2022年2月24日に始まったウクライナ戦争が、侵攻から1ヶ月経った。
ロシア軍の攻撃で亡くなったウクライナの民間人の総数は、3月21日までの26日間の統計で、925人と国連難民高等弁務官事務所は発表した。
この1ヶ月で、およそ1000人の民間人の犠牲者が出ているということだ。
この数が、多いか少ないか、わからない。
ただ、太平洋戦争において、日本軍が真珠湾攻撃を行った時に、亡くなったアメリカ人の民間人の総数は、1日で68人だった。
この時、日本側は、軍事施設のみを攻撃目標とし、民間人の施設は、一切攻撃していない。それでも、68人の民間人が亡くなったのだ。
繰り返すが、ロシアのウクライナ侵攻の場合、26日間の攻撃で、925人が亡くなった。少なくとも、言えることは、ロシア軍は、今のところ、なりふり構わぬ市民への無差別攻撃は行っていないということだ。
ナチス・ドイツは、スペイン内戦で、史上初の航空機による市街への無差別爆撃(ゲルニカ爆撃)を行った。この1937年4月26日の都市爆撃では、1日で250人の民間人が亡くなった。
また、アメリカ軍は、第二次世界大戦で、ドイツのドレスデンに、広範囲の無差別爆撃を行った。この爆撃では、1945年2月13〜14日にかけて、一晩で18,000〜25,000人の民間人が殺された。
1945年3月10日の未明には、アメリカ軍による東京大空襲が行われた。1日で10万5000人の死者が確認されている。
アメリカ軍による攻撃で始まった沖縄戦では、同年3月23日から7月2日までの3ヶ月以上に及ぶ戦いで、民間人9万4000人が亡くなった。
さらに、同年の8月6日と9日には、広島と長崎に、それぞれウラン型とプルトニウム型の原子爆弾を、アメリカは落とした。人類史上、最初の、そして、唯一の核攻撃を行ったのだ。これにより、広島で14万人、長崎で7万人が亡くなった。
1965〜73年にかけて、アメリカ軍が侵攻したベトナム戦争では、10年近く続いた戦争で、ベトナム人の民間人が200万人亡くなったとされる。
2003年に、アメリカがイラクに侵攻したイラク戦争では、2007年までの5年間で、少なくとも80,000人の民間人が、アメリカ軍の攻撃(誤認・誤爆・誤射)によって直接殺害されたと言われる。
5年間で80,000人ということは、1ヶ月ならば平均で1,300人強ということになり、ウクライナ侵攻後のロシア軍による民間人殺害数と、ほとんど変わらない。むしろ、アメリカ軍の攻撃の犠牲者の方が多い。
こうしてみると、近代史上、戦争で、最も多くの民間人の無差別殺戮をおこなってきた国の一つは、間違いなくアメリカ合衆国である。そして、アメリカは、繰り返し、軍による民間人の大量殺戮を行いながら、今に至るまで、ほとんど国際的に激しい非難を受けずに済ましてきた唯一の国でもある。
ほとんどの日本人も、アメリカを、まったく反省しない大量虐殺国家とは考えていない。
そもそも、唯一の被爆国である日本よりも、唯一の核使用国であるアメリカこそが、核廃絶に向けて、世界でもっとも大きな義務と責任を負っていることは、誰が考えても間違いない。
そのことを問題とせず、「核を使用された日本人が、なぜ核廃絶に反対しないのか?」と日本人の方が、いちいち理不尽なことを訊かれる。
日本が核廃絶に調印しない理由など、誰の目にも明らかであるにもかかわらず、頻繁に、そのようなくだらない質問をされ、「日本こそが、世界で一番、核廃絶の義務を負っている」などと、意味不明なことを言われる。
日本のメディアは、自ら進んでアメリカの報道機関のコピーに徹する従順な報道機関ばかりなので、アメリカが言わないことは言わないし、アメリカが言うことは素直に広く報道する。
「アメリカが1番!」と洗脳されているのか、アメリカのリベラル・メディア(CNNとか)は常に正しいと思い込んでいるのか、ともかく、日本独自の視点というものがない。
日本人は、この状況に、違和感を抱かない。
繰り返すが、ロシアが虐殺しているウクライナの民間人の数と、アメリカが虐殺しているイラクの民間人の数は、まったく変わらない。
ロシアがナチと変わらぬ非道な虐殺者であると言うなら、アメリカもまたナチと変わらぬ非道な虐殺者である。
こんな小学生でもわかる簡単な事実に、日本人はなかなか気付けない。
なぜ、日本人には、公平な見方ができないのだろうか?
それは、日本が、全面的に、アメリカに依存しているからだ。
そのせいで、メディアまで、CNNの日本支局に成り下がっている。
どんなにかっこいいことを言っても、所詮は依存する精神の自己正当化に過ぎない。
自立する大国は、もっと物事を公平に見ている。
日本が核廃絶に調印しない理由についても、日本のメディアがまともに論じているのを見たことがない。
しかし、それについては、ゼレンスキーに訊けばすぐ答えてくれるだろう。
それは、二度と誰にも、この日本に核攻撃をさせないためだ。そのために我々は、核抑止力を必要としている。
非現実的な自己都合の妄想の世界に生きる共産党の抜け作・ボンクラどもを除けば、このことに同意しない日本人はいないだろう。
あとは、アメリカの核に頼るか、自前の核を持つか、そういう選択になる。それにしても、アメリカの核に頼ることの情けなさを、今、どのくらいの日本人が強く感じているだろうか。
そんなことすら、感じなくなっている親不孝者が、今の日本人ではないか?
ゼレンスキーは、アメリカで「真珠湾攻撃をただ、思い出してください」「無実の市民の上に敵の攻撃が降り注いだのです」と言ったのだから、日本では「ただ、広島・長崎を思い出してください」「無実の市民が、一瞬で、無差別に大量殺戮されたのです」と言うべきであった。
とは言え、実際のゼレンスキーの演説は、実に無難におとなしく何事もなく終わった。可もなく不可もない、まさに日本向けの演説であった。
彼は、本質を突く話が苦手で、オブラートに包んだような甘い話しか受け付けない日本人というものを、事前によく勉強していたようだ。
口先三寸で、世界中からお金を集めている男は、その辺の勘は鋭い。世間知らずの日本人を丸め込むなど朝飯前だったろう。