バイデンは、就任式でも、それ以降も、トランプ支持者に殺されることはない。暗殺もされない。
なぜなら、ジョー・バイデンが死ぬと、トランプ支持者にとっては、誰よりも望ましくない政治家であるカマラ・ハリスが大統領になってしまうからだ。
左派中道よりのバイデンより、移民の娘であり極左であるハリスの方が、右派のトランプ支持者たちにとっては、なお悪い。それどころか、最悪である。
カマラ・ハリスこそが、移民の象徴、アメリカ滅亡の元凶、古き良きアメリカの最も憎むべき破壊者であって、トランプ支持者にとっては、まったく好ましくない人物だ。それだけは避けたい。
ただ、不安はある。
もし、バイデン大統領が、中南米からキャラバンを組んでアメリカを目指している数万の流民の群れを、国境から雪崩れ込ませるままにしたら、さすがに、多くのトランプ支持者が殺意を覚える可能性がある。
なぜなら、これ以上の移民の増加は、これまで主流派だった保守系共和党支持者を、アメリカの少数派に叩き落とすものであり、民主主義国家において、多数派が少数派に転落することは、すなわち、数の敗北が決定的になることだからだ。
もう1つは、これほどまでに急増する移民によって荒らされ、見る影も無くなってしまったアメリカ社会を、さらにドツボに落とすつもりか、これ以上メチャクチャにするのか、という古き良きアメリカを愛する人々の怒りが、さらなるバイデン政権の移民増加を促す形勢を見て、一挙に噴出する可能性がある。
いずれにしても、「移民の増加による白人のマイノリティ化」という事態は、右派を必ず先鋭化させる。数で敵わないなら、もはや、民主主義に用はない。
だから、アメリカの未来には、破局と混乱が渦巻いている。それは間違いない。
これまで、アメリカでは、民主党に代表される革新系左派リベラルに対して、共和党に代表される保守系右派が拮抗していた。
そして、アメリカの保守においては、右派リバタリアンと右派コミュニタリアンの精神が、分かち難く融合している。
トランプは、特に、右派コミュニタリアンを体現する大統領だった。
トランプ以前の共和党及び共和党擁立の大統領は、ネオコンと右派リバタリアンの政党・大統領ではあったが、右派コミュニタリアンの意思の代弁者ではありえなかった。
そして、これ以降、彼のような大統領は現れないかもしれない。
だから、トランプの敗北を「超大国アメリカの終焉」、そうイメージする人もいるだろう。一方で、まったく意味不明だと感じる人も多いだろう。
ある人々にとっては、トランプの敗北こそが福音だったのだ。トランプの敗北に感極まって涙を流す者もいた。
その福音をもたらしたのはコロナだ。
今回の選挙戦を通じて、主要メディアと民主党は、コロナ禍をトランプを叩くために最大限に利用した。「トランプは、コロナを放置することで、30万人のアメリカ国民に死をもたらした」と彼らは盛んに喧伝する。
しかし、実際には、人口比で、アメリカとほぼ同じ割合で、ベルギー、イタリア、イギリス、スペイン、フランス、スウェーデン、スイスで、コロナによって死がもたらされている。ドイツの犠牲者は、アメリカのおよそ50%にして日本の16倍(!)だが、それでも、「コロナ対策の成功例」などと、メルケル首相はメディアにほめそやされてきた。
なぜ、トランプだけが、そこまで非難の対象とされたのだろうか?
そこに、メディアの恣意的な作為がある。
現代の最も巧妙で、最も広範囲に影響を与え得る最強のプロパガンダは、メディアによる印象操作だ。
ついこの間の「国会議事堂襲撃?」とやらも、その良い例である。銃も持たないデモ隊の一部800人ほどが、国会議事堂に乱入し、5人のデモ参加者が死亡した事件である。一人の女性は警官に射殺された。
この事件が、トランプ叩きに大いに利用されている。
トランプは、「平和的に議事堂まで行進しよう」とは言ったが、議事堂乱入を焚きつけたわけではない。トランプは、国会に心理的圧力は加えたかったろうが、クーデターを望んでいたわけではないのだ。
ところが、反トランプ陣営は、すべてを悪意に解釈したがるので、「トランプは、国会議事堂を、暴徒をつかって乗っ取ろうとしたのだ」と思い込む者もおり、またその思い込みを利用して、トランプ叩きのキャンペーンを展開しようとする者たちが、メディアにも政治家にも、運動家にも、大勢いる。
彼ら(リベラル)のロジックはこうだ。
①トランプは悪であり、我々は正義である。
②正義は勝たねばならず、我々の判断や行為は正しくあらねばならない。
③トランプを倒すのは正しい行いであり、そのためにはトランプ信者の洗脳を解いてあげねばならない。
④従って、我々の行なっている広範囲に及ぶ〝説得行為〟は、印象操作でもプロパガンダでもなく、善意の〝啓蒙〟である。
その意味では、公平に見て、現在、大々的に行われている「トランプが暴徒を扇動した」「トランプが国会議事堂を攻撃させた」という報道は、実は明白な印象操作であり、リベラルによる世界規模の見えない巧妙なプロパガンダなのである。
事実は、暴挙ではあったが、必ずしも、議事堂への攻撃・クーデタではない。参加したトランプ支持者は、ほとんど誰も銃を持ってはいなかった。そこはアメリカだから、銃を保持していた者は数名いたようだが、現場で銃を抜いていた者は1人もいなかった。警官に射殺された女性も、銃を持ってはいなかったのだ。
もう一つ、メディアの気になる動きは、右派の人々を、陰謀論を信じる新興宗教の狂信者であると断じる報道が目立つ事だ。
信者の意見など聴くのは時間の無駄であり、彼らトランプ支持者の心情など考慮する必要はない、という感覚を、メディアが喧伝しているのである。
バイデンは、「意見の相違を分裂に導いてはならない」と、言葉では融和を唱えるが、そんなものは絵に描いた餅に過ぎない。聴こえの良いカッコイイ言葉だが、それ以上のものではない。アメリカの分断という現実に、何ら影響を及ぼしうるものではない。
それほどに、リベラルと保守の亀裂は大きく深淵だと思える。
「互いに絶対に相手を理解することができない間柄」と言えるかもしれない。
この場合の〝理解〟の中心にあるべきものは〝共感〟である。共感のないところに融和はありえないからだ。
そして、今日、アメリカでも日本でも、リベラルと保守の間に、残念ながら、共感はほとんどない。そもそも、「何に心の痛みを感じるか」がまったく異なるのだから。
逆に、互いに、あるのは〝無理解〟と〝侮蔑〟である。そして、メディアがその「共感の拒絶」という風潮を助長している。
リベラルの側には、さらに、根拠の薄い、勝手な〝優越感〟がある。それが、保守の側の〝憤り〟を生む。負のスパイラルが続き、対立は、より激しくなるだろう。
また、トランプという牙を失ったアメリカの凋落は、必然的に中国の台頭をより促すことになり、日本の安全保障環境をより厳しいものにするだろう。
加えて、バイデンには牙がないが、カマラ・ハリスは鋭い牙を持っている。ところが、その牙は、アメリカを食い潰すことに用いられるのだ。ハリスの牙は、むしろ、アメリカの凋落を決定的なものにするに違いない。
その時、私たち日本人は、生存の危機に直面することになる。私たちは持ち堪えられるだろうか。今から、その覚悟をしておかなければならない。