オミクロン株の世界的流行によって、世界各国でワクチンのブースター接種が急がれている。
例によって、日本の各メディアは、『諸外国と比べて、日本のブースター接種率は、あまりに低い!』と、政府を非難するのに忙しい。
しかし、データを、よく見てみよう。
実は、ブースター接種率の高い国の多くは、コロナ感染による累計死者数が、日本よりはるかに多いのだ。さらに、現時点で、人口比で考えると、直近の1日の死者数も、下記の諸国の中では日本が1番低い。
例えば、イスラエルなど、国民の過半数が3回目ブースター接種を終えていて、それでも直近1週間の1日の平均死者数が日本と変わらない。イスラエルの人口は922万人で、日本の13分の1なので、人口比死者数は日本の13倍になる。この数値からは、イスラエル政府の主導するワクチンの効果があまり見られない。接種後5ヶ月で、急速に体内の中和抗体の量が半減するためらしい。
そこで、イスラエルでは、焦って4回目のブースター接種を始めているわけだが、その正当性を主張するため、「4回目を打つと、感染は防ぎきれないものの、3回目接種のみの人に比べて、死亡率を90%低下させる」との研究結果を発表している。
しかし、仮に、この数値が正しいとしても、死亡率を90%低下させて、ようやく現在の日本レベルに落ち着くことになる。
つまり、「日本人は、3回目接種が遅々として進まないと言われる今の段階で、イスラエルの人々の大半が4回目接種した場合と同程度の免疫を、すでに有している」可能性がある。
また、欧州連合の医薬品規制当局は、「短期間に頻繁にワクチン接種を繰り返すことが、ヒトの免疫系に悪影響を及ぼし、免疫力の低下をもたらす恐れがある」と警告している。
そう考えると、日本のメディアは、「ブースター接種率が低い!」「政府の責任だ!」といたずらに騒ぐ必要はまったくなく、世論を喚起して3回目接種を急がせることにも、さほど意味はないのではないか。むしろ、「なるべくブースター接種の時期を遅らせることに意義がある」とも言えるだろう。だが、そのような主張を伝える報道メディアは皆無だ。
この国の社会がより成熟していくためにも、メディアの報道姿勢は、より賢明・冷静・公平であって欲しいものだ。
国名 ブースター接種率 2回接種率 1日の死者数 累計死者数
イギリス 55% 72% 263人 2260人
イスラエル 55% 66% 27人 913人
イタリア 53% 77% 367人 2400人
ドイツ 52% 74% 143人 1400人
韓国 51% 85% 25人 130人
フランス 47% 76% 262人 1981人
オーストラリア 29% 79% 71人 131人
アメリカ 26% 64% 2500人 2690人
ブラジル 21% 71% 416人 2906人
ロシア 7% 48% 659人 2251人
日本 3% 79% 26人 148人
南アフリカ 1% 28% 153人 1562人
※2022年1月27日の数値
※1日の死者数は、直近1週間の平均値
※累計死者数は、100万人あたり死者数の累積値