イーグルスの1973年の大ヒット曲「デスペラード(ならず者)」です。
2ndアルバムの表題曲ですが、シングルカットはされていません。にもかかわらず、イーグルスの数あるバラード曲の中でも、唯一無二の代表曲とも言える名曲中の名曲なのです。
70年代アメリカン・ミュージック屈指のロック・バラードのスタンダード・ナンバーと言ってもいいほど有名な作品で、これまで多くのミュージシャンによって、カバーされています。
しかし、やはり、作詞者ドン・ヘンリーの独特の渋い濁声のボーカルが、この曲には一番合っていると思います。
当時、26歳のドン・ヘンリーが、友人に向けて語りかけるように書いた詞が、心に沁みます。
以下に、歌詞と和訳を記します。
ドン・ヘンリーの歌詞は、とても意味が奥深いので、歌詞の和訳は、実に厄介ですが、原文の意味になるべく忠実に、雰囲気やニュアンスを損なわないように訳すように努めました。
Desperado.
どうしてそうなんだ
Why don't you come to your senses?
そろそろ気付いてもいい頃なんじゃないか?
You've been out ridin' fences for so long now.
いつまで、独りで、フェンスの上にまたがって、すくんでいるつもりなんだ
Oh, you're a hard one.
本当に頑固な奴だな
But I know that you got your reasons.
それには、お前なりの理由があるんだろう
These things that are pleasing you
だが、今、これでいいと思っていることが
can hurt you somehow.
いつか、お前自身を傷つけることになるんだ
Don't you draw the queen of diamonds boy.
ダイヤのクイーンを、引いてはだめだ
She'll beat you if she's able.
隙を見せれば、彼女は、いつか、お前を打ちのめすだろう
(だから、お金に執着するのは、やめたほうがいい)
You know the queen of hearts is always your best bet.
どんな時も、ハートのクイーンに賭けるのが一番いい手だと、わかっているはずだ
Now it seems to me, some fine things
have been laid upon your table.
今、テーブルの上には、十分勝負できるカードが揃ってるように、俺には見える
But you only want the ones that you can't get.
だが、お前は、手に入らないものばかり求めたがる
Desperado, oh, you ain't gettin' no younger.
この分からず屋め、お前はもう決して若くない
Your pain and your hunger,
お前が感じている痛みや飢えが
they're drivin' you home.
そのことを、お前に痛感させ、郷愁を覚えさせるだろう
And freedom, oh freedom, well,
自由か、自由こそが大事だ、なんて
that's just some people talkin'.
確かに、そんなことをいう奴もいるだろうさ
Your prison is walking through this world all alone.
だが、お前が周囲に築いた自我の牢獄は、この世界を独り、彷徨い続けている
Don't your feet get cold in the winter time?
足元から、冬の寒さが感じられないか?
The sky won't snow and the sun won't shine.
空からは雪も降らないし、太陽が輝くこともない
It's hard to tell the night time from the day.
今が、昼なのか、夜なのかもわからない
You're losin' all your highs and lows.
高揚と歓喜の瞬間も、落胆と苦渋の時も、すべての感情が失われていく
Ain't it funny how the feeling goes away?
心の躍動のすべてが、そんな風に消え去ってしまうなんて、おかしいと思わないか?
Desperado, why don't you come to your senses?
なあ、そろそろ気付いてもいい頃じゃないか?
Come down from your fences, open the gate.
フェンスから降りて、扉を開いて、門の外へ出てごらん
It may be rainin',
外は、雨が降っているかも知れない
but there's a rainbow above you.
けれども、見上げれば、そこには虹がかかっているだろう
You better let somebody love you.
(Let somebody love you.)
誰かに愛されて生きなさい
You better let somebody love you.
誰かに愛してもらうんだ
Before it's too late.
手遅れになる前に、な
前回の記事『昼の国民、夜の皇室』で論じた「昼の世界」「夜の世界」に当てはめて、この詞の意味を考えてみたいと思います。
この詞で描かれているフェンスの上で立ちすくんでいる若者は、故郷を遠く離れて、虚ろな心を抱えて、「昼の世界」を彷徨っています。
もう誰も信じられない。世の中、お金がすべてだ。人間と違って、お金は決して裏切らないからな、などと考えているかもしれません。
運命の御手も、人の心も、友との絆も、家族の愛情も、「目に見えない世界」の一切を、彼は、信頼していないのです。
信じられるものは、自分自身だけ。彼は、金と権力と名声、数値と論理と証明と言質に依って生きる「昼の世界」の住人だからです。
「昼の世界」は、目に見えないもの一切を信じない人たちの暮らす世界です。理解も共感もない、心が通い合うことのない諦めの世界、冷たい虚無の世界です。
彼が感じている痛みも飢えも、物質的なものではなく、内なるものです。故郷を喪失し、根なし草になって、自我の牢獄を引きずりながら、彼は「昼の世界」を独りで彷徨い続けているのです。
若者は、外界に心を閉ざして、精神的引きこもりの状態で、自ら閉じこもった牢獄の中から、外の世界を眺めています。
この自閉の檻は、「自由という名の牢獄」と言うこともできるでしょう。彼の心は、何にも縛られず、何も信じず、期待せず、糸の切れた風船のように、現実の表層を漂っているのです。
心の何処かでは、このまま「昼の世界」にいても、自分はきっと幸せになれないと、若者は気づいています。
そして、おそるおそる「夜の世界」を覗き込んでもみるのですが、いつまで経っても、思い切ることができません。どうしても、外へ、一歩、足を踏み出せず、躊躇しています。
若者は、これまで慣れてきた物質主義的な「昼の世界の価値観」を手放すことができず、これまでの自分に執着し続けてしまうのです。
ドン・ヘンリーは、そんな風に頑なに「昼の世界」にしがみついている友人に、「いつまで、そこにいるつもりだ?」「いい加減、こっちへ降りてこいよ!」と、「夜の世界」から優しく声をかけているのです。
最後に、ダイヤとハートのクイーンについてです。ダイヤは〝富の象徴〟であり、地位、名声、評価を司ります。ハートは〝愛情の象徴〟であり、友情、理解、親密さを司ります。そこで、クイーンの意味なのですが、クイーンは伴侶を意味するのか、もっと抽象的に〝生き方〟〝信じるもの〟を意味するのか、受け取り方によって、イメージが変わるのではないでしょうか。
「冷たい金持ちの女」より「貧しくても愛情のある女」を選べ、というメッセージと受け取るか、「本当は愛していなくても、資産やステイタスに魅力を感じる女」より「社会的ステイタスもなく貧しい女だが、心から愛している人」を選べ、という意味か、はたまた、「富・地位・社会的評価を重んじ、それらを求める生き方」より「愛情・友情・理解・親密さに価値を置き、それらを大切にする生き方」を選びなさい、と言われていると受け取るべきなのか。
また、「金を武器とし、金に引きつけられる女」を選ぶと、紀州のドンファンのような目に遭うぞという意味にもとれます。
私が思うに、お金と愛情には、一つの重要な共通点があります。それは、どちらも、人が生きていく上で不可欠のエネルギーである、ということです。人は、どちらが欠けても生きていく事ができません。ですから、どちらか一方を選ぶなんてことは、通常は、できないのではないでしょうか。
しかし、それでもなお、どうしても選ばなければならない時がくるとすれば、それはある種の極限状況においてです。「どちらかしか、選べない」という場面です。
その時、あなたはどちらを選ぶでしょうか?
〈参考〉
トランプの起源は、中国の宋代のカードゲームにあり、その後、イスラム諸王朝で、刀剣・ポロ用スティック・貨幣・カップの4つの絵柄に発展し、さらに、14世紀に南欧スペインで、スティックが棍棒になりました。そして、15世紀には、フランスで、絵柄がスペード・クラブ・ダイヤ・ハートに変わりました。このカードがイギリスに伝わりました。
仏英式トランプのカードの4つの絵柄(スート)は、現在、ラテンカード及び14世紀末にトランプから派生して作成されたとされるタロットの小アルカナのカードの4種類の絵柄(スート)と対応しています。
タロットは、もともと遊戯用カードではありますが、ユダヤのカバラ(秘儀)にルーツを持つ神秘主義的な知恵と結びついているカードであり、18世紀以降、占いにも使われるようになります。そのためか、タロットの元祖であるトランプのカードの絵柄もまた、非常に霊的な意味合いを感じさせるものとなっています。
トランプの4つの絵柄の意味するものは、次のようなものです。
スペード♠️(タロット・ラテンカードでは剣・swords・ソード)
→四大元素では〝風〟を象徴する
◯騎士/死/冬/情報の拡散/思考/衝突/判断力/信念/決断/悲壮/脱出
▷能動/外向/理性/冷静/言語/批判/改革/攻撃/策略/審判/戦い
☆男性原理/夜/文明/国家/法律/メディア/分析/科学/論争/政治家
◉破壊/ナイト/若い男性/太陽/美(ティファレト)🟡/正義/戦術
▶︎通常兵器/インターネット/裁判所/放送局/輸送用機器/新聞社
クラブ♣️(タロット・ラテンカードでは棍棒・wands・ワンド)
→四大元素では〝火〟を象徴する
◯農民/生命力/春/知識の統合/行動/創造/情熱/夢/理想/楽天/快活
▷能動/内実/勇気/闘志/直感/独立/活動/主張/野心/開拓/知恵
☆男性原理/夜/共同体/村/組合/連帯/友情/技術/発明/指導者
◉建設/キング/成熟した男性/至高の父/知恵(コクマー)⚪️/愚者/戦略
▶︎核兵器/発電所/先端研究施設/大学/工場/ボーイスカウト
ダイヤ♦️(タロット・ラテンカードでは金貨・pentacles・ペンタクル)
→四大元素では〝大地〟を象徴する
◯商人/お金/夏/物理的安定/富裕/評価/継続/人脈/実績/磐石/停滞
▷受動/外向/物質/バランス/五感/立場/地位/社会性/成果/維持/土台
☆女性原理/昼/社会/資本/企業/建築物/保全/経済/庭園/血族
◉繁栄/ペイジ/若い女性/地球/王国(マルクト)🌈/世界/管理
▶︎投資事業/商業施設/遊園地/市場/農園/銀行
ハート♥️(タロット・ラテンカードでは聖杯・cups・カップ)
→四大元素では〝水〟を象徴する
◯僧侶/愛情/秋/感情的充足/幸福/理解/受容性/信頼/穏健/適応/心
▷受動/内実/内面/流動/空想/依存/保護/和合/奉仕/育成/慈愛
☆女性原理/昼/文化/宗教/芸術/伴侶/育児/物語/音楽/詩人
◉爛熟/クイーン/成熟した女性/至高の母/理解(ビナー)⚫️/魔術師/無私
▶︎慈善事業/美術館/教会/保育所/劇場/スタジアム