アメリカでは、毎年のように、一般市民が、警官によって射殺されている

パトロール中の警官が、呼び止めた市民に対して、恐らくは身分証明書を持ってこさせるためなのか、再び自家用車に潜り込ませた後で、あるいは勝手に市民の方がクルマに潜り込んだのかもしれないが、その市民の背中向かって、突然、警官が7発の銃弾を打ち込む、ということが、どうして起こるのか?

 

それは、一般市民が、銃を持っているからである

アメリカの銃の所持率は、人口100人あたり90丁である。そして、年間1万人以上が、銃によって死んでいる。ちなみに、そのうち、50%は自殺である。

さらに、アメリカでは、ピストルやライフルだけでなく、20〜30発の弾丸を連射できる自動小銃(アサルトライフル/マシンガン)まで、民間人の所有が認められている。そして、こうした銃による乱射事件が、毎年のように起こるのである。

アメリカの統計では、毎年9000人以上が、殺人事件によって殺されている。ちなみに、その殺人の53%(5000人以上)を、総人口の13%を占める黒人が犯している。参考に、日本の他殺者数は、年間300人未満である。

なので、アメリカでは、一般市民の側も、家族で食事に外出する際などにも、用心深い人であれば、家族の誰かが銃を所持しているのが普通である。

コロナ禍で、ガンショップに行列ができた風景は記憶に新しいが、つまりは、それほどに、アメリカでは、市民の自衛意識が高いということだ。そして、市民による射殺という事件も多発しており、それが正当防衛なのか、過剰防衛なのか、殺人なのかが問われるケースも多い。

 

一方で、アメリカでは、警察官の殉職者数が、毎年100人を超える。そして、そのうち、毎年40人程度の警官が、銃で撃ち殺されている。対して、日本の警察官の殉職者数は、毎年4、5人であり、銃で殺された殉職者はゼロと、その危険度は、まったく比較にならない。

日本の警察官は、日常、職務質問で呼び止めた市民や、交通違反の取り締まりで車を止めさせた相手に銃で撃たれる不安を感じることはまったくない。日本の一般市民は、銃を持っていないからだ。

しかし、アメリカの警察官は、日常的に、見知らぬ誰かに撃たれる恐怖を感じながら、職務を行なっているのである。

 

沖縄在住のアメリカ人(白人)によく聞く話だが、アメリカでは、警官に職務質問を受けたり、クルマを止められたりした時、免許書や身分証明書の提示を求められたら、慌ててはいけないと教えられる。慌てて素早くバッグやクルマのダッシュボードなどから身分証を取り出そうとすると、銃を取り出そうとしていると勘違いされて、警官に撃たれる恐れがあるからだ。

気を配るべきことは、常に両手を警官から見える位置に挙げておくことと、命じられた行動をする場合にも、動きを隠さず、常に警官が確認可能な角度とスピードを心がけて、慌てずゆっくり動くことが、撃たれないためには重要なポイントとなる。

一般のアメリカ人は、警官に間違って撃たれないために、最大限に気をつかうというのが常識であり、自分の命を守るために、常に冷静な行動が必要となる国なのだ。当然、職務質問を受けた際に、警官に抵抗するのは、愚の骨頂である。些細なことで、命を失う恐れがあるからだ。

 

 

ところが、昨今のように、警官への市民の激しい反感が、世の中に広く醸成されてくると、市民の側も警察に対して挑発的な態度をとる者が増えてくるし、警官の側もますます疑心暗鬼になってしまう。そして、警官に職務質問を受けた際には、従順な態度を示さず、激しく抵抗するのが当たり前、という市民と、その抵抗に身の危険を感じる警官との間で、不幸な事件が起こる可能性も高くなる。

つまり、警官が自分の命を守るために発砲する頻度が増えてくると同時に、誤って射殺される市民の数も増えてくるのである。

 

アメリカでは、毎年1000人以上の犯人や容疑者が、警官によって射殺されている。警官に射殺された人の内訳は、白人が37%、黒人が24%、ヒスパニックが16%である。上記した犯罪発生率など考慮すると、必ずしも、黒人が極端に多いというわけではない。

また、警官に射殺された人の多くは犯罪者であり、銃を所持していたのだが、中には、銃を持っていなかったが、警官から見て威嚇的な動きをしたために、射殺された者もいる。その数は、毎年100人以上(銃不保持の犯罪者含む)とも言われる。この銃不保持の状態で射殺された市民にも、黒人、ヒスパニック、白人がいる。黒人が多いのは確かだが、白人は撃たれないというわけではない。

ただし、銃を持っていなくても、また、犯罪者でなくとも、警官に職務質問されている最中、警官に蹴りを加えたり、それどころか、警官の銃を奪おうとする勇猛な一般市民も、アメリカには実際にいるのだ。日本の大人しい一般市民には、とうてい考えられない猛々しい行動である。

そして、多くのケースで、警官は、恐慌状態に陥っており、1人に7発を連射するという事件になっている場合もよくある。

 

一方、日本では、犯人が警官に射殺されるケースは、年間2、3人に過ぎない。しかも、この射殺件数は、ほぼ日本の警官の全発砲件数に重なる。警官が撃つ時、犯人の無力化を狙うため、射殺に至る確率は高いという点では、日米で変わりはないものの、日本の警察官は、国全土で、年間、2発しか発砲しないということだ。だから、日本では、ほとんどの警官が、一度も発砲することなく定年退職する。まったくの別世界である。

したがって、我々、日本人には、アメリカの警察官が、なぜ、犯人に向かって、あるいは市民に向かって、拳銃を乱射してしまうのか、その現実の状況をリアルに想像することが、極めて困難である。

 

アメリカで、市民が警官に撃たれる場合、警官の過剰防衛や過剰反応で、市民が死に至るケースも、確かに増えているのだろうと思う。白人警官の黒人への不信感が、過剰防衛の背景にあることも確かだろう。強烈な有色人種への差別意識を持っていて、身の危険を感じているわけでもないのに、黒人には、ためらわず撃つという〝人間失格〟の警官も、中にはいるだろう。もちろん、そのような場合、罪を犯した警官が、きちんと適切に裁かれることが、絶対に必要である。その意味で、私は大坂なおみさんの抗議活動に共感する。

しかし、さまざまなケースがあるのはもちろんだが、多くのケースで、アメリカの警察官が、一般市民に銃を撃ち放つのは、自分の身を守ろうとして、撃たれる前に撃とうとした、というのが主たる理由なのだということは、知っておいた方がいい。

上述したように、アメリカでは、毎年100人以上の市民が、銃を所持していないのに警官に射殺される事件が起こっている一方で、警官もまた、毎年40人ほどが、銃撃で殉職しているのである

 

 

私は、アメリカの警官が、それほど質が悪いとは思わない。警官もまた、過酷な状況を生きている普通の人間なのだ。

アメリカでは、毎年5000人以上の一般市民が、黒人の殺人犯によって殺されている。けれども、大多数の黒人は凶悪な殺人犯ではない。同様に、アメリカでは、毎年100人以上の銃を持たない市民(主に黒人)が、白人の警官によって射殺されている。けれども、大多数の警官は差別守護者の殺人警官ではない

ところが、メディアの極端な報道姿勢は、そうした事実をかき消してしまい、あたかもアメリカのすべての警官が悪党であるかのような間違った印象を視聴者に与えているのではないか、と危惧する。