キエフの陥落は、ほぼ確定事項である。 

ロシアとウクライナでは、人口で3倍以上、経済力・軍事力で10倍以上の差がある。

かつてのアメリカ軍と旧日本軍との太平洋戦争の戦いより、はるかにウクライナに分が悪い。圧倒的な戦力差である。

甚だしい戦力差を、愛国心でカバーできるものではない」ということは、かつてアメリカと戦った日本人が1番よく知っている。

しかも、ウクライナは、すでに本土決戦が行われている状況だ。

実際、今、おこなわれている市街戦では、民間人の死傷者がいたずらに増えるばかりだ。

 

戦いの素人である国民に、火炎瓶の作り方を指南して徹底抗戦を呼びかけるゼレンスキーは、竹槍で本土決戦を叫んだ旧日本軍と変わらない。 

強大な敵に怯まぬ、大和魂ならぬ、ウクライナ魂のありようは、勇ましいこと、この上ないが、国民の命を守る責任を負う指導者としては、勝てる見込みのまったくない戦いの業火に、全国民を突入させるのは、蛮勇を超えて、無謀で浅はかと言うより他ない。

 

以前は、そこまで思わなかったが、事ここに至り、最近では、私は、失礼を承知で言わせてもらうが、ゼレンスキーはサイコではないかと思うのだ。

首都キエフにとどまるという、自分の命をかえりみない勇敢さは立派だが、他人の、特に国民の命をかえりみない方策を選択するのは、為政者として許されるものではない。

どれほどの犠牲を払おうとロシアには屈しない」と、口で言うのは簡単だが、実際にそれをやってしまっては話にならない。

 

旧日本軍とは異なり、ウクライナには、西側の援助があり、ロシアは世界的な経済包囲網に晒されている。日中戦争に例えると、言わば、ウクライナに援蒋ルートがあり、ロシアはABCD包囲網が狭まっている状況ではある。

 

しかし、中国の習近平は、ロシアへの経済封鎖には参加しないと、西側の要請をはねつけた。さらに、習近平は、プーチンが、NATOの東方拡大を、ロシアの安全保障上の重大な危機と捉えたことに、一定の理解を示した。中国もまた、アメリカの影響力が、ユーラシア大陸で、これ以上、大きくなることに、危機意識を抱いているからだ。

 

今のところ、中国・インドのアジア二大国は、ロシアを見捨てる気配はない。だから、ロシアは、容易に屈服しないだろう。経済封鎖に慣れているロシア人は、辛抱強く、長く耐えるに違いない

その間も、否応なく戦いが続くことで、この先、ウクライナ国民にどれだけの犠牲が出るか、想像もつかない。

現在の戦況は、決して、ウクライナ国民に、希望を持たせてくれるものではない。

 

アメリカのバイデンも、ドイツのシュルツも、自分たちは安全な地にいて、命を脅かされているウクライナ国民に向かって、頑張れ、頑張れと、火に油を注ぐように、あるいは輸血を繰り返すように、武器や食糧を提供し、どこまでも戦わせようとするのは無責任も甚だしい。

ジョー・バイデンもカマラ・ハリスも、急に生き生きとして見える。他人の不幸が実に嬉しそうではないか。ロシアを叩くことでNATOの結束を図り、低迷していた支持率も上がり、これで選挙に勝てると思っているのだろう。

「他人の戦争で遊ぶな!」と言いたい。 

 

そもそも、NATO加盟によるウクライナへの核設置の可能性をちらつかせて、ロシアを挑発した黒幕は、巧妙かつ老獪に、ゼレンスキーを焚きつけ、「核を持つぞ!」と、暗にロシアを威嚇させたバイデン自身だろう! 

ゼレンスキーは、アメリカにとって、大変利用価値のある有用な駒になっているが、ウクライナ国民にとって、果たしてそれでよいのだろうか。

アメリカは、ロシアの攻勢を防いではくれない。バイデンは「何があっても派兵しない」と言う。EUも、「ウクライナのEU加盟には、長い年月がかかるだろう」と言う。ウクライナは、欧米にハシゴを外されたかたちだ。この状態で、徹底抗戦は、無謀に過ぎるだろう。

ゼレンスキーは、国民を袋小路に誘うハメルンの笛吹き男になってはいないか?

 

アメリカのブリンケン国務長官は、「最終的にはウクライナが勝つんじゃないか?」と、ひどく呑気で無責任な発言をしたが、そう簡単にはいくまい。

最終的な勝利とやらのために、どれほどの犠牲を払うつもりだ?

その犠牲がアメリカ国民の命であっても、ブリンケンは同じことが言えるのか?

 

第一に、ロシアが、そう簡単に負けを認めるものか! 

ウクライナは玉砕戦法のしぶとさだが、ロシアのしぶとさは、もう一味違うと思う。

そもそも国民の過半数は、プーチン支持だ。

2月28日の世論調査では、国民の68%がウクライナ侵攻を支持しており、反対は22%だったという。プーチン大統領の支持率も71%に上昇している。※

ロシア国内の反プーチン勢力に、それほど力があるとは思えない。 

だから、戦争は続くのだ

 

ウクライナの国民の犠牲を肴にして、世界中の強国のお偉方たちが、身勝手に、どんちゃん騒ぎを続けている。

そして、その煽りをくうのは、世界中の名もなき庶民たちだ。

原油価格は上昇し、航空機の航路は遠回りに変更され、地政学リスクによって、日本株は低迷する。

なぜ、バイデンの号令で、日本もロシア叩きに動かなければならないのだ?

 

ロシア、中国、北朝鮮と向き合う日本の地政学リスクは、半端ではないのだ。しかも、どの国とも領土紛争を抱える日本の地理的緊張の際どさは、シャレにならない。

そのストレスを感じないのは、国際関係に恐ろしく鈍感な日本人ぐらいだ。

私は、日本がロシアとコトを構えるのはよろしくないと思う。

 

戦争は終わらない

ウクライナは、外部から装着された人工臓器や輸血に頼りながら、全身に癌細胞が転移して、断末魔の悲鳴を上げ続ける。

ロシアは、経済制裁と戦争の膠着によって、真綿で首を絞められるように、徐々に追い詰められる。

やがて、ロシアの恨みは日本に向かうかもしれない。

 

一般的に、ロシア人は、アメリカは大っ嫌いだが、日本のことは大好きだ。これは、ソ連時代から続く、ロシア人の、かなり、伝統的な感覚・情緒なのだ。 

プーチンにも、そういう反米・親日の情緒を持つという面が、少なからず、あるのではないかと思う。 

北方領土についても、「日本には返してもいいのだが、島に米軍基地が置かれるのは絶対に許さない」というのがロシア人の本音。 また、実際、「返還された北方領土には米軍基地が置かれるかもしれない」と日本の外交官が言っちゃったもんだから、ロシアの態度は急激に硬化して「返さない!」となったのだ。 

今回も、西側の制裁に足並みを揃える日本にだけは、プーチンは、情緒的に、裏切られた感を持つかもしれない。 

そういう微妙なところが、多くの日本人には、わかっていないんじゃないかな。

 

目に見えて力が衰えていくアメリカが、今よりさらに内向きになり、東アジア情勢に関心を失っていったとしよう。

その時、プーチンが北海道に侵攻したら、あるいは、習近平が尖閣に侵攻したら、どうだろう。

その時、バイデンは、今と同じように、日本に対しても「頑張れ、頑張れ」と言うかもしれない。

バイデンならば「第三次世界大戦を起こさないため、アメリカは、紛争には直接介入しないが、最大限の援助を日本に与えるつもりだ」などと言う可能性は大いにある。

これは、台湾有事の際には、なおさら言えることだ。

いずれ、ウクライナに次いで、台湾はもちろんのこと、日本もまた、アメリカに、ハシゴを外されるかもしれない。

日米同盟に、依存しすぎないことだ。

 

結局、日本が、独自の核抑止力を持つことを目指す以外に、現状を打開するすべはない。

 

 

 

※プーチンの支持率については、独立系の世論調査機関でも政府系世論調査機関でも、ウクライナ侵攻前には60%台だったのが、侵攻後は10ポイント上昇し、70%台になっている。いずれにしても、国民の過半数(およそ7割)が、ウクライナ侵攻後も、プーチンを支持しているという状況は、現実として認めなければならないだろう。