ビリー・ジョエルは、1949年、ニューヨーク市ブロンクスで、ナチスから逃れてアメリカに亡命したドイツ系ユダヤ人の父親とイギリス系ユダヤ人の母親から生まれました。世代的には、ビリー・ジョエルは、TULIPの財津和夫さんの1年後輩、「ふきのとう」の山木康世さんの1年先輩になります。
ビリー・ジョエルのデビューは、1971年(22歳)で、「かぐや姫」デビューの翌年、TULIPのデビューの前年にあたります。しかし、このデビューは失敗に終わり、その後、1973年(24歳)にアルバム「ピアノマン」で再デビューし、このアルバムで世間に認知されるようになりました。「かぐや姫」が代表曲「神田川」で、TULIPが「心の旅」で、N.S.Pが「さようなら」で、世間に認知されたのと同じ年です。
ここでは、ビリー・ジョエルの全盛期と言える1971〜1985年までの曲の中から、ベスト15曲を選びました。
選曲は、独断と偏見によります。記載順は、発表年時順です。チャート順位は、全米チャートです。
20曲中で、恋愛・失恋をテーマにしたラブソングは7曲のみです。残り13曲は、それぞれ、人が生きる上で直面する、さまざまな困難や課題など、恋愛事情以外の人生のテーマを歌った歌です。
①She's Got a Way
◯アルバム「コールド・スプリング・ハーバー〜ピアノの詩人(1971年発表/1st/158位)」初収録。
◯アルバム「ソングズ・イン・ジ・アティック(1981年発表/1stLiveアルバム/8位)」ライブ音源収録。
◯シングル(1982年発表/ライブ音源18th/4位)
まったく売れなかったファースト・アルバムの収録曲だったものが、初ライブ盤「ソングズ・イン・ジ・アティック」にライブ音源が収録され、そこからシングル・カットされて有名になった曲。シンプルで美しいラブソング。
She's got a way about her.
I don't know what it is.
But I know that I can't live without her.
②Piano Man
◯シングル(1973年発表/1st/25位)
◯アルバム「ピアノ・マン(1973年発表/2nd/27位)」初収録。
ビリー・ジョエルのデビュー・シングルにして出世曲。
ファースト・アルバムのセールスが伸びなかった後、L.A.のバーで、ピアノを弾いていた頃の実体験が元のなって作られた歌です。歌詞に出てくる登場人物たちも、みんな、実在の人物がモデルになっているそうです。
「土曜の夜9時、常連たちが、次々に入ってくる。俺の隣に座ったのは、ジントニックをこよなく愛する一人の老人だ。お前さん、わしの思い出の曲を一つ弾いてくれんか? 実は、うろ覚えなんだが、甘い、哀しい曲で、若い頃には、完全に覚えちゃいたんだが、と老人は言った。一曲、歌ってくれないか、ピアノマン。今夜、一曲。俺たちはみんな、お前のメロディーを聴きたい気分なのさ。お前さんの曲を聴いていると、今日も大丈夫だって感じるのさ。」
「このバーで働いているジョンは、俺の友達で、俺の飲み代もタダにしてくれる。キレのいいジョークを飛ばし、客のタバコに火をつけるのもはやい。だが、あいつには、どこか、もっとお似合いの場所があるはずなのさ。ビル、もう、うんざりさ。そう言う彼の顔からは、いつもの笑顔が消えていた。俺は、映画スターにだってなれるはずだ、もし、ここから出ていくことができさえしたら。」
「不動産ブローカーのポールは、小説家を目指している。忙しくて嫁さんを見つける暇もないんだとさ。そして、彼が話している相手は、まだ、海軍にいるデイビーだ。おそらく、二人とも、一生、そうしているんだろう。」
It's nine o'clock on Saturday, the regular crowd shuffles in.
There's an old man sitting next to me making love to his tonic and gin.
He says, "Son, can you play me a memory?
I'm not really sure how it goes.
But it's sad and it's sweet and I knew it complete when I wore a younger man's clothes."
Sing us a song, you're the piano man, sing us a song tonight.
Well, we're all in the mood for a melody and you've got us feelin' alright.
Now John at the bar is a friend of mine.
He gets me my drinks for free.
And he's quick with a joke or to light up your smoke.
But there's someplace that he'd rather be.
He says, "Bill, I believe this is killing me" as the smile ran away from his face.
"Well I'm sure that I could be a movie star If I could get out of this place."
Now Paul is a real estate novelist who never had time for a wife.
And he's talkin' with Davy who's still in the navy and probably will be for life.
③さよならハリウッド(Say Doodbye to Hollywood)
◯アルバム「ニューヨーク物語(1976年発表/4th/122位)」初収録。
◯アルバム「ソングズ・イン・ジ・アティック(1981年発表/1stLiveアルバム/8位)」ライブ音源収録。
◯シングル(1981年発表/ライブ音源17th/17位)
スタジオ録音版も、ライブ版も、どちらも、それなりに味わいがあります。
西海岸のL.A.に訣別を告げて、故郷ニューヨークへ戻った気持ちを歌っています。
「街を出るのは、君にとってチャンスだ。君は、いつも、一緒にやっていこうと努力してきた。ほんの一言、言い過ぎただけで、友達がみんな、永遠に去ってしまったことに気づかされる。人生の中で、たくさんの出会いと別れがあった。長く続く友達もいるし、その場限りの人もいる。人生は〝ハロー〟と〝グッドバイ〟の連続だ。そして、また、さよならの時が来てしまった。ハリウッドにさよならを言おう。恋人にも、ね。」
Moving on is a chance that you take.
Every time you try to stay together.
Say a word out of line and you find that the friends you had are gone forever.
So many faces in and out of my life.
Some will last, some will just be now and then.
Life is a series of hellos and goodbyes.
I'm afraid it's time for goodbye again.
Say goodbye to Hollywood.
Say goodbye, my baby.
④ニューヨークの想い(New York State of Mind)
◯アルバム「ニューヨーク物語(1976年発表/4th/122位)」初収録。
◯シングル(1976年発表/5th/ー)
ビリー・ジョエルのベスト・バラード。自分はともかくニューヨークが好きだ、と歌いあげています。
「近所には、休暇をとって、マイアミビーチやハリウッドへと、飛行機で逃げていくのを好む人たちがいる。でも、僕は、ハドソン川沿いをはしるグレイハウンド(バス)に乗っている。僕は、大好きなニューヨークにいる。派手なクルマやリムジンに乗る映画スターたちをたくさん見てきた。緑に包まれたロッキー山脈にも登った。僕は、自分に何が必要かわかっているし、これ以上、時間を無駄にしたくないんだ。僕は、今、心の故郷、ニューヨークにいる。」
Some folks like to get away
Take a Holliday from the neighborhood
Hop a flight to Miami Beach or to Hollywood.
But I'm taking a Greyhound on the Hudson River Line.
I'm in a New York State of mind.
I've seen all the movie stars
In their fancy cars and their limousines
Been high in the Rockys under the evergreens.
I know what I'm needin' and I don't want to waste more time.
I'm in a New York state of mind.
⑤マイアミ2017(Miami 2017)
◯アルバム「ニューヨーク物語(1976年発表/4th/122位)」初収録。
◯アルバム「ソングズ・イン・ジ・アティック(1981年発表/1stLiveアルバム/8位)」ライブ音源収録。
「ソングズ・イン・ジ・アティック」のライブ音源が、非常に良いです。歌詞が非常にSF的で興味深い内容です。2017年、ニューヨークは崩壊していて、みんな、マイアミに逃げてしまっていたという設定です。
「ブロードウェイの灯が消えた。エンパイア・ステート・ビルディングが倒れるのを僕は見た。人々の生活圏は、パリセーズ(ハドソン川)の向こう側に移った。彼らは皆、キャデラックを買い、遠い昔に、そこを去った。ブルックリンでは、橋が吹き飛ばされるのを見物するために、コンサートが開かれた。彼らは、僕らの力を弱め、僕らを地下に追いやった。でも、僕らは、コンサートを続けたんだ。」
「ブロードウェイの灯が消えるのを僕は見たんだ。足元には、その廃墟があった。僕らのほとんどは、その廃墟に気づきもしなかったよね。42番街では、いつでも廃墟が広がっていたから。スペイン内戦のように、ハーレムでは教会が燃やされた。炎が至る所で燃え上がっていたけれど、気にする人はいなかった。ハーレムでは、以前から、いつだって炎が上がっていたからね。」
Seen the light go out on Broadway.
I saw the Empire State laid down and life went on beyond the palisades.
They all bought Cadillacs and left there long ago.
They held a concert out in Brooklyn to watch the island bridges blow.
They turned our power down and drove us underground.
But we went right on with the show.
I've seen the lights go out on Broadway.
I saw the ruins at my feet.
You know we almost didn't notice it.
We'd seen it all time on Forty-second Street.
They burned the chuches up in Harlem like in the Spanish civil war.
The flames were everywhere but no one really cared.
It always burned up there before.
⑥夏、ハイランドフォールズにて(Summer, Highland Falls)
◯アルバム「ニューヨーク物語(1976年発表/4th/122位)」初収録。
◯アルバム「ソングズ・イン・ジ・アティック(1981年発表/1stLiveアルバム/8位)」ライブ音源収録。
スタジオ録音版、ライブ版、どちらも良いです。
ハイランドフォールズは、ビリーが、西海岸から戻ってきた時に移り住んだニューヨーク州ハドソン川沿いの南側にある小さな村です。
ビリー自身は、この歌を〝躁鬱症に捧げる歌〟と言っています。ピアノが奏でる軽快で美しいメロディーとはかけ離れた、何だか、とても哲学的な詞なのです。
「それで、僕たちは、争ったり妥協したりしながら、何も変わってはいないことに気づく。どれほど似たような経験をしても、それぞれの結論はかけ離れたままだ。今、僕たちは、自らの残忍性を認識するように強いられている。僕たちの理性は、狂気と共存している。たとえ、現実と狂気のどちらかを選んだとしても、それは、哀しいのか、嬉しいのか、僕には、よくわからない。なんて浅はかに、僕らは、活力を浪費するのだろう。たぶん、僕らは、互いの幻想を満たし合うこともできない。僕らは、似たような状況で、それぞれ、人生の崖っぷちに立っているんだ。それが、哀しいのか、嬉しいのか、僕にはよくわからないんだ。」
So we'll argue and we'll compromise, and realize that nothing's ever changed.
For all our mutual experience, our separate conclusions are the same.
Now we are forced to recognize our inhumanity.
Our reason coexists with our insanity.
And though we choose between reality and madness,
It's either sadness or euphoria.
How thoughtlessly we dissipate our energies.
Perhaps we don't fulfill each other's fantasies.
And as we stand upon the ledges of our lives with our respective similarities,
It's either sadness or euphoria.
⑦ジェイムズ(James)
◯アルバム「ニューヨーク物語(1976年発表/4th/122位)」初収録。
あまり知られていない曲ですが、しんみりとした美しい佳曲。
ビリーは「君が本当の自分自身でいなければ、誰も幸せにならない」と、人生の真理を優しく語りかけています。
「ジェイムズ、自分の人生が好きかい? 安らぎはあるかい? これまでの生き方を変える気はないのかい? いつか、大著を書くつもりなの? まだ、学校で研究を続けているの? 期待に応えようと努力し続けているんだね、ジェイムズ。
「君は、とても頼りにされていたし、君が努力していたことは誰もが知っている。これまで、家族の期待を担って、成し遂げてきたことを考えてみろよ。」
「ジェイムズ、君は、礼儀正しく振る舞ってきたし、一生懸命、勉強してきた。でも、いつまでも、そうして誰かの夢を担っていくのかい? 本当の君自身になって、幸せになるべきなんだ。さもなければ、誰も幸せにならない。このままでは、君は、誰も幸せにはできないんだよ、ジェイムズ。」
James...do you like your life, can you find release,
And will you ever changeー
Will you ever write your masterpiece.
Are you still in schoolー
Living up to expectations...James...
You were so relied upon.
Everybody knows how hard you triedー
Hey...just look at what a job you've done, carrying the weight of family pride.
James…you've been well behaved, you've been working so hard.
But will you always stayー
Someone else's dreams of who you are.
Do what's good for you, or you're not good for anybody…James.
⑧ストレンジャー(The Stranger)
◯アルバム「ストレンジャー(1977年発表/5th/2位)」初収録。
ビリー・ジョエルの代表曲のひとつ。「人は誰しも仮面(ペルソナ)をつけて生きている」という心理学的な社会の真実を歌っている曲です。
「そう、我々は、誰もが皆、永遠に隠し続ける秘密の顔を持っている。そして、我々は、誰もいない時にだけ、こっそり、その仮面を取り出して眺めるんだ。サテン織もあれば、鋼鉄製もある。絹製もあれば革製もある。どの顔も、見覚えのないものばかりだ。だが、我々は、その誰にも見せたことのない仮面を装着するのを好むのだ。」
「そう、我々は、誰もが皆、その危険を顧みずに恋に落ちる。恋人たちの間では、あれほど多くの秘密が分かち合われるのに、決して打ち明けられることのない秘密もある。君が決して見ることのない顔を、相手が隠し持っていることに、なぜ、そんなに驚くことがあるんだ? 君自身は、自分の隠している顔を、恋人に見せたことがあるのかい?」
Well we all have a face that we hide away forever.
And we take them out and show ourselves when everyone has gone.
Some are satin, some are steel, some are silk and some are leather.
They're the faces of a strangers but we'd love to try them on.
Well, we all fall in love but we disregard the danger.
Though we share so many secrets, there are some we never tell.
Why were you so surprised that you never saw the stranger?
Did you ever let your lover see the stranger in yourself?
⑨ムーヴィン・アウト(Moving Out)
◯アルバム「ストレンジャー(1977年発表/5th/2位)」初収録。
◯シングル(1978年発表/7th/17位)
「一生懸命、真面目に労働して、小金を必死に貯めて、それでいったい何になる?」と怒りを叩きつけるように歌う曲。
「アンソニーは、将来のために、雑貨店で働いて、お金を貯めている。レオーネ母さんは、ドアに〝ソニー、田舎へ行って、のんびり暮らしなさい〟と伝言を残して、去ってしまった。働き過ぎで、心臓発作を起こしたら、元も子もない。もう、気づいていい頃だ。誰が、ハッケンサック(高級住宅街)に家が必要なんだ? それが、これまで必死で貯めてきたお金で手に入れられるすべて、それでいいのか? それがすべてだと言うなら、なんてばかばかしい話だ。それが、出世だと言うなら、そんなものは要らない。僕は出ていくよ。」
Anthony works in the grocery store saving his pennies for someday.
Mama Leone left a note on the door.
She said "Sonny, move out to the country."
Oh but working too hard can give you a heart attack.
You oughta know by now.
Who needs a house out in Hackensack?
Is that all you get for your money?
It seems such a waste of time if that's what it's all about..
Mama, if that's movin' up then I'm movin' out
⑩素顔のままで(Just the Way You Are)
◯アルバム「ストレンジャー(1977年発表/5th/2位)」初収録。
◯シングル(1978年発表/6th/1位)
ビリー・ジョエルの最も有名なラブソング。
「僕を喜ばそうとして、自分を変える必要はない。君は、これまで、僕をガッカリさせたことなんてないんだから。親密になり過ぎて、もうこれ以上は、僕が、うんざりしてるんじゃないかとか、いらない想像はしないで。どんな困難な状況でも、僕は君を置き去りにしたことなんてない。そうじゃなきゃ、僕らは、ここまでこれなかったよね。僕は、素晴らしい時を過ごしてきた。困難も、恐れたりはしない。そのままの君と一緒にいたいんだ。」
「新しい流行を追いかけたり、髪の色を変えたりしないで。そうは見えないかもしれないけど、僕は、いつだって、そのままの君に、言葉にならない情熱を感じているんだ。僕は、頭の良い気の利いた会話なんてしたくない。だから、そんなに一生懸命にならないで。僕は、話し合える相手が欲しいだけなんだ。そのままの君でいて欲しい。」
Don’t go changing, to try and please me.
You never let me down before.
Don’t imagine you’re too familiar and I don’t see you anymore.
I wouldn’t leave you in times of trouble.
We never could have come this far.
I took the good times, I’ll take the bad times,
I’ll take you just the way you are.
Don’t go trying some new fashion.
Don’t change the color of your hair.
You always have my unspoken passion allthough I might not seem to care.
I don't want clever conversations.
I never want to work that hard.
I just want someone that I can talk to.
I want you just the way you are.
⑪She's Always a Woman
◯アルバム「ストレンジャー(1977年発表/5th/2位)」初収録。
◯シングル(1978年発表/9th/17位)
これもビリー・ジョエルの代表的なラブソング。かなり皮肉な、苦しい歌詞ではありますが。
「彼女は、自分のことは自分でできる人だ。その気になれば、待つこともできる。彼女は、時代の先を行く人なんだ。決して、力尽きることはない。諦めることもない。ただ、気が変わりやすいだけなんだ。たいがいは親切だけど、突然、残酷にもなれる。身勝手な人だけど、抜け目がない人でもある。人に後ろ指を指されたり、責められることはないし、(堂々としていられるだけの)学位も持っている。彼女がする大概のことは、君に影を落とし、憂いをもたらすだろう。だけど、それでも、彼女は、僕にとっては、いつも、一人の(抗い難い魅力を備えた)女性なんだ。」
Oh, she takes care of herself.
She can wait if she wants.
She's ahead of her time.
Oh, and she never gives out and she never gives in.
She just changes her mind.
She's frequently kind and she's suddenly cruel.
She can do as she pleases, she's nobody's fool.
But she can't be convicted, she's earned her degree.
And most she will do is throw shadows at you.
But she's always a woman to me.
⑫My Life
◯アルバム「ニューヨーク52番街(1978年発表/6th/1位)」初収録。
◯シングル(1978年発表/10th/3位)
ともかく俺はニューヨークがいいんだ。西海岸が好きなやつにはわからないだろうが、わかってもらえなくて結構だ、と歌っています。
「以前にとても親しかった古い友人から電話があった。アメリカン・ライフスタイルには、もうついていけないと、彼は言った。店を閉め、家を売って、西海岸行きのチケットを買った。そして、今は、L.A.のナイトクラブで、トークショーをするコメディアンをやっている、と言う。」
「僕は大丈夫だから、君に心配してもらう必要はないよ。〝君もそろそろこっちへ来いよ〟とか、君から聞きたくないんだ。君が何と言おうと、僕には関係ない。これが僕の人生だからね。君は君の生き方をすればいい。僕のことは、放っておいてくれ。」
Got a call from an old friend we used to be real close.
Said he couldn't go on the American way.
Close the shop, sold a house, bought a ticket to the west coast.
Now he give them a stand up routine in L.A.
I don't need you to worry for me 'cause I'm all right.
I don’t want you to tell me it’s time to come home.
I don’t care what you say anymore, this is my life.
Go ahead with your own life, leave me alone.
⑬Big Shot
◯アルバム「ニューヨーク52番街(1978年発表/6th/1位)」初収録。
◯シングル(1978年発表/11th/14位)
名盤「ニューヨーク52番街」は、A面の4曲が素晴らしいのですが、その出だしの一曲。パークアベニューファッションに身を包み、ドンペリ片手に、鼻からコカインを吸い込んで、リムジンで山の手の豪邸に乗りつける、セレブな女の子についての歌です。
「君は、パークアベニュー・スタイルのイカしたファッションに身を包み、リムジンで山の手へ向かう。片手にドンペリを持って、鼻からスプーンでコカインを吸い込む。朝、髪の毛を爆発させて、血走った真っ赤な眼で、見るも無残な様子で目を覚ます。さあ、起きて。落ち込んでいるなら、コーヒーを飲みながら、泣きたいだけ泣くがいいさ。だが、俺に向かって泣き言や愚痴を言うなよ。なぜって、君は、大物にならなきゃいけなかったんだろう? 大口を叩く必要があったんだ。君の友達は、みんな君にノックアウトされたさ。昨夜は、最後の決め台詞を言わなきゃいけなかったんだろ。もちろん、君は何でも知っている。ホットなスポットライトを浴びなきゃならなかったんだよな。昨夜は、君は、大物でいなくちゃいけなかったんだ。」
Well, you went uptown riding in your limousine with your fine Park Avenue clothes.
You had the Dom Perignon in your hand and the spoon up your nose.
And when you wake up in the morning
With your head on fire and your eyes too bloody to see.
Go on and cry in your coffee.
But don’t come botching to me.
Because you had to be a big shot, didn’t you?
You had to open up your mouth.
You had to be a big shot, didn’t you?
All your friends were so knocked out.
You had to have the last word last night.
You know what everything’s about.
You had to have a white hot spotlight.
You had to be a big shot last night.
⑭Honesty
◯アルバム「ニューヨーク52番街(1978年発表/6th/1位)」初収録。
◯シングル(1978年発表/12th/24位)
日本での人気が非常に高いバラード曲です。
「もし、君が、優しさを探すなら、見つけるのはさほど難しくない。生きていく上で必要な愛情を、君は手に入れることができる。でも、もし、君が、真実を求めるなら、盲目になった方がマシだ。〝誠実さ〟は、なんと孤独な言葉だろうか。誰もが嘘つきだ。〝誠実さ〟は滅多に見られない希少なもので、でも、僕が君に求めるものは、それなんだ。」
If you search for tenderness it isn't hard to find.
You can have the love you need to live.
But if you look for truthfulness you might just as well be blind.
It always seems to be so hard to give.
Honesty is such a lonely word.
Everyone is so untrue.
Honesty is hardly ever heard.
And mostly what I need from you.
⑮ザンジバル(Zanzibar)
◯アルバム「ニューヨーク52番街(1978年発表/6th/1位)」初収録。
あまり知られていませんが、雰囲気のあるカッコいい曲です。いかにもニューヨークのジャズの粋な味わいがあります。ちなみに、ザンジバルは、アフリカのザンジバル島ではなく、ニューヨークの酒場(架空のスポーツ・バー)の名前のようです。
「ムハメド・アリが蝶のように舞う。観衆は拍手喝采する。アリは汗びっしょりだったが、自分のスタイルを貫く。アリ、ダウンタウンには行くなよ。興奮する群衆に揉まれて、タダで、もう1ラウンドやる羽目になる。俺かい? 俺は、ただのザンジバルの常連の一人さ。だが、そこのウエイトレスは、いつも、俺に秘密の笑顔をくれるんだ。彼女は、スラム街で俺を待っている。そして、俺のために、カーテン(パンティ)を下ろしてくれる、俺のためにね。俺は、旧式の高級車を手に入れた。ジャズギターも手に入れた。おまけに、ザンジバルには、ツケがある。今夜、俺は、そこにいるだろう。」
Ali dances and the audience applauds.
Though he's beathed in sweat, he hasn't lost his style.
Ali don't you go downtown.
You gave away another round for free.
Me, I'm just another face at Zanzibar.
But the waitress always serves a secret smile.
She's waiting out in Shantytown.
She's gonna pull the curtains down for me, for me.
I've got the old man's car,
I've got a jazz guitar.
I've got a tab at Zanzibar.
Tonight that's where I'll be.
⑯アレンタウン(Allentown)
◯シングル(1982年発表/20th/17位)
◯アルバム「ナイロン・カーテン(1982年発表/8th/7位)」初収録。
ペンシルバニア州に実在する、衰退していく鉄鋼の街について歌っています。
「俺たちは、ここ、アレンタウンに住んでいる。工場は次々と閉鎖されていく。お隣のベツレヘムでは、行列を作って、求人票に記入して、みんな、無為にうだうだと時間を潰している。俺たちの父親の世代は、第二次世界大戦で戦った。週末はニュージャージーの海岸で過ごした。そして、当時、U.S.O.(米軍慰問団)にいた女性たち、俺たちの母親たちと出会った。彼女たちをダンスに誘い、スローダンスを踊った。こうして、俺たちは、今、ここ、アレンタウンに住んでいる。ところが、最近、不安の波が広がってきた。この街に留まることは、とても大変になってきている。」
Well, we are living here in Allentown.
And they are closing all the factories down.
Out in Bethlehem, they are killing time, filling out forms, standing in line.
Well, our fathers fought the Second World War,
Spent their weekends on the Jersey Shore,
Met our mothers in the USO, asked them to dance, danced with them slow,
And we're living here in Allentown.
But the restlessness was handed down and it's getting very hard to stay.
⑰グッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌(Goodnight Saigon)
◯アルバム「ナイロン・カーテン(1982年発表/8th/7位)」初収録。
◯シングル(1983年発表/21th/56位)
時期外れではありますが、ベトナム戦争をテーマにした曲。このアルバム「ナイロン・カーテン」のコンセプトは、重苦しくつらい社会問題を真正面から取り上げるというものでしたが、アレンタウンと並んで、アルバム・コンセプトを象徴する曲です。
And they were as sharp as knives.
They heard the hum of our motors.
They counted the rotors and waited for us to arrive.
And we would all go down together.
⑱アップタウン・ガール(Uptown Girl)
◯アルバム「イノセント・マン(1983年発表/9th/4位)
◯シングル(1983年発表/23th/2位)
山の手の女の子を好きになった下町の男の子の歌(ラブソング)です。
2017年にスズキ、2009年、2022年にキリンがCMソングに採用しました。よく耳にする曲ですね。コーラスが印象的な楽しい曲です。
前作「ナイロン・カーテン」とは打って変わって、楽しいラブソングを散りばめた「イノセント・マン」のアルバム・コンセプトを代表する曲のひとつ。
「彼女は山の手のお嬢さまさ。賭けてもいいが、俺みたいな裏町の男のことなんか、何も知らないね。そして、これも賭けてもいいが、彼女のママは、なぜ、裏町の連中と付き合いがないのか、教えたこともないだろうさ。それでも、俺は、山の手のお嬢さんを、ものにしてみようと思うのさ。彼女は、白人上流社会のセレブのお嬢さまさ。それでも、熱い情熱の持ち主なら、ものにできるかもしれない。そして、今、彼女は、下町の男を求めているのさ。それが、まさに俺じゃなか。彼女の心が大人になって、本当に自分が求めているのものを知ったなら、彼女の心が目覚めて、心を決めたなら、彼女は俺がそれほどタフじゃないってことに気づくはずさ。なぜって、俺は、山の手のお嬢さまに恋をしているんだから。」
She's been living in her uptown world.
I bet she's never had a backstreet guy.
I bet her momma never told her why.
I'm gonna try for an uptown girl.
She's been living in her white bread world.
As long as anyone with hot blood can.
And now she's looking for a downtown man.
That's what I am.
And when she knows what she wants from her time,
And when she wakes up and makes up her mind,
She'll see I'm not so tough just because I'm in love with an uptown girl.
⑲ロンゲスト・タイム(The Longest Time)
◯アルバム「イノセント・マン(1983年発表/9th/4位)
◯シングル(1983年発表/24th/1位)
アルバム「イノセント・マン」の収録曲で、いちばん好きな曲。ビリー本人の多重録音によるアカペラのラブソングです。落ち着きます。
I had second thoughts at the start.
I said to myself, “hold on to your heart."
Now I know the woman that you are.
You’re wonderful so far.
And it’s more than I hoped for.
I don't care what consequence it brings.
I have been a fool for lesser things.
I want you so bad.
I think you ought to know that.
I intend to hold you for the longest time.
⑳Night is Still Young
◯アルバム「ビリー・ザ・ベスト(1985年発表/1stベスト/6位)」初収録。
◯シングル(1985年発表/29th/34位)
ベスト盤に新曲として初収録されたもの。夜明け頃の港町の雰囲気を感じます。
1980年代のビリー・ジョエルには、どこか自分を〝つくっている〟というか、意図して計算の上で表現しているような〝人工的〟な面を感じるのですが、この曲は、久々に、自然な等身大のビリー・ジョエルの生の声を感じさせてくれます。
この曲の詞で、ビリーが言っている夜は、人生の〝闇夜〟でしょう。「人生の闇が僕を捕らえてしまう前に、僕は君と生きると決めたんだ」と歌う、力強いラブソングです。
「俺は、かつての自分がそうだった、情熱的な少年のことが理解できるぐらいには、まだ若い。だが、対立する相手にグッドラックを言えるぐらいには歳をとっている。俺は、これまで、一生分にあたるぐらい、懸命に働いてきた。だが、今は、今夜、得られるものだけを取りたい。夜がまだふけないうちに、お前と愛し合いたい。夜がまだふけないうちに、俺は落ち着きたい。身を固めて、いつか、子供だって作るかもしれない。スーツケースを放り捨てる時が来たのかもしれない。君が電話でおやすみを言わないといけないような遠距離恋愛はもう嫌なんだ。俺がこれまで過ごしてきた人生をすべてにはしないと決めたんだ。」
I'm young enough to see the passionate boy that I used to be.
But I'm old enough to say I got a good look at the other side.
I know we got to work real hard, maybe even for the rest of our lives.
But right now I just want to take what I can get tonight.
While the night is still young, I want to keep making love to you.
While the night is still young, I'd like to settle down, get married and maybe have a child someday.
I can see a time coming when I'm gonna throw my suitcase out.
No more separations where you have to say good night to a telephone.
Baby, I've decided that aren't what this life is all about.