、1981年に1stアルバム「ワーク・ソングス(Business as Usual )」をオーストラリア国内でリリースしました。アルバムが好評だったため、1982年に世界発売されるやいなや、瞬く間に世界的なムーブメントを巻き起こし、英米含めて世界各地で、この1stアルバムはチャート1位を記録しました。次いで翌1983年にリリースされた2ndアルバム「カーゴ(Cargo)」も、全米3位・全英8位を記録しました。
ボーカルとサウンドは、ポリスを庶民的にした感じで、センスがありながら親近感と気安さを感じさせるものでした。皮肉の効いた歌詞が、独特の世界観を持っていて、ハスキーなボーカルも個性的で、ほかにはない魅力にあふれていました。この時期、全世界を虜にしていたと言っても過言ではないでしょう。
しかし、それ以降、バンドの人気は下降線をたどり、1985年に活動を停止し、1996年に再結成されるも、2002年には再び解散してしまいました。
ここでは、世界的によく聴かれていた1st ・2ndの2枚のアルバムに焦点を当てて、名曲を紹介させていただきます。
次にU2についてです。
U2は、アイルランドの国民的なロックバンドで、1980年に結成されました。そして、1983年の3rdアルバム「WAR(闘)」が、初の全英1位を記録、全米でも12位を記録し、全世界でトータル1100万枚のセールスを記録しました。アイルランド人としてのアイデンティティと政治的問題意識を表現した、このアルバムの世界的なヒットによって、バンドは人気を確立しました。
当時、アイルランド国旗をはためかせながら歌う姿が鮮烈で印象的でした。
その後、1987年に、最高傑作と名高い5thアルバム「ヨシュア・トゥリー(Joshua Tree)」が、英米含めて世界各地で1位を獲得し、2500万枚のセールスを記録しました。
このアルバムが、U2の音楽の一つの完成形を表しています。エッジのギター、アダムのベース、ラリーのドラムスが繰り出す独特の硬質なロック・サウンドと、ボーカルのボノの美声が唯一無二の音楽を創り上げているのです。
この時期が、バンドの人気のピークでしたが、それ以降も、1990年代、2000年代まで、U2の世界的な人気は衰えず、現在に至るまで、オリジナル・メンバーのまま、旺盛に活動を続けています。
今や、押しも押されぬ、ロックの大御所、世界のスーパー・バンドです。
ここでは、1980年代におけるバンドの代表作3rd・5thの2枚のアルバムに焦点を当てて、名曲を紹介させていただきます。
最後にラッシュ(Rush)です。
ラッシュは、カナダのロックバンドで、1968年に結成され、1974年にデビューしました。その後、1980年リリースされた7thアルバム「パーマネント・ウェイブス」が初の全米4位・全英3位を記録し、さらに翌1981年の8thアルバム「ムービング・ピクチャーズ」は全米3位・全英3位を記録して、ラッシュの全アルバム中で、最も売れたアルバムとなりました。ここまでのラッシュは、タイトでヘビーな演奏をする、超絶テクニックのスリーピース・ロックバンドでした。特に、ドラムスのニール・パートは、ロック史上最高のドラマーとも言われます。
ところが、この直後、ラッシュのサウンドは、劇的に変化します。突然、シンセサイザーのサウンドを全面にフィーチャーした1980年代風の曲作りを始めたのです。
こうして、9th「シグナルズ(Signals1982)」10th「グレイス・アンダー・プレッシャー(Grace Under Pressure 1984)」11th「パワー・ウインドウズ(Power Windows 1985)」という3つの傑作アルバムをリリースし、安定した人気を誇りました。
その後、ラッシュの音は、再び原点に回帰し、エレクトリックな音は影を潜めます。そして、オリジナル・メンバーのまま、ドラムスのニールの腱鞘炎が悪化して演奏が不可能になった2015年まで、旺盛な活動が続けられました。(※ニールは2020年に脳腫瘍で67歳で亡くなっています。)
U2と並ぶ、伝説のバンドと言えるでしょう。ただ、日本での知名度は、海外と比べて、非常に低いのです。
ここでは、日本での人気が頂点にあった第3(4?)期と呼ばれるエレクトリック・サウンド全開の9th・10th・11thの3枚のアルバムに焦点を当てて、おすすめの曲を紹介させていただきます。
では、主に1980年代に発表された上記3つのグループの曲から、16曲を紹介します。
選曲は独断と偏見によります。曲順は、グループごとに、発表年次順に準じます。また、同一アルバム内の曲は、アルバム内の曲順に準じます。
〈メン・アット・ワーク〉
①ノックは夜中に(Who Can It Be Now?)
作詞作曲 コリン・ヘイ
◯アルバム「ワーク・ソングス(Business as Usual)1982年/1st/全米1位・全英1位)」初収録。
◯シングル(1982年/2nd/全米1位・全英45位)
初の全米1位を記録したヒット曲。神経症的な独特のユーモアが効いた歌詞が印象的な作品です。
「誰がドアを叩いているんだ? 行っちまえ、この辺りをうろつくな。もう夜遅いってわからないのか? 俺はとても疲れているし、気分も良くない。俺は、一人でいたいんだ。近寄るな、俺の部屋に踏み入るな。お前は外をうろついていりゃいいんだ。入ってくるな、俺は、急いで隠れるぞ。今頃、誰だ。誰がいるんだ。ドアを叩いているのは誰だ? 音を立てずに、つま先立ちで床の上を歩く。もし、物音が聞こえたら、奴は一日中、ドアを叩き続けるだろう。俺は閉じ込められて、ここに居続けなきゃならなくなる。俺は誰も傷つけたことはないし、ひとりでいるだけだ。俺の精神状態に問題は何もない。子供の頃から一緒の友だちと、ここにいるのが好きなんだ。ほら、彼らがやってきた。いつものお馴染みの感覚が、また、やってくる。」
Who can it be knocking at my door?
Go 'way, don't come 'round here no more
Can't you see that it's late at night?
I'm very tired and I'm not feeling right
All I wish is to be alone
Stay away, don't you invade my home
Best off if you hang outside
Don't come in, I'll only run and hide
Who can it be now?
Who can it be now?
Who can it be knocking at my door?
Make no sound, tip-toe across the floor
If he hears, he'll knock all day
I'll be trapped and here I'll have to stay
I've done no harm, I keep to myself
There's nothing wrong with my state of mental health
I like it here with my childhood friend
Here they come, those feelings again
②ダウン・アンダー(Down Under)
作詞作曲 コリン・ヘイ/ロン・ストライカート
◯アルバム「ワーク・ソングス(Business as Usual)1982年/1st/全米1位・全英1位」初収録。
◯シングル(1982年/3rd/全米1位・全英1位)
英米はじめ世界各国で1位を記録した最大のヒット曲。バンドの代表作と言える楽曲。
Down Underは、赤道を越えた向こう側(南半球)、英国から見て地球の反対側(オーストラリア・ニュージーランド)を指します。
「ヒッピーのルートをオーバーヒートしたフォルクスワーゲンのミニバンで辿る旅。マリファナに浸かっている頭。俺は奇妙な女に出会った。女は俺を苛立たせた。それでも、女は俺を泊めてくれ、朝食を食わせてくれた。そして、女は言った。あんた、オーストラリアから来たの? 女が魅力的で、男が略奪する国だね。雷の音が聞こえないのかい? 早く逃げな、身の安全を確保したほうがいい。ブリュッセルで、男からパンを買った。身長193㎝で、筋肉の塊のような男だった。俺は言った。俺の国の言葉を話せるかい? 彼は、ただ笑って、俺にベジマイトサンドイッチをくれた。そして、こう言った。俺もオーストラリアから来たんだ。ビールが美味くて、男が略奪する国さ。雷の音が聞こえないか? 早く逃げたほうがいい。避難しろ。」
Travelling in a fried-out Kombi on a hippie trail,
head full of zombie
I met a strange lady, she made me nervous
She took me in and gave me breakfast
And she said:
"Do you come from a land down under
Where women glow and men plunder
Can't you hear, can't you hear the thunder
You better run, you better take cover."
Buying bread from a man in Brussels
He was six foot four and full of muscle
I said, "Do you speak-a my language?"
He just smiled and gave me a Vegemite sandwich
And he said:
"I come from a land down under
Where beer does flow and men chunder
Can't you hear, can't you hear the thunder
You better run, you better take cover."
③オーバーキル(Overkill)
作詞作曲 コリン・ヘイ
◯アルバム「カーゴ(Cargo)1983年/2nd/全米3位・全英8位」初収録。
◯シングル(1983年/6th/全米3位・全英21位)
メン・アット・ワークの曲の中で、私が一番好きな曲です。
不眠症の男が、夜な夜な街をうろつき、幽霊を見るのですが、ついつい、その男に〝ベトナム帰還兵〟の暗示を感じてしまいます。Overkillを、〝考え過ぎ〟と〝過剰殺戮〟の両方の意味で聴くことができます。作者のコリン・ヘイは、そういうことを考えて作った歌ではないようですが。
「眠れない。あまりにも深く、言外の意味を探り過ぎて、おそらく、複雑に考え過ぎているんだ。特に、夜には、状況が心配になる。大丈夫だとわかっているんだ。たぶん、ただの妄想なのさ。日毎に、それは現れる。夜毎に、俺の心臓の鼓動は、恐怖によって脈打つ。幽霊が現れては、消えていく。シーツを被ってひとりでいても、激しい憤りが湧いてくる。通りをうろつく時間だ。絶望の匂いがする。少なくとも、灯りはかなりある。代わり映えはしないけれど。考え過ぎ(※過剰殺戮)のせいで、夜は台無しになる。日毎に、それは現れるんだ。夜毎に、俺のハートは不安から激しく脈打つ。幽霊が現れては消えていく。次の1日がやってくる。眠れない。あまりにも深く、言外の意味を探り過ぎて、おそらく、複雑に考え過ぎているんだ。とりわけ夜には、状況が心配になる。考え過ぎ(※過剰殺戮)だって、わかっているんだ。日毎にそれは現れる。夜毎に、俺の心臓の鼓動は恐怖を示す。亡霊が現れては消えていく。」
I can't get to sleep
I think about the implications
Of diving in too deep and possibly the complications
Especially at night I worry over situations
I know will be alright
Perhaps it's just imagination
Day after day it reappears
Night after night my heartbeat shows the fear
Ghosts appear and fade away…
Alone between the sheets
Only brings exasperation
It's time to walk the streets
Smell the desperation
At least there's pretty lights and though there's little variation
It nullifies the night from overkill
Day after day it reappears
Night after night my heartbeat shows the fear
Ghosts appear and fade away…
Come back another day
I can't get to sleep
I think about the implications
Of diving in too deep and possibly the complications
Especially at night I worry over situation
I know I realize it's just overkill
Day after day it reappears
Night after night my heartbeat shows the fear
Ghosts appear and fade away…
④イッツ・ア・ミステイク(It's a Mistake)
作詞作曲 コリン・ヘイ
◯アルバム「カーゴ(Cargo)1983年/2nd/全米3位・全英8位」初収録。
◯シングル(1983年/7th/全米6位・全英33位)
最後の全米10位以内を記録した楽曲。これも、間違いで起こる核戦争をテーマとした、ブラック・ユーモアとアイロニーに満ちた名曲です。
「防空施設から飛び降りろ、逃げるんだ。少年兵たちは、銃を構えている。教えてください、将軍。戦争(パーティー・タイム)が始まるんですか? もしそうなら、俺たち、全員参加ですか? 俺たちが何も知らないと思うなよ。俺たちが何もしていないなんて思うな。俺たちの動きがとろいなんて考えるなよ。泣いたって無駄さ。今更、間違いだ、なんて言ってもダメさ。笑い声もすっかり消えた。そして、少年兵たちは、皆、楽しみを終えた。今は、物音ひとつしない。言うべきこともあまりない。彼らは、悪い奴らを逃走させたんだから。謝る必要なんてないのさ。奴の方が先に銃を抜いたんだ、なんて言い訳する必要もない。奴らは行って、ロニー爺さんを捕まえた。そして、こう言ったのは、彼だけってわけじゃない。間違いだったんだ。ほんの手違いだ。ちょっとしたミスだ。」
Jump down the shelters to get away
The boys are cockin' up their guns
Tell us general, is it party time?
If it is can we all come
Don't think that we don't know
Don't think that we're not trying
Don't think we move too slow
It's no use after crying
Saying
It's a mistake, it's a mistake
After the laughter as died away
And all the boys have had their fun
No surface noise now, not much to say
They've got the bad guys on the run
Don't try to say you're sorry
Don't say he drew his gun
They've gone and grabbed old Ronnie
He's not the only one saying
It's a mistake, it's a mistake
It's a mistake, it's a mistake
〈U2〉
⑤ニュー・イヤーズ・デイ(New Years Day)
作詞作曲 U2
◯アルバム「WAR 1983年/3rd/全米12位・全英1位」初収録。
◯シングル(1983年/9th/全米53位・全英10位)
名盤「WAR」を代表する名曲。U2初の全英10位ヒット曲。硬質なキーボードの音が印象的な名曲。実は、日本でも、よくラジオや有線でかかっていました。当時、聴いていた多くの日本人にとって、U2の代名詞的な曲だと思います。
ポーランドの自由を求める政治的運動〝連帯〟への共感、同時にアイルランドへの愛国心がテーマとなっています。
「すべてが静まり返った新年の元日。真っ白の雪で覆われた世界が動き出す。僕は君と一緒にいたい、夜も昼も。この新年の元日も、何も変わらない。僕は、もう一度、君と共にいるようになるだろう。血のように赤い空の下、白と黒の群衆が集う。(警官の前で)腕を組んで連帯を示す、選ばれた少数の人々。新聞は、この衝突が事実だと伝えている。僕らは打ち勝つことができる。たとえ、二つの立場に引き裂かれようとも、僕らは一つになれるんだ。僕は、もう一度、始めよう。たぶん、その時が来たんだ。おそらく、今夜…。」
All is quiet on New Year's Day
A world in white gets underway
I want to be with you
Be with you night and day
Nothing changes on New Year's Day
On New Year's Day
I will be with you again
I will be with you again
Under a blood red sky
A crowd has gathered in black and white
Arms entwined, the chosen few
The newspapers says, says
Say it's true it's true...
And we can break through
Though torn in two
We can be one
I...I will begin again
I...I will begin again
Oh...maybe the time is right
Oh...maybe tonight...
⑥ブラディ・サンデー(Sunday Bloody Sunday)
作詞作曲 U2
◯アルバム「WAR 1983年/3rd/全米12位・全英1位」初収録。
◯シングル(1983年/11th)
北アイルランド紛争の「血の日曜日」事件(1972)を題材にした名曲。
1972年の「血の日曜日事件」は、北アイルランドで2つ起こっています。
北アイルランドのイギリスからの自立とアイルランドへの併合を求める北アイルランド紛争(1960年代後半〜1998年)のさなか、1972年1月、北アイルランド第二の都市ロンドンデリーで、デモ行進中の市民が、イギリス軍に銃撃され、14人が死亡、13人が負傷したのがひとつ。さらに同年7月、北アイルランドの首府ベルファストで、IRAが80分間に20発の爆弾を爆破させる連続爆破テロ事件を起こし、イギリス軍兵士2名を含む9名が死亡、130人が負傷しました。これが二つ目です。
ボノは、このうち前者の事件について歌っています。とは言え、どちらでも、あまり違いはないようにも思えます。
歌詞にあるように、報復に次ぐ報復。そこには勝者はいません。
「今日のニュースが信じられない。その映像を見ないように目を閉じることも、ニュースを頭から消し去ることもできない。僕たちは、いつまで、この歌を歌い続けなきゃならないんだ? 今夜こそ、僕らは一つになれる。子供たちの足元に散乱する割れたガラス瓶。通りの袋小路に散乱する死体。でも、僕は、戦いを呼びかける声に従うことはないだろう。それは、僕を怒らせ、僕を追い詰める。血にまみれた日曜日。さあ、行こう! そして、戦闘が始まった。多くの命が失われた。でも、教えてくれ。誰が勝者となったんだ? 僕らの心の中に塹壕が掘られた。そして、母親たち、子どもたち、兄弟たち、姉妹たちが引き裂かれた。血ぬられた日曜日に。」
I can’t believe the news today
Oh, I can’t close my eyes and make it go away
How long, how long must we sing this song?
How long? How long?
'Cause tonight, we can be as one
Tonight
Broken bottles under children’s feet
Bodies strewn across the dead end street
But I won’t heed the battle call
It puts my back up
Puts my back up against the wall
Sunday, Bloody Sunday
Alright, let’s go!
And the battle’s just begun
There’s many lost, but tell me, who has won?
The trench is dug within our hearts
And mothers, children, brothers, sisters
Torn apart
Sunday, Bloody Sunday
⑦約束の地(Where the Streets Have No Name)
作詞作曲 ボノ/U2
◯アルバム「ヨシュア・ツリー(The Joshua Tree) 1987年/5th/全米1位・全英1位」初収録。
◯シングル(1987年/17th/全米13位・全英4位)
名盤「ヨシュア・ツリー」の一曲目にして、このアルバムからの3rdシングル。アルバムの代名詞的な曲であり、グループの代表曲の一つ。
「ヨシュア・ツリー」は、アルバム・タイトルからしてそうですが、非常に宗教的な曲が多いアルバムです。この曲も、とても宗教的な印象の強い曲です。
「僕は逃げて隠れたい。僕を閉じ込めている、この壁を打ち壊したい。手を伸ばして、その炎に触れたい。名前のない通りで。太陽の光を顔に感じたい。僕は、砂塵雲が跡形もなく消え去るのを見る。僕は、毒性雨から避難したいんだ。名前のない通りで。僕らは、まだ構築しつつある愛を燃やし尽くそうとしている。愛を燃やし尽くすんだ。そして、僕がそこへ行くとき、あなたとともにそこへ行く。それが僕にできるすべて。」
I wanna run, I want to hide
I wanna tear down the walls that hold me inside
I wanna reach out and touch the flame
Where the streets have no name
I wanna feel sunlight on my face
I see the dust-cloud disappear without a trace
I wanna take shelter from the poison rain
Where the streets have no name
We’re still building and burning down love
Burning down love
And when I go there
I go there with you
It’s all I can do
⑧終わりなき旅(I Still Haven't Found What I'm Looking For)
作詞作曲 ボノ/U2
◯アルバム「ヨシュア・ツリー(The Joshua Tree) 1987年/5th/全米1位・全英1位」初収録。
◯シングル(1987年/16th/全米1位・全英6位)
「ヨシュア・ツリー」の二曲目にして、このアルバムからの2nd シングル。U2の二番目にして最後の全米1位を記録したヒット曲。とても宗教的な歌詞の曲で、ここで使われているyou は、主イエスを指しています。
「俺は、最も高い山々に登り、原野を走り抜けた。ただ、あなたのそばにあるために。俺は走り、這い、これらの都市の城壁をよじのぼった。ただ、あなたのそばにあるために。けれども、俺は、まだ、探しているものを見つけていない。俺は、蜂蜜のような唇にくちづけた。彼女の指先に癒しを感じながら。それは炎のように燃えた。この燃えさかる欲望が。俺は天使の舌で話し、悪魔の手を握った。それは暖かい夜だったが、俺は石のように冷えていた。しかし、まだ、俺は、探しているものを見つけていない。俺は、神の王国がやってくることを信じている。その時、すべての血と肌の色が、一つに混ざる。だが、俺は、まだ走っている。あなたはくびきを解き放ち、鎖を緩めてくださる。俺の恥辱の十字架を背負ってくださる。そうとも、あなたは、俺が信じていることをご存知だ。だが、それでも、まだ、俺は探しているものを、見つけていないんだ。」
I have climbed the highest mountains
I have run through the fields
Only to be with you
Only to be with you
I have run, I have crawled
I have scaled these city walls
These city walls
Only to be with you
But I still haven’t found what I’m looking for
I have kissed honey lips
Felt the healing in her finger tips
It burned like fire
This burning desire
I have spoke with the tongue of angels
I have held the hand of a devil
It was warm in the night
I was cold as a stone
But I still haven’t found what I’m looking for
I believe in the Kingdom Come
Then all the colours will bleed into one
Bleed into one
But yes, I’m still running
You broke the bonds
And you loosed the chains
Carried the cross of my shame
Oh my shame, you know I believe it
But I still haven’t found what I’m looking for
⑨ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー(With or Without You)
作詞作曲 ボノ/U2
◯アルバム「ヨシュア・ツリー(The Joshua Tree) 1987年/5th/全米1位・全英1位」初収録。
◯シングル(1987年/15th/全米1位・全英4位)
「ヨシュア・ツリー」の三曲目にして、このアルバムからのファースト・シングル。U2初の全米1位を記録した大ヒット曲。このバンドの曲としては珍しく純粋かつストレート(?)なラブ・バラード。
「君の瞳の中に石が見える。君のそばには茨がうねっているのが見える。僕は君を待つだろう。巧妙な策略か運命の悪戯か。針の筵の上で彼女は僕を待たせる。そして、僕は君なしで待つ。君がいてもいなくても。嵐をくぐり抜けて、僕たちは岸に着く。君は、すべてを惜しみなく与えてくれるけど、それでも僕の飢えと渇きはおさまらない。そして、僕は君を待っている。君がいてもいなくても、僕は生きていけない。」
See the stone set in your eyes
See the thorn twist in your side
I’ll wait for you
Sleight of hand and twist of fate
On a bed of nails she makes me wait
And I wait without you
With or without you
With or without you
Through the storm, we reach the shore
You give it all but I want more
And I’m waiting for you
With or without you
With or without you, ah-ah
I can’t live with or without you
〈ラッシュ〉
⑩サブディビジョンズ(Subdivisions)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「シグナルズ(Signals)1982年/9th/全米10位・全英3位」初収録。
◯シングル(1982年/21st/全米105位・全英53位)
9thアルバムの一曲目で、このアルバムを代表する佳曲。重厚なシンセサイザーと、ラッシュらしい転調するリズム、複雑なベースライン、ニールの哲学的な歌詞、サビで聴かせるアレックスのギター、いくぶん抑えられたゲディーのボーカル、これが、このアルバム「シグナルズ」の魅力です。これでもか、とばかりに、惜しげもなく、ドラマチックなプレイが、繰り広げられます。
歌詞は、人間を差別し、不適合者を排除していく都市の機能に拘られた人々の悲劇を歌っています。
「幾何学的な秩序のある都市の縁から無秩序に広がる乱雑な世界。輝かしい都市の灯りとはるかに遠く広がる灯りのない未知の世界の間にある隔絶された境界線。ここ(都市)で成長することは、とても一方的で偏っているように思える。すべて与えられた意見、大量生産工場(教育区域)で、あらかじめ定められ、孤立させられ、細分化された未来。ここでは夢見る者や孤独な不適合者はどこにも居場所がない。高校の教室で、ショッピングモールで、人々は再分化される。適合者か廃棄処分か。地下のバーで、クルマの後部座席で、再分化される。合格か廃棄処分か。どんな逃避も、この不愉快な真実を見ないで済ますのには役立つかもしれない。だが、事実を言うなら、この都市の境界線の向こう側(郊外)には、若者のやむことのない夢をなだめるだけの魅力はないのだ。」
Sprawling on the fringes of the city in geometric order
An insulated border in between the bright lights
And the far unlit unknown
Growing up it all seems so one-sided
Opinions all provided
The future pre-decided
Detached and subdivided
In the mass production zone
Nowhere is the dreamer or the misfit so alone
Subdivisions
In the high school halls
In the shopping malls
Conform or be cast out
Subdivisions
In the basement bars
In the backs of cars
Be cool or be cast out
Any escape might help to smooth the unattractive truth
But the suburbs have no charms to soothe
The restless dreams of youth
⑪アフターイメージ(Afterimage)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「グレイス・アンダー・プレッシャー(Grace Under Pressure)1984年/10th/全米10位・全英5位」初収録。
◯シングル(1982年/26th)
この10thアルバムを象徴する、緊張感と冷たさ、鋭い痛みと哀しみが同居する名曲です。
友人の死がテーマとなっています。
「突然、君は逝ってしまった。この生命の世界から彼岸へと。君自身が存在した痕跡だけを残して。僕は思い出す。霧深い夜明けに、僕らがどんなふうに話し、一緒にお酒を飲んでいたかを。僕はその声を聞く。僕らは、夏の濡れた芝生の上を、水辺へと走った。僕はその足跡を見る。僕は思い出す。君が生きていた時、君がそうだったように、今も感じるんだ。君の声を、君の気配を、君の息づかいを、感じるんだ。君がまだ生きているように、君の存在を感じるんだ。」
Suddenly, you were gone
From all the lives
You left your mark upon
I remember
How we talked and drank
Into the misty dawn
I hear the voices
We ran by the water
On the wet summer lawn
I see the footprints
I remember
I feel the way you would
I feel the way you would
I feel, I feel the way you would
⑫レッド・セクターA(Red Sector A)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「グレイス・アンダー・プレッシャー(Grace Under Pressure)1984年/10th/全米10位・全英5位」初収録。
◯シングル(1982年/25th)
近未来(遠未来?)の人類滅亡の危機というSF的な絶望的シチュエーションをテーマとした曲。アレンジも未来的で、冷たくドラマチックな曲想を感じます。
「僕らにできることは、生き残ることだけ。僕らにできることは、ただ生き延びることだけだ。薄汚れた灰色の不規則な列。骸骨たちが、足を引きずって歩いている。叫ぶ警備兵たちと煙を吐く銃が、不運な者たちを倒していく。」
「収容所の門のところで銃声が聞こえる。解放者がいるのか? 僕は希望を持つべきなのか、恐怖するべきなのか? 父さんや兄さんのためには、もう、手遅れだ。でも、母さんが立ち上がるのを助けなければいけない。僕らは地上で生き残った最後の人間なのか? 生き残っている人類は、僕らだけなのか?」
All that we can do is just survive
All that we can do to help ourselves is stay alive
All that we can do is just survive
All that we can do to help ourselves is stay alive
Ragged lines of ragged grey
Skeletons, they shuffle away
Shouting guards and smoking guns
Will cut down the unlucky ones
I hear the sound of gunfire at the prison gate
Are the liberators here?
Do I hope or do I fear?
For my father and my brother, it's too late
But I must help my mother stand up straight
Are we the last ones left alive?
Are we the only human beings to survive?
Are we the last ones left alive?
Are we the only human beings to survive?
⑬ビトゥイーン・ザ・ホイールズ(Between the Wheels)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「グレイス・アンダー・プレッシャー(Grace Under Pressure)1984年/10th/全米10位・全英5位」初収録。
アルバムのラストを締める、重苦しさと軽やかさ、相反する感覚を交互に表現した、忘れ難いイメージを残す佳曲。一方で、ニール・パートの歌詞は、ひたすら深刻で苦悩と絶望に満ちています。
「僕らは、のっぴきならない板挟みに陥って進退極まる苦境を生きている。時代の狭間で、ゴールデンアワーの番組のブラウン管の光を浴びながら、この時代に、僕らは二つの戦争の狭間の時を生きている。現実を生きてはいるが、これまで良い時代を過ごしてきて、今では、その良かった昨日に、しがみついている。スピードを出している君のクルマの車輪に、今、まさに轢かれようとしているウサギが、轢かれる直前に、どんなふうに感じるか、わかるかい? フロントガラスに向かって飛んでくる蠅のように、鮮烈なイメージが、瞬く間に通り過ぎてゆく。致命的な登山で凍りついていく遭難者がそうであるように、運命の車輪は、君を置き去りにして先へ回転していく。その車輪が君を引きずり回す。そして、君を切り裂く。」
To live between a rock and a hard place
In between time-
Cruising in prime time-
Soaking up the cathode rays
To live between the wars in our time-
Living in real time-
Holding the good time-
Holding on to yesaterdays...
You know how that rabbit feels going under your speeding wheels
Bright images flashing by like windshields towards a fly
Frozen in the fatal climb-
But the wheels of time-
Just pass you by...
Wheels can take you around
Wheels can cut you down
⑭ビッグ・マネー(The Big Money)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「パワー・ウィンドウズ(Power Windows)1985年/11th/全米10位・全英9位」初収録。
◯シングル(1986年/27th/全米45位・全英46位)
11thアルバムの一曲目で、ファースト・シングル・カットされた、アルバムの代名詞的な勢いのある曲。ヘヴィーかつハードで、パワーと疾走感があり、重厚でありながら爽快感もあります。
この11thアルバムの特徴でもありますが、ゲディー・リーの神業ベースが、弾けて、跳ね回って、強烈な印象です。
「ビッグマネーが世界をまわる。ビッグマネーは地下にも巡る。ビッグマネーは並外れた声をあげる。ビッグマネーはまったく音を立てない。ビッグマネーは100万の糸を引っ張る。ビッグマネーは賞賛を得る。ビッグマネーは巨大な網を織る。ビッグマネーはハエを引き寄せる。時には人々を振り回す。時には人の足をすくう。時には人を激昂させる。時にはその怒りをとめる。それは力と栄光そのものだ。それは楽園の中に戦争を引き起こすものだ。そして、一か八かのシンデレラ・ストーリーを創り出すのだ。」
Big money goes around the world
Big money underground
Big money got a mighty voice
Big money make no sound
Big money pull a million strings
Big money hold the prize
Big money weave a mighty web
Big money draw the flies
Sometimes pushing people around
Sometimes pulling out the rug
Sometimes pushing all the buttons
Sometimes pulling out the plug
It's the power and the glory
It's a war in paradise
A cinderella story
On a tumble of the dice
⑮マラソン(Marathon)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「パワー・ウィンドウズ(Power Windows)1985年/11th/全米10位・全英9位」初収録。
◯シングル(1986年/30th)
このアルバムのイメージを象徴するような明るく弾けている元気な曲。数あるラッシュの曲の中でも、もっとも明るいポジティブな曲の一つではないでしょうか。
It's not how fast you can go
The force goes into the flow
If you pick up the beat
You can forget about the heat
More than just survival
More than just a flash
More than just a dotted line
More than just a dash
It's a test of ultimate will
The heartbreak climb uphill
Got to pick up the pace
If you want to stay in the race
More than just blind ambition
More than just simple greed
More than just a finish line
Must feed this burning need
In the long run
⑯ミドルタウン・ドリームズ(Middletown Dreams)
作詞 ニール・パート 作曲 アレックス・ライフソン/ゲディー・リー
◯アルバム「パワー・ウィンドウズ(Power Windows)1985年/11th/全米10位・全英9位」初収録。
シングル・カットされませんでしたが、このアルバムで、一番好きな曲です。メロディアスで、ドラマチックで、美しい曲です。しかしながら、その歌詞の内容は、ミドルタウン(地方都市)の少し憂鬱な現実を描いたものです。
「オフィスのドアは早々と閉まり、隠されていた酒のボトルが取り出された。セールスマンは窓のブラインドを降ろしに行った。ちょっとトロい動作で、ちょっとでっぷりした風体で。けれども、彼は、依然として、出世街道を諦めてはいない。いつだって、今もなお。とは言え、今日のような退屈な日が続くと、どんな男の耐えられる限界をも越えるだろう。その都市の中央部を貫いて夢は流れていく。人々の生命力(炎)を喰らい、夢は欲望を運ぶ。そして、鬱屈したあなたの心を奮い起こさせる。夢は、この街から出て行く人々を運ぶ。5月初めの草原を、少年は親友と歩いている。二人は黙って歩いている。ひとりは親密な気持ちで、ひとりは心を彷徨わせて。そう、彼は、ひとり、ギターを抱えてバスに乗るつもりだ。輝く流れ星のように、天上を駆けて輝くために。中年のマドンナは、隣人と電話している。日々、季節は過ぎゆき、彼女の人生を寂しく置き去りにする。けれども、彼女は、ある晴れた午後に、そのドアを出て行く。地方都市の孤独な屋根裏部屋から出て、大都市を飾る輝く存在となるために。独身の人であれば、できるならば、ここではない、どこか遠く良い所へ行きたいと考えるのは、理解できないことではない。たとえ、この小さなご近所での暮らしが、悪くないものであっても。彼らは地方都市で夢を見る。」
The office door closed early
The hidden bottle came out
The salesman turned to close the blinds
A little slow now, a little stout
But he's still heading down those tracks
Any day now for sure
Another day as drab as today is more than a man can endure
Dreams flow across the heartland
Feeding on the fires
Dreams transport desires
Drive you when you're down
Dreams transport the ones who need to get out of town
The boy walks with his best friend through the fields of early May
They walk awhile in silence
One close, one far away
He'd be climbing on that bus just him and his guitar
To blaze across the heavens like a brilliant shooting star
The middle-aged madonna calls her neighbour on the phone
Day by day the seasons pass and leave her life alone
But she'll go walking out that door on some bright afternoon
To go and paint big cities from a lonely attic room
It's understood By every single person
Who'd be elsewhere if they could so far so good
And life's not unpleasant in their little neighborhood
They dream in Middletown